Uberの対抗馬はピンクのひげ?友達感覚で乗れる「Lyft」を使ってみた!



3月に東京でサービスを開始し、日本でも話題になっている配車サービス「uber」。
サンフランシスコでは、ラグジュアリーなハイヤーを配車する「ブラックカー」だけではなく、「TAXI」や「SUV」など複数のコースを必要に応じて選ぶことができる。

その中でも、最も日常的に利用されているのは一番安価に乗車できる「uberX」だ。
既に30億ドルのバリュエーションで2億5000万ドル以上もの資金調達を完了しているuberだが、ベイエリアでは類似サービスを提供する競合も複数いる。

今回はその中でも対抗馬の本命、「Lyft」を実際に使ってみた。

uberより高い成長率!?

Lyftはuber同様、現在地で配車をリクエストすると、一番近くの車がピックアップして目的地まで乗せてくれる、オンデマンド配車サービスだ。
トレードマークは車のバンパーについたピンクの髭。サンフランシスコのダウンタウンでは、この髭をつけた車を頻繁に見ることができる。
このLyft、提供都市はまだUS国内のみだが、uberより急成長しているという報告もある。記事によればLyftの売上は週に6%の成長率で、uberの成長率の2倍以上。
過去1年間で20倍にも成長しており、乗車数はuberの全てのライン合計の約3分の1に達しているとのことで、今月(2014/4)の頭にはアリババ等から巨額の2億5000万ドルを調達している。

では、uberとの違いは何なのか?早速使ってみた!

資金調達後、20%オフに


アプリを起動し、メールアドレスと電話番号の登録をすませると、早速クーポンが。
すべての料金が20%オフ!この値下げは資金調達以降のものら

登録が完了すると現在地の地図が表示され、周りを走るLyftの車が確認できる。
実は深夜3時すぎだが、自宅のまわりには2台の車が。
「4分の距離」と表示され、どれくらいで配車されるのかわかりやすい。

右上にあった車のアイコンをタップしてみると、「Lyftのドライバーになる」案内が。
ドライバーも専用アプリではなく乗客と同じアプリを使うようだ。

メニューにも「Driver mode」が用意されている。
深夜のためここで一旦終了。

リクエストすると10分ほどで到着


次の日、生活用品の買い出しで2駅先のTarget(USの西友・イオンのような店)に行く機会があったので、帰りにLyftを使うことにした。
荷物が多いので電車やバスでは帰れないし、車もない。
こういうときに、配車サービスは本当に助かる。

アプリを開くと自動的に現在地にピンが立つ。
5分の距離にドライバーがいるようなので、「Request Lyft」を押す。

なにやら案内が。
「ドライバーのことを友達だと思って、助手席に乗ってね!」とのこと。
Lyftではドライバーと友達のような感覚なのが売りらしい。

午後5時過ぎは混雑する時間のようで、料金が25%増しとのこと
帰宅ラッシュの時間なので仕方ないか。

目的地を入力し終えると、これから来る予定のドライバーが表示された。
名前と顔写真・車の写真が表示される。

表示は5分となっていたが、途中でドライバーが反対方面に行ったりした(前の乗客?)ため、10分ほどかかって到着。
近くまで来たところで電話がかかってきて、場所の確認をし、無事に出会えた。

車にはトレードマークのピンクの髭がついていなかったため、理由をたずねると
「髭が大きいので視界の邪魔になるんだ。髭がなくても待ち合わせで困ったことはないよ。」とのこと。髭は義務ではないらしい。

運転席の周りにはなにやらデバイスがいっぱい。
ドライバー席の左上にナビ用のiPhoneが、右下には連絡をとるためのiPhone、と2台のiPhoneを設置しているようだ。

ドライブしながら質問してみた

荷物をのせて、自宅まで15分ほどのドライブが始まると、ドライバーがテンション高く話しかけてくれる。
「友達と乗っているんだと思ってくれ。僕は新しい人に出会うのが楽しみでLyftをやっているんだ。ドライブの間中会話を楽しもうよ!」とのこと。
せっかくなので色々と質問してみた。

Q. ドライバーはメインの仕事なの?
A. いや、フルタイムの仕事の後に、毎日5時間くらいドライバーをやっているんだ。

Q. なぜパートタイムでドライバーを始めたの?
A. 10歳の娘の大学の学費を貯金するために始めたんだ。アメリカでは大学の学費はとても高いからね。でも自分は大学を出てないから、娘にはいい教育を受けさせてあげたいんだ。かわいいだろ?(車内に貼ってある娘さんの写真を見せてくれた)

Q. 毎日5時間って大変じゃない?
A. 運転するのは元々好きだから楽しいよ。こうやって新しい人とたくさん出会えて話せるのもとても面白いね。これでお金がもらえるのは嬉しいよ!

Q. (iPhoneを見ると、uberとLyftを両方つかっているようだったので)なぜ両方つかっているの?
A. 両方使うと待ち時間がほぼなくなって、無駄がなくなるんだ。そのほうが効率良く稼げるからね。

Q. uberとLyftの違いはある?
A. uberのお客さんよりLyftのお客さんのほうが、フレンドリーでいっぱい話してくれるので僕は好きかな。uberの人のほうがビジネスライクな感じだね。それから、uberのお客さんは後部座席に座ることが多いけど、Lyftのお客さんは助手席に座ることが多いよ。

他にも日本から来たことや、サンフランシスコの街のこと、彼の出身のフィリピンの話などで盛り上がり、15分のドライブはあっという間だった。

決済なしでスマートな降車


無事自宅に到着し、支払い。といっても、クレジットカードは事前に登録しているで、金額を確認して承認ボタンを押すだけ。
ドライバーの彼が初回用のクーポンコードを教えてくれたので、20ドルも割引に!
最後にドライバーへの評価とコメントをつけるんだよ、と親切に教えてくれた。
荷物も運ぶのを手伝ってくれたり、会話も楽しく、感動したので文句なしの★5をつけた。


ドライバーのChristianと記念写真。
トランクに入れていたピンクの髭をだしてくれた。
とても親切で楽しく、「また乗りたい!」と思う、感動体験だった。

uber=執事、Lyft=友達?真反対のブランディング戦略

ドライバーの彼の話にも出てきたとおり、uberとLyftの大きな違いはブランディングにある。
uberは2010年のサービスローンチ当初、BMWやベンツなどの高級車のみを配車しており、自社をラグジュアリーなブランドと位置づけている。それはロゴやサイトにも現れており、低価格なUberX等のオプションを提供している現在でも、その方針は変わらない。
一方、後発のLyftはかわいらしいピンクの髭をトレードマークに、フレンドリーというブランディングでuberとの差別化をはかる。

また、ドライバーの捉え方についても違いは大きい。
uberが"CONNECTS YOU WITH A DRIVER AT THE TAP OF A BUTTON"と、ドライバーをすぐ来てくれる自分専用の執事のように位置づける一方で、Lyftでは"YOUR FRIEND WITH A CAR"とあくまで「友達」であることを強調する。

どちらの会社にとっても、ブランディングはユーザーの獲得だけでなく、ドライバーの獲得も非常に重要な問題となる。アプリを起動して近くにドライバーがいなければ、ユーザーが離れてしまうことは間違いないからだ。
昨年、uberがLyftのドライバーに向けて「髭をそってuberに乗り換えよう」という挑発的な広告を行った。


これに対し、LyftのCEOは「あのキャンペーンのおかげで見込み客にリーチできた」と応戦的なコメントをしている。
今回のドライバーだったChristianのように両方のサービスを併用するドライバーもいるが、各社がドライバー確保にどう動くかも注目のポイントとなるだろう。

置き換える市場はタクシーだけではない

両者しのぎを削る配車サービスだが、資本をつぎこんで拡大を急ぐ理由は市場のポテンシャルの大きさにある。
配車サービスを「タクシーの市場の置き換え」と考えると、すぐ飽和点を迎えると思うかもしれない。しかし、彼らの考える未来は「自家用車を持ち、運転するというライフスタイル」自体をひっくり返すことなのだ。
日常的には配車・ライドシェアリングサービスと公共交通機関を併用し、どうしても必要な場合にはZipcarなどのカーシェアリングサービスで車を借りる、という組み合わせによって自家用車を持たない生活は十分に可能になる。
特にベイエリアでは、駐車場や保険などの自家用車を所持するにはコストが高い一方、バスや電車の公共交通機関も発達しており、さらに人々の新サービスへの抵抗感が薄い、と置き換えが進む土壌は整っている。
こうして市場を大きく捉えると、数年後には10倍以上の市場規模を狙えるとも考えられる。
それこそが、巨大な調達額を駆使して拡大を急ぐuberやLyftが期待する未来の姿。


参考記事:

投稿者:@r1ccha

Uberの対抗馬はピンクのひげ?友達感覚で乗れる「Lyft」を使ってみた!



3月に東京でサービスを開始し、日本でも話題になっている配車サービス「uber」。
サンフランシスコでは、ラグジュアリーなハイヤーを配車する「ブラックカー」だけではなく、「TAXI」や「SUV」など複数のコースを必要に応じて選ぶことができる。

その中でも、最も日常的に利用されているのは一番安価に乗車できる「uberX」だ。
既に30億ドルのバリュエーションで2億5000万ドル以上もの資金調達を完了しているuberだが、ベイエリアでは類似サービスを提供する競合も複数いる。

今回はその中でも対抗馬の本命、「Lyft」を実際に使ってみた。

uberより高い成長率!?

Lyftはuber同様、現在地で配車をリクエストすると、一番近くの車がピックアップして目的地まで乗せてくれる、オンデマンド配車サービスだ。
トレードマークは車のバンパーについたピンクの髭。サンフランシスコのダウンタウンでは、この髭をつけた車を頻繁に見ることができる。
このLyft、提供都市はまだUS国内のみだが、uberより急成長しているという報告もある。記事によればLyftの売上は週に6%の成長率で、uberの成長率の2倍以上。
過去1年間で20倍にも成長しており、乗車数はuberの全てのライン合計の約3分の1に達しているとのことで、今月(2014/4)の頭にはアリババ等から巨額の2億5000万ドルを調達している。

では、uberとの違いは何なのか?早速使ってみた!

資金調達後、20%オフに


アプリを起動し、メールアドレスと電話番号の登録をすませると、早速クーポンが。
すべての料金が20%オフ!この値下げは資金調達以降のものら

登録が完了すると現在地の地図が表示され、周りを走るLyftの車が確認できる。
実は深夜3時すぎだが、自宅のまわりには2台の車が。
「4分の距離」と表示され、どれくらいで配車されるのかわかりやすい。

右上にあった車のアイコンをタップしてみると、「Lyftのドライバーになる」案内が。
ドライバーも専用アプリではなく乗客と同じアプリを使うようだ。

メニューにも「Driver mode」が用意されている。
深夜のためここで一旦終了。

リクエストすると10分ほどで到着


次の日、生活用品の買い出しで2駅先のTarget(USの西友・イオンのような店)に行く機会があったので、帰りにLyftを使うことにした。
荷物が多いので電車やバスでは帰れないし、車もない。
こういうときに、配車サービスは本当に助かる。

アプリを開くと自動的に現在地にピンが立つ。
5分の距離にドライバーがいるようなので、「Request Lyft」を押す。

なにやら案内が。
「ドライバーのことを友達だと思って、助手席に乗ってね!」とのこと。
Lyftではドライバーと友達のような感覚なのが売りらしい。

午後5時過ぎは混雑する時間のようで、料金が25%増しとのこと
帰宅ラッシュの時間なので仕方ないか。

目的地を入力し終えると、これから来る予定のドライバーが表示された。
名前と顔写真・車の写真が表示される。

表示は5分となっていたが、途中でドライバーが反対方面に行ったりした(前の乗客?)ため、10分ほどかかって到着。
近くまで来たところで電話がかかってきて、場所の確認をし、無事に出会えた。

車にはトレードマークのピンクの髭がついていなかったため、理由をたずねると
「髭が大きいので視界の邪魔になるんだ。髭がなくても待ち合わせで困ったことはないよ。」とのこと。髭は義務ではないらしい。

運転席の周りにはなにやらデバイスがいっぱい。
ドライバー席の左上にナビ用のiPhoneが、右下には連絡をとるためのiPhone、と2台のiPhoneを設置しているようだ。

ドライブしながら質問してみた

荷物をのせて、自宅まで15分ほどのドライブが始まると、ドライバーがテンション高く話しかけてくれる。
「友達と乗っているんだと思ってくれ。僕は新しい人に出会うのが楽しみでLyftをやっているんだ。ドライブの間中会話を楽しもうよ!」とのこと。
せっかくなので色々と質問してみた。

Q. ドライバーはメインの仕事なの?
A. いや、フルタイムの仕事の後に、毎日5時間くらいドライバーをやっているんだ。

Q. なぜパートタイムでドライバーを始めたの?
A. 10歳の娘の大学の学費を貯金するために始めたんだ。アメリカでは大学の学費はとても高いからね。でも自分は大学を出てないから、娘にはいい教育を受けさせてあげたいんだ。かわいいだろ?(車内に貼ってある娘さんの写真を見せてくれた)

Q. 毎日5時間って大変じゃない?
A. 運転するのは元々好きだから楽しいよ。こうやって新しい人とたくさん出会えて話せるのもとても面白いね。これでお金がもらえるのは嬉しいよ!

Q. (iPhoneを見ると、uberとLyftを両方つかっているようだったので)なぜ両方つかっているの?
A. 両方使うと待ち時間がほぼなくなって、無駄がなくなるんだ。そのほうが効率良く稼げるからね。

Q. uberとLyftの違いはある?
A. uberのお客さんよりLyftのお客さんのほうが、フレンドリーでいっぱい話してくれるので僕は好きかな。uberの人のほうがビジネスライクな感じだね。それから、uberのお客さんは後部座席に座ることが多いけど、Lyftのお客さんは助手席に座ることが多いよ。

他にも日本から来たことや、サンフランシスコの街のこと、彼の出身のフィリピンの話などで盛り上がり、15分のドライブはあっという間だった。

決済なしでスマートな降車


無事自宅に到着し、支払い。といっても、クレジットカードは事前に登録しているで、金額を確認して承認ボタンを押すだけ。
ドライバーの彼が初回用のクーポンコードを教えてくれたので、20ドルも割引に!
最後にドライバーへの評価とコメントをつけるんだよ、と親切に教えてくれた。
荷物も運ぶのを手伝ってくれたり、会話も楽しく、感動したので文句なしの★5をつけた。


ドライバーのChristianと記念写真。
トランクに入れていたピンクの髭をだしてくれた。
とても親切で楽しく、「また乗りたい!」と思う、感動体験だった。

uber=執事、Lyft=友達?真反対のブランディング戦略

ドライバーの彼の話にも出てきたとおり、uberとLyftの大きな違いはブランディングにある。
uberは2010年のサービスローンチ当初、BMWやベンツなどの高級車のみを配車しており、自社をラグジュアリーなブランドと位置づけている。それはロゴやサイトにも現れており、低価格なUberX等のオプションを提供している現在でも、その方針は変わらない。
一方、後発のLyftはかわいらしいピンクの髭をトレードマークに、フレンドリーというブランディングでuberとの差別化をはかる。

また、ドライバーの捉え方についても違いは大きい。
uberが"CONNECTS YOU WITH A DRIVER AT THE TAP OF A BUTTON"と、ドライバーをすぐ来てくれる自分専用の執事のように位置づける一方で、Lyftでは"YOUR FRIEND WITH A CAR"とあくまで「友達」であることを強調する。

どちらの会社にとっても、ブランディングはユーザーの獲得だけでなく、ドライバーの獲得も非常に重要な問題となる。アプリを起動して近くにドライバーがいなければ、ユーザーが離れてしまうことは間違いないからだ。
昨年、uberがLyftのドライバーに向けて「髭をそってuberに乗り換えよう」という挑発的な広告を行った。


これに対し、LyftのCEOは「あのキャンペーンのおかげで見込み客にリーチできた」と応戦的なコメントをしている。
今回のドライバーだったChristianのように両方のサービスを併用するドライバーもいるが、各社がドライバー確保にどう動くかも注目のポイントとなるだろう。

置き換える市場はタクシーだけではない

両者しのぎを削る配車サービスだが、資本をつぎこんで拡大を急ぐ理由は市場のポテンシャルの大きさにある。
配車サービスを「タクシーの市場の置き換え」と考えると、すぐ飽和点を迎えると思うかもしれない。しかし、彼らの考える未来は「自家用車を持ち、運転するというライフスタイル」自体をひっくり返すことなのだ。
日常的には配車・ライドシェアリングサービスと公共交通機関を併用し、どうしても必要な場合にはZipcarなどのカーシェアリングサービスで車を借りる、という組み合わせによって自家用車を持たない生活は十分に可能になる。
特にベイエリアでは、駐車場や保険などの自家用車を所持するにはコストが高い一方、バスや電車の公共交通機関も発達しており、さらに人々の新サービスへの抵抗感が薄い、と置き換えが進む土壌は整っている。
こうして市場を大きく捉えると、数年後には10倍以上の市場規模を狙えるとも考えられる。
それこそが、巨大な調達額を駆使して拡大を急ぐuberやLyftが期待する未来の姿。


参考記事:

投稿者:@r1ccha