3ヶ月で年収2倍!?シリコンバレーでエンジニア養成学校が増加する理由



ここ数年、アメリカのテック系企業が集まる都市、特にサンフランシスコでは「C
ode Bootcamp」や「Dev Bootcamp」と呼ばれる、エンジニア(もしくはデザイナー等の技術職)の養成学校が増えている。
先日、TechWatchでもMakeGameWith.Usというプログラムを提供するYCombinator卒業生の起業家にインタビューを掲載したが、今回はそのような学校が増加する背景とプログラムの内容に迫りたい。

2-3ヶ月で100-150万円が相場

ほとんどの学校では、フルタイムとパートタイム、さらに1日で完結するイベントやワークショップなど複数のコースを用意している。
特に目玉となるのは、2〜3ヶ月ほど、平日に毎日フルタイムで授業を行うコースで、費用は10週間で10000ドルほどが相場。生徒はほとんどがキャリアチェンジを考える社会人だ。
パートタイムのコースでは週2、3回ほど、夜に3時間ほどの授業行い、仕事をしながらでも通えるように配慮されている。
授業料については奨学金の制度があったり、就職後の年収から一定の割合を授業料として納めるなどの支払い方法を用意していたりと、高い授業料のハードルを下げる制度も存在する。

エンジニアへの転職希望が多い背景

約3ヶ月間のコースで日本円では100万円ほどの授業料と、決して安い金額ではない。それでもこのような学校が人気を集める背景には、ベイエリアにおけるエンジニアの地位の高さがある。
ベイエリアのIT系企業では、スタートアップであれエンジニアの年収は10万ドルを超えることはざらだ。例えば近隣の名門大学、UCバークレーとスタンフォード大学のコンピューターサイエンス学科を卒業した生徒の平均初任給は10万ドルだった。大手になると、一般のエンジニアでも年収20万ドルを超えることも普通だ。
年収だけでなく、他にも様々なベネフィットがある。Googleオフィスの象徴として知られているように、無料の食事やカフェの提供、遊び心がありリラックスできるオフィス、通勤のためのシャトルバス、自宅勤務も可能なフレキシブルな制度などなど、良い人材確保のために各社ともすばらしい環境を提供しており、スキルをつけてシリコンバレーエンジニアの仲間入りできれば、ハイクラスな生活を送ることが出来る(もちろん競争は激しいが)。
一方で、貧富の格差が激しいアメリカでは、上位層が甚大な富を握る一方で、年収が15370ドル以下の貧困層は人口の16%以上を占める5000万人を超える
サンフランシスコの街を歩いていても、シティバイクにのりApple製品やウェアラブルデバイスをつけたテック業界の人がそこら中にいるエリアのすぐ隣にはホームレスや不良ばかりの治安がよくないエリアもあり、肌で格差を感じる環境だ。
この圧倒的な格差を考えると、100万円以上を投資しても、エンジニアにキャリアチェンジしたいという人が多いことは理解に容易いだろう。
実際に、筆者が以下で紹介する学校の一つの「Hackbright Academy」のイベントに参加した際に参加者と話してみたところ、入学以前はITと全く関係ない教師をやっていたり、IT系のサポートをやっていた人もいれば、プロダクトデザイナーや、Googleでマーケティングをやっていたがエンジニアに転向したくて退職したという人もおり、バックグラウンドは様々だった。

以下ではサンフランシスコにある代表的なCode bootcampを8校紹介する。
(※各学校とも、海外からの学生の受け入れは行っている。ただしビザのサポートはされない)

サンフランシスコにあるCode Bootcamp 8校


App Academy
期間:9週間
授業料:無料。ただし卒業後についた仕事の初任給年収の15%を支払う。(就職できなかった場合は無料)
特徴:98%の卒業生がオファーを受け取るか働いており、SFでは平均10万ドルの年収、NYでは平均8.4万ドルの年収を得ている
卒業生の就職先:Facebook、Twilio、vimeo、Zendeskなど

Code Path
期間:6週間
授業料:無料(エンジニア経験者向け)
特徴:プロジェクト中心。カリキュラムや教材はフリーでDL可能。ビデオのレクチャーと、電話のメンタリングがある。

Dev Bootcamp
期間:9週間
授業料:12200ドル(女性のみ500ドルの奨学金あり)
卒業生の体験談がHuffingtonPostで紹介されている。

General Assembly
期間:クラスによって異なる
授業料:クラスによって異なる
内容:最大手として有名。コースの内容も豊富で、バックエンド、フロントエンド、データサイエンス、ビジネス基礎、デジタルマーケティング、プロダクトマネジメント、UX等幅広い。

Hack Reactor
期間:12週間
授業料:17,780ドル
特徴:99%が仕事を卒業3ヶ月以内にオファーを受け取っており、平均1.05万ドルの年収を得ている。
卒業生の就職先:Adobe、Groupon、Salesforceなど

Hackbright Academy
期間:10週間
授業料:15000ドル(卒業後、パートナー企業に就職すると3000ドルの返金)
特徴:女性限定の学校。

Marakana
期間:2-7日間
授業料:2000-3000ドル。

RocketU
期間:10週間
授業料:約10000ドル
特徴:著名なスタートアップを多数輩出するRocketSpaceが開催する。


10週間でエンジニアになれるのか?

当然ながら、10週間程度のプログラム内容で本当にプロとして働けるのか、疑問に思う方も多いだろう。
初心者を大学でComputer Scienceを学んだエンジニアたちと働けるレベルに育てるため、Code Bootcamp各校には共通する特徴がある。
まず一つ目に、入学者の選抜だ。上記の学校のうちの一つ、Dev Bootcampを卒業後、年収が2倍になったという男性を紹介するHuffingtonPostの記事によれば、これらのCode bootcampでは入学希望者のうち入学できるのは10-20%にまで選抜されるとのことだ。入学に際しては志望動機やキャリアビジョン、自分の性格のアピールなどが求められ、本気度が高い生徒に絞り込まれる。
次に、入学が決まると、実際の入学日までにかなりの量の予習が課される。近年はオンラインでもプログラミングを学べる教材が充実しているため、それらを事前に修了しておくよう指示されるケースが多い。
そして、いざプログラムが始まると、週に最低でも80-100時間をプログラムのために使う。それこそがbootcamp(元々は米国軍の新兵訓練のプログラムの意味)と呼ばれる所以だ。
筆者が実際にHackbright AcademyやGeneral Assemblyのイベントに参加した際にも、卒業生が「睡眠は毎日3時間くらい」「エナジードリンクが手放せない」「体力をつけておくこと」「モチベーションのマネジメントが問われる」「期間中は全く友達に会わなかった」「Demo Dayが終わったら、ようやくゆっくり寝れる!!」などと語っており、相当の忙しさになることがみてとれた。
肝心のプログラム内容については、座学よりプロジェクトに重点をおいている。最初の1、2週間は座学の時間も多いが、中盤からは個人やペアを組んでプロジェクトを企画し、数週間でサービスをつくりあげ、最後の「Demo Day」での発表に向けて完成させる。その過程でメンターが適宜アドバイスをするという仕組みだ。実際のプログラミングだけでなく、ニーズの探り方や顧客インタビューの方法、企業との面接の練習まで幅広いレクチャーがある。
そして、Demo Dayには各企業のリクルーターやVCなどが見学にきており、生徒の発表を見て仕事のオファーを出す。この仕組で、どの学校も95%以上との高い就職率を誇っているようだ。

高まるエンジニア需要への対応拡大


直近1年でもCode Bootcampはどんどん増加しており、クオリティが担保できるのか懸念の声も上がっている。しかし、エンジニアの人材不足は深刻な問題で、オバマ大統領もComputer Scienceを学んでほしいと若者に呼びかけているほどだ。その点、多大な費用と時間がかかる大学を卒業しなくてもエンジニアになれるチャンスを提供するという事業は意義深い。
サンフランシスコに多く集まるCode Bootcampだが、米国内でもNYやシカゴ等の大都市にも学校は広まっている。さらに世界中でCode Bootcampからうまれるエンジニアは増加していくのではないだろうか。

参考:

3ヶ月で年収2倍!?シリコンバレーでエンジニア養成学校が増加する理由



ここ数年、アメリカのテック系企業が集まる都市、特にサンフランシスコでは「C
ode Bootcamp」や「Dev Bootcamp」と呼ばれる、エンジニア(もしくはデザイナー等の技術職)の養成学校が増えている。
先日、TechWatchでもMakeGameWith.Usというプログラムを提供するYCombinator卒業生の起業家にインタビューを掲載したが、今回はそのような学校が増加する背景とプログラムの内容に迫りたい。

2-3ヶ月で100-150万円が相場

ほとんどの学校では、フルタイムとパートタイム、さらに1日で完結するイベントやワークショップなど複数のコースを用意している。
特に目玉となるのは、2〜3ヶ月ほど、平日に毎日フルタイムで授業を行うコースで、費用は10週間で10000ドルほどが相場。生徒はほとんどがキャリアチェンジを考える社会人だ。
パートタイムのコースでは週2、3回ほど、夜に3時間ほどの授業行い、仕事をしながらでも通えるように配慮されている。
授業料については奨学金の制度があったり、就職後の年収から一定の割合を授業料として納めるなどの支払い方法を用意していたりと、高い授業料のハードルを下げる制度も存在する。

エンジニアへの転職希望が多い背景

約3ヶ月間のコースで日本円では100万円ほどの授業料と、決して安い金額ではない。それでもこのような学校が人気を集める背景には、ベイエリアにおけるエンジニアの地位の高さがある。
ベイエリアのIT系企業では、スタートアップであれエンジニアの年収は10万ドルを超えることはざらだ。例えば近隣の名門大学、UCバークレーとスタンフォード大学のコンピューターサイエンス学科を卒業した生徒の平均初任給は10万ドルだった。大手になると、一般のエンジニアでも年収20万ドルを超えることも普通だ。
年収だけでなく、他にも様々なベネフィットがある。Googleオフィスの象徴として知られているように、無料の食事やカフェの提供、遊び心がありリラックスできるオフィス、通勤のためのシャトルバス、自宅勤務も可能なフレキシブルな制度などなど、良い人材確保のために各社ともすばらしい環境を提供しており、スキルをつけてシリコンバレーエンジニアの仲間入りできれば、ハイクラスな生活を送ることが出来る(もちろん競争は激しいが)。
一方で、貧富の格差が激しいアメリカでは、上位層が甚大な富を握る一方で、年収が15370ドル以下の貧困層は人口の16%以上を占める5000万人を超える
サンフランシスコの街を歩いていても、シティバイクにのりApple製品やウェアラブルデバイスをつけたテック業界の人がそこら中にいるエリアのすぐ隣にはホームレスや不良ばかりの治安がよくないエリアもあり、肌で格差を感じる環境だ。
この圧倒的な格差を考えると、100万円以上を投資しても、エンジニアにキャリアチェンジしたいという人が多いことは理解に容易いだろう。
実際に、筆者が以下で紹介する学校の一つの「Hackbright Academy」のイベントに参加した際に参加者と話してみたところ、入学以前はITと全く関係ない教師をやっていたり、IT系のサポートをやっていた人もいれば、プロダクトデザイナーや、Googleでマーケティングをやっていたがエンジニアに転向したくて退職したという人もおり、バックグラウンドは様々だった。

以下ではサンフランシスコにある代表的なCode bootcampを8校紹介する。
(※各学校とも、海外からの学生の受け入れは行っている。ただしビザのサポートはされない)

サンフランシスコにあるCode Bootcamp 8校


App Academy
期間:9週間
授業料:無料。ただし卒業後についた仕事の初任給年収の15%を支払う。(就職できなかった場合は無料)
特徴:98%の卒業生がオファーを受け取るか働いており、SFでは平均10万ドルの年収、NYでは平均8.4万ドルの年収を得ている
卒業生の就職先:Facebook、Twilio、vimeo、Zendeskなど

Code Path
期間:6週間
授業料:無料(エンジニア経験者向け)
特徴:プロジェクト中心。カリキュラムや教材はフリーでDL可能。ビデオのレクチャーと、電話のメンタリングがある。

Dev Bootcamp
期間:9週間
授業料:12200ドル(女性のみ500ドルの奨学金あり)
卒業生の体験談がHuffingtonPostで紹介されている。

General Assembly
期間:クラスによって異なる
授業料:クラスによって異なる
内容:最大手として有名。コースの内容も豊富で、バックエンド、フロントエンド、データサイエンス、ビジネス基礎、デジタルマーケティング、プロダクトマネジメント、UX等幅広い。

Hack Reactor
期間:12週間
授業料:17,780ドル
特徴:99%が仕事を卒業3ヶ月以内にオファーを受け取っており、平均1.05万ドルの年収を得ている。
卒業生の就職先:Adobe、Groupon、Salesforceなど

Hackbright Academy
期間:10週間
授業料:15000ドル(卒業後、パートナー企業に就職すると3000ドルの返金)
特徴:女性限定の学校。

Marakana
期間:2-7日間
授業料:2000-3000ドル。

RocketU
期間:10週間
授業料:約10000ドル
特徴:著名なスタートアップを多数輩出するRocketSpaceが開催する。


10週間でエンジニアになれるのか?

当然ながら、10週間程度のプログラム内容で本当にプロとして働けるのか、疑問に思う方も多いだろう。
初心者を大学でComputer Scienceを学んだエンジニアたちと働けるレベルに育てるため、Code Bootcamp各校には共通する特徴がある。
まず一つ目に、入学者の選抜だ。上記の学校のうちの一つ、Dev Bootcampを卒業後、年収が2倍になったという男性を紹介するHuffingtonPostの記事によれば、これらのCode bootcampでは入学希望者のうち入学できるのは10-20%にまで選抜されるとのことだ。入学に際しては志望動機やキャリアビジョン、自分の性格のアピールなどが求められ、本気度が高い生徒に絞り込まれる。
次に、入学が決まると、実際の入学日までにかなりの量の予習が課される。近年はオンラインでもプログラミングを学べる教材が充実しているため、それらを事前に修了しておくよう指示されるケースが多い。
そして、いざプログラムが始まると、週に最低でも80-100時間をプログラムのために使う。それこそがbootcamp(元々は米国軍の新兵訓練のプログラムの意味)と呼ばれる所以だ。
筆者が実際にHackbright AcademyやGeneral Assemblyのイベントに参加した際にも、卒業生が「睡眠は毎日3時間くらい」「エナジードリンクが手放せない」「体力をつけておくこと」「モチベーションのマネジメントが問われる」「期間中は全く友達に会わなかった」「Demo Dayが終わったら、ようやくゆっくり寝れる!!」などと語っており、相当の忙しさになることがみてとれた。
肝心のプログラム内容については、座学よりプロジェクトに重点をおいている。最初の1、2週間は座学の時間も多いが、中盤からは個人やペアを組んでプロジェクトを企画し、数週間でサービスをつくりあげ、最後の「Demo Day」での発表に向けて完成させる。その過程でメンターが適宜アドバイスをするという仕組みだ。実際のプログラミングだけでなく、ニーズの探り方や顧客インタビューの方法、企業との面接の練習まで幅広いレクチャーがある。
そして、Demo Dayには各企業のリクルーターやVCなどが見学にきており、生徒の発表を見て仕事のオファーを出す。この仕組で、どの学校も95%以上との高い就職率を誇っているようだ。

高まるエンジニア需要への対応拡大


直近1年でもCode Bootcampはどんどん増加しており、クオリティが担保できるのか懸念の声も上がっている。しかし、エンジニアの人材不足は深刻な問題で、オバマ大統領もComputer Scienceを学んでほしいと若者に呼びかけているほどだ。その点、多大な費用と時間がかかる大学を卒業しなくてもエンジニアになれるチャンスを提供するという事業は意義深い。
サンフランシスコに多く集まるCode Bootcampだが、米国内でもNYやシカゴ等の大都市にも学校は広まっている。さらに世界中でCode Bootcampからうまれるエンジニアは増加していくのではないだろうか。

参考: