Apple, Google, AmazonのIPOを担当した投資銀行H&Qの創業者、Bill Hambrecht(ビル・ハンブレクト)とは?


William R. "Bill" Hambrecht
Apple・Amazon・Google・Netscape・Adobe systems・Genentech...と名立たるIT企業のIPOを担当した人物が存在する。それが、Bill Hambrechtだ。
Bill Hambrechtは最初はH&Q、後にWR・Hambrechtという投資銀行を設立し、openIPO(後述)というシステムを導入、数々のIPOで素晴らしい成果を上げることに成功する。
どういった経緯でH&Q(ハンブレクト・アンド・クイスト)とWR・Hambrechtは設立されたのかのだろうか。加えて、創立者であるBill Hambrechtについて、またopenIPOとはどういうシステムなのかについて紹介していく。



Bill Hambrechtは、1935年生まれで1957年にはプリンストン大学を卒業している。
1968年に、George Quistと共にH&Q(ハンブレクト・アンド・クイスト)を創業。 偶然にも同年、フェアチャイルドセミコンダクターを退職したロバート・ノイス、ゴードン・ムーア(ムーアの法則の人)、アンドルー・グローヴらがインテルを創業している。まだこの時代はシリコンバレーという名前すらなかった頃の話だ。

Bill HambrechtとGeorge Quistの2人は、元々ベンチャーキャピタリストで、F.I DupontやBank of Americaに勤めていた。
ふたりとも、上司に新興テクノロジー市場に興味を持ってもらうのにとても苦労していた上に、官僚的な形式主義のディールにもうんざりしていた。
Bill Hambrechtはここ(現在のシリコンバレー)で何か重要なことが起こっていくと感じたという。しかし、ウォール街の古い投資銀行にとってはテクノロジーは難しくて理解できないものだった。規模が大きく収益性のあるビジネスにならないと、関心を示さなかったのだ。いくら説得しようとしてもだめなので、テクノロジーに強い人材を集めて、テクノロジーやヘルスケア、その他新興市場に特化している投資銀行を設立した。
そして、H&Qはいくつものサクセスストーリーに関わっていくになる。

H&Q元CEO,chairmanを勤めたGordon S Macklin(NASDAQの最初のCEO&President)は、ビジネスにおけるベンチャー新興市場の重要性を強調した。
“場外ホームランを打つチャンスはベンチャー領域にのみ存在する”


その後、H&Qは順調に成長を続ける。H&QのIPO支援実績は以下の通りだ。
1980年代 Apple Computer(世界最初のパソコン会社のIPO), Genentech, Adobe
1990年代 Netscape(世界最初のインターネット企業), MP3.com, Amazon.com
と現在も市場を牽引するような巨大テクノロジー企業や一世を風靡した、Netscape, MP3.comなどの名が連なっている。
※MP3.comは、合法的に無料で音楽を共有するサービスで、独立系アーティストにとって格好の宣伝の場となっていた。IPOでは3億7000万ドル以上の資金を調達し、単一の技術の株式公開としては今までで最大である。後にCNETに売却。


Bill Hambrechtは、1997年にH&Qの会長を退いた後、WR HAMBRECHT + COを創設。
大きな理由は、投資銀行業界の競争が過熱し独立が困難になったためだ。
H&Qのパートナーたちは大きな銀行と合併すべきだと考えていたが、Bill Hambrechtは賛同できなかったので、H&Qを辞めた。
H&Qはその1年半後、Chase Manhattan Bankに$1.35Bで買収されることとなる。
そして、会社名が変わりChase Securities Westになるが最終的には”H&Q”のネームバリューがあるので、”Chase H&Q”となる。
しかし、そのChase Manhattan BankがJPMorganと合併した事により、現在はJPMorgan Chaseの一部門となっている。

特筆すべきは、1年間を投じて独自に開発したというWR HAMBRECHTのIPOシステムだ。
従来のIPOは、ブックビルディング方式という不透明性が高い方法で行われていた。
さらに公開価格が高く設定されがちであり、公開後の株式の円滑な流通に支障を来たすことも問題視されていた。具体的に言うと'90年代のドットコムバブルには、投資銀行は贔屓の機関投資家に優先的にIPO株を割り当て、IPO価格をあえて低く設定。IPO後、株価は急騰し機関投資家は株を売り払って、あっという間に巨万の利益を得る。その後、その利益の一部を様々な形で投資銀行に還元する等という事がまかり通っていた。
詳細は、ブックビルディング方式|証券用語解説集|野村證券

ところが、独自のIPOシステム「openIPO」は、インターネットを通じてオークションを行い、一般投資家・機関投資家双方に平等な条件でIPO銘柄の公開価格や配分先を決定するというものだ。これにより、透明性が高くなる。
加えて、投資家にとっては高い値段をつければ株を買え、企業にとっては実際の市場に近い価格での資金調達が可能となる。
※The OpenIPO® auction,The OpenBook® auction ,OpenFollowOn® auction等といいうプロダクトを独自に作った。


この「openIPO」は、新しいものを取り入れようとするIT企業や、従来の方式(ブックビルディング方式)のIPOに不満がある企業で導入された。
 2001年から2004年までは、比較的小規模な取引を行なっていたが、2004年にGoogleのIPOを請負い、これがターニングポイントとなった。
2005年のmorning starでは主幹事を、2007年のClean Energy Fuels Corpでは単独での幹事を務めた。

Bill Hambrechtは、自分の投資銀行家としてのキャリアを回顧して以下のように語っている。
"Quality deals are not measured in size, and only over the long term. Therefore, let us be aggressive in betting on people.
どんなに素晴らしいIPOを手掛けたかは調達金額の大きさでは測れない。そして長い年月を経て初めてそれが良いディールだったかどうか判明する。だから僕たちは経営者の「人物」にアグレッシブに賭けよう。"
-Market Hackより

投資家と企業双方が平等な立場でIPO銘柄の公開価格や配分先を決めることができるという素晴らしいシステムを考案し、ベンチャーを支えている投資銀行の存在があるということもシリコンバレーの重要な要素となっていた。先日取り上げた、WSGRと一緒で、ベンチャーを支援しようという創業者の思いがよくわかる。

ソース:The OpenIPO Auction and A+ IPO Investment Banking Company | WR Hambrecht + Co / 投資銀行に翻弄されないオープンなIPOの勧め - CNET Japan  / 【バロンズ】フェイスブックとグーグルのIPO=ビル・ハンブレクト氏/ WSJ日本版  / The OpenIPO Auction and A+ IPO Investment Banking Company | WR Hambrecht + Co 
/ インテル - Wikipedia  / Hambrecht & Quist - Wikipedia, the free encyclopedia  / -Bill Hambrecht - Wikipedia, the free encyclopedia
投稿者:@tamiki_

Apple, Google, AmazonのIPOを担当した投資銀行H&Qの創業者、Bill Hambrecht(ビル・ハンブレクト)とは?


William R. "Bill" Hambrecht
Apple・Amazon・Google・Netscape・Adobe systems・Genentech...と名立たるIT企業のIPOを担当した人物が存在する。それが、Bill Hambrechtだ。
Bill Hambrechtは最初はH&Q、後にWR・Hambrechtという投資銀行を設立し、openIPO(後述)というシステムを導入、数々のIPOで素晴らしい成果を上げることに成功する。
どういった経緯でH&Q(ハンブレクト・アンド・クイスト)とWR・Hambrechtは設立されたのかのだろうか。加えて、創立者であるBill Hambrechtについて、またopenIPOとはどういうシステムなのかについて紹介していく。



Bill Hambrechtは、1935年生まれで1957年にはプリンストン大学を卒業している。
1968年に、George Quistと共にH&Q(ハンブレクト・アンド・クイスト)を創業。 偶然にも同年、フェアチャイルドセミコンダクターを退職したロバート・ノイス、ゴードン・ムーア(ムーアの法則の人)、アンドルー・グローヴらがインテルを創業している。まだこの時代はシリコンバレーという名前すらなかった頃の話だ。

Bill HambrechtとGeorge Quistの2人は、元々ベンチャーキャピタリストで、F.I DupontやBank of Americaに勤めていた。
ふたりとも、上司に新興テクノロジー市場に興味を持ってもらうのにとても苦労していた上に、官僚的な形式主義のディールにもうんざりしていた。
Bill Hambrechtはここ(現在のシリコンバレー)で何か重要なことが起こっていくと感じたという。しかし、ウォール街の古い投資銀行にとってはテクノロジーは難しくて理解できないものだった。規模が大きく収益性のあるビジネスにならないと、関心を示さなかったのだ。いくら説得しようとしてもだめなので、テクノロジーに強い人材を集めて、テクノロジーやヘルスケア、その他新興市場に特化している投資銀行を設立した。
そして、H&Qはいくつものサクセスストーリーに関わっていくになる。

H&Q元CEO,chairmanを勤めたGordon S Macklin(NASDAQの最初のCEO&President)は、ビジネスにおけるベンチャー新興市場の重要性を強調した。
“場外ホームランを打つチャンスはベンチャー領域にのみ存在する”


その後、H&Qは順調に成長を続ける。H&QのIPO支援実績は以下の通りだ。
1980年代 Apple Computer(世界最初のパソコン会社のIPO), Genentech, Adobe
1990年代 Netscape(世界最初のインターネット企業), MP3.com, Amazon.com
と現在も市場を牽引するような巨大テクノロジー企業や一世を風靡した、Netscape, MP3.comなどの名が連なっている。
※MP3.comは、合法的に無料で音楽を共有するサービスで、独立系アーティストにとって格好の宣伝の場となっていた。IPOでは3億7000万ドル以上の資金を調達し、単一の技術の株式公開としては今までで最大である。後にCNETに売却。


Bill Hambrechtは、1997年にH&Qの会長を退いた後、WR HAMBRECHT + COを創設。
大きな理由は、投資銀行業界の競争が過熱し独立が困難になったためだ。
H&Qのパートナーたちは大きな銀行と合併すべきだと考えていたが、Bill Hambrechtは賛同できなかったので、H&Qを辞めた。
H&Qはその1年半後、Chase Manhattan Bankに$1.35Bで買収されることとなる。
そして、会社名が変わりChase Securities Westになるが最終的には”H&Q”のネームバリューがあるので、”Chase H&Q”となる。
しかし、そのChase Manhattan BankがJPMorganと合併した事により、現在はJPMorgan Chaseの一部門となっている。

特筆すべきは、1年間を投じて独自に開発したというWR HAMBRECHTのIPOシステムだ。
従来のIPOは、ブックビルディング方式という不透明性が高い方法で行われていた。
さらに公開価格が高く設定されがちであり、公開後の株式の円滑な流通に支障を来たすことも問題視されていた。具体的に言うと'90年代のドットコムバブルには、投資銀行は贔屓の機関投資家に優先的にIPO株を割り当て、IPO価格をあえて低く設定。IPO後、株価は急騰し機関投資家は株を売り払って、あっという間に巨万の利益を得る。その後、その利益の一部を様々な形で投資銀行に還元する等という事がまかり通っていた。
詳細は、ブックビルディング方式|証券用語解説集|野村證券

ところが、独自のIPOシステム「openIPO」は、インターネットを通じてオークションを行い、一般投資家・機関投資家双方に平等な条件でIPO銘柄の公開価格や配分先を決定するというものだ。これにより、透明性が高くなる。
加えて、投資家にとっては高い値段をつければ株を買え、企業にとっては実際の市場に近い価格での資金調達が可能となる。
※The OpenIPO® auction,The OpenBook® auction ,OpenFollowOn® auction等といいうプロダクトを独自に作った。


この「openIPO」は、新しいものを取り入れようとするIT企業や、従来の方式(ブックビルディング方式)のIPOに不満がある企業で導入された。
 2001年から2004年までは、比較的小規模な取引を行なっていたが、2004年にGoogleのIPOを請負い、これがターニングポイントとなった。
2005年のmorning starでは主幹事を、2007年のClean Energy Fuels Corpでは単独での幹事を務めた。

Bill Hambrechtは、自分の投資銀行家としてのキャリアを回顧して以下のように語っている。
"Quality deals are not measured in size, and only over the long term. Therefore, let us be aggressive in betting on people.
どんなに素晴らしいIPOを手掛けたかは調達金額の大きさでは測れない。そして長い年月を経て初めてそれが良いディールだったかどうか判明する。だから僕たちは経営者の「人物」にアグレッシブに賭けよう。"
-Market Hackより

投資家と企業双方が平等な立場でIPO銘柄の公開価格や配分先を決めることができるという素晴らしいシステムを考案し、ベンチャーを支えている投資銀行の存在があるということもシリコンバレーの重要な要素となっていた。先日取り上げた、WSGRと一緒で、ベンチャーを支援しようという創業者の思いがよくわかる。

ソース:The OpenIPO Auction and A+ IPO Investment Banking Company | WR Hambrecht + Co / 投資銀行に翻弄されないオープンなIPOの勧め - CNET Japan  / 【バロンズ】フェイスブックとグーグルのIPO=ビル・ハンブレクト氏/ WSJ日本版  / The OpenIPO Auction and A+ IPO Investment Banking Company | WR Hambrecht + Co 
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投稿者:@tamiki_