PayPalの創業者であり投資家のピーターティール(Peter Thiel)とは?目的は海上国家・人工知能・中退支援?







Peter Thiel
Peter Thiel(ピーター・ティール)
今回は、PayPalの共同創業者であり、先見性のあるエンジェル投資や様々なプロジェクトに関わっているピーターティールについて解説していく。

1967年10月11日、東ドイツに生まれる。父の転勤で米国、南アフリカ、ナミビアなど7カ国の小学校を転々とする。青年時代は米国内トップランクのチェスの選手として活躍した。そして、スタンフォード大学で20世紀思想を学び、1987年にリバタリアンの牙城として知られる学生新聞『Stanford Review』を創設した。1989年にはスタンフォードで哲学学士取得し、その後、1992年にはスタンフォードロースクールで法学博士を取得する。
『Stanford Review』がきっかけで、スタンフォード内で良好な関係を築く。その中には、なんとKeith Rabois, David O. Sacks, Reid Hoffmanなどがいた。(つまり、のちにPayPalで働くことになる仲間が学生新聞を手伝ってくれており、それが今のPayPalマフィアになっているという事だ!)
さらに在学中にRené Girard(ミメーシス理論を考案し、人類学の基礎を築いた。)に出会い、Thielは大きな影響を受けている。

第11連邦巡回区控訴裁判所にて事務員として働き、1993年から1996年はクレディ・スイスでデリバティブのトレードを行う。1996年には、Thiel Capital Managementというマルチストラテジー(多様な投資手法で利益を上げる)のファンドを設立する。




1998年にPayPalを Max Levchinと伴に創業者しCEOとして活躍。後に Elon MuskのX.comと合併。

PayPalは2002年に上場し、eBayに15億ドルで売却する。 55Mドルもの大金を手にする事となる。
PayPal売却後すぐに、Clarium Capitalというマイクロヘッジファンドを立ち上げる。そして、2005年には、金融雑誌のMarHedgeとAbsolute Returnが選ぶグローバルマイクロファンドとして表彰される。
2004年にFacebookに50万ドルの融資を行って最初の外部投資家となった。後に7%の保有権をもち、2012年8月(ロックアップ期間の終わり)には、累計10億ドル近くを売却した。これは彼の株の持ち分の大半を売却した事となった。
2011年、Forbes400の293番目にランクインし、さらに2014年、Forbes Midas Listの4番目にランクインした。
※Midas List:ハイテク産業のベンチャーを支えるベンチャーキャピタリスト、エンジェル、弁護士、リクルーター、アドバイザーなどの中から、最も企業価値が高くなったベンチャーに貢献した支援者を選ぶランキング

Midaslistに選出されていることからわかるように、ティールは先見性のある投資を行い続けている。エンジェル投資家としては、確認できる範囲で51社に投資を行なっている。
例えば、テロリストや犯罪者を追跡するソフトや様々なデータ解析を行うPalantir Technologiesに3,000万ドルを投資し、ボードメンバーとなっている。現時点ではバリエーションは$90億ドルとなっている。



Founders FundのCorporate siteのtop画面。
"空飛ぶ自動車が欲しいと思っていたのに、実際に手にしたのは140文字"

さらに、2005年の6月にFounders Fundを設立。
PayPal, Facebook, Space Exploration Technologies (SpaceX), and Palantir Technologiesなどの経営者や有名な初期メンバーなどが、パートナーとして参加している。チームは14人で、メインはやはりPayPalマフィアのpeter thiel,Ken Howeryなどである。このファンドは、ステージにとらわれず、多種多様な会社に出資している。航空宇宙産業、人工知能、最新情報処理、エネルギー、ヘルスケア、リヴァース・エイジング、コンシューマインターネットなどの分野を含んでいる。
2005, 2007, 2010, 2012, 2014に5回ファンドを組んでおり、2005年の第1号ファンドのサイズは$50M程だったが、2014年の第5号ファンドのサイズは$2Bを超えるほどまでなった。投資実績は、2014年5月段階で確認できるものは145社にも上る。


ピーターティールは上記のように、卓越した経歴の持ち主だが、その他にもユニークで多様な取り組みを行なっている。

・海上国家建造
英語では"Seasteading"
2008年に海上人工国家構想群の実現を目指すカルフォルニア州のSeasteading Instituteを設立したパトリ・フリードマンを本気で支援している。2011年までに125万ドルを投資している。 
Seasteading Instituteは、公海上に石油プラットフォームのような人工島を建設し、独立国家を創設することを目指している。この新国家では社会福祉のない、建設基準も緩く、最低賃金の定めもない、武器の制限が若干あるくらいのリバタリアン的な政治が試験的にしかれることになるのだそうだ。パトリ・フリードマンによれば、入植の第一弾を7年後に行うことを目標に、来年にはサンフランシスコ沿岸にオフィスパークを設立する予定だ。
ティールは、「08年の金融危機以降、市場への規制強化を求める市民を見ればわかる。今や自由と民主主義は両立しない」と述べている。
しかも、パトリ・フリードマンは、20世紀後半におけるマネタリスト、新自由主義を代表する学者であるミルトン・フリードマンの孫である上に元Googleエンジニアだ。

・人工知能特異点研究所
Singularity-技術的特異点
技術的特異点とは簡単に言うと、今後コンピューターが指数関数的に進歩し、ある時点でその知能が人間を超える事だ。技術的特異点に到達後、人間の抱える問題がすべて解決され、人間は永遠の寿命を持つようになるという説から、コンピューターが次々に自身よりも高知能のマシンを作り続けるようになるので、人間は不要になるという説まで様々だ。
ティールは技術的特異点の重要性を非常に感じており、研究のために2006年2月と2007年5月に合わせて50万ドルの投資を行なっている。
ティールは、NYやスタンフォードで開催されたSingularity Summit に参加、登壇している。

・Thiel Fellowship
 2011年の3月に、20歳以下の人たちのためのフェローシップを提供することを発表した。
定員は20名で、学校を辞め、研究や仕事に没頭するために、特に条件なしに2年間で$100万ドルを提供するというプログラムだ。
目標は、"自主学習・独立した思考・有意義な貢献を通じて成功し、世界をよりよくするために必要な物を根本から考え直す、先見性のあるコミュニティを創る”こと。
実際にフェローシップを受けた人は、結果を出しているようだ。
以下のtechcrunchの記事に詳しく書かれている。

大学進学を拒否していきなり研究員フェローシップを開始するとどうなるか,という英才教育実験 | TechCrunch Japan 


上記のようなピーターティールの活動や投資はすべてリバタリアニズム(個人的な自由、経済的な自由の双方を重視する、自由主義上の政治思想)と、テックスローダウンに対抗するためという意味で一貫しているように思える。今後も彼の活動に注目していきたい。


※テックスローダウンについて
以下はwiredの-不機嫌な「天使」、かく語りき from 『WIRED』VOL. 3 « WIRED.jp  という記事からの引用であり、ピーターティールの言葉だ。
"情報社会は、雇用を増やしてもいないし、製造や生産性向上において革新をもたらしてはいない。組み立てラインや高層ビル、飛行機やパソコンを生み出したアメリカは、ある時期から未来を信じることができなくなってしまったと嘆き、彼はその様相を「テック・スローダウン」と命名した。「未来」という概念の崩壊は、端的にSFの衰退に見ることができる。子どものころに夢見た空飛ぶクルマはいったいどうなってしまったのだろうか。"

"結局のところ「テック・スローダウン」に対する処方箋は、強力な個人の登場にかかっている"



画像:-CC Search
投稿者:@tamiki_

PayPalの創業者であり投資家のピーターティール(Peter Thiel)とは?目的は海上国家・人工知能・中退支援?







Peter Thiel
Peter Thiel(ピーター・ティール)
今回は、PayPalの共同創業者であり、先見性のあるエンジェル投資や様々なプロジェクトに関わっているピーターティールについて解説していく。

1967年10月11日、東ドイツに生まれる。父の転勤で米国、南アフリカ、ナミビアなど7カ国の小学校を転々とする。青年時代は米国内トップランクのチェスの選手として活躍した。そして、スタンフォード大学で20世紀思想を学び、1987年にリバタリアンの牙城として知られる学生新聞『Stanford Review』を創設した。1989年にはスタンフォードで哲学学士取得し、その後、1992年にはスタンフォードロースクールで法学博士を取得する。
『Stanford Review』がきっかけで、スタンフォード内で良好な関係を築く。その中には、なんとKeith Rabois, David O. Sacks, Reid Hoffmanなどがいた。(つまり、のちにPayPalで働くことになる仲間が学生新聞を手伝ってくれており、それが今のPayPalマフィアになっているという事だ!)
さらに在学中にRené Girard(ミメーシス理論を考案し、人類学の基礎を築いた。)に出会い、Thielは大きな影響を受けている。

第11連邦巡回区控訴裁判所にて事務員として働き、1993年から1996年はクレディ・スイスでデリバティブのトレードを行う。1996年には、Thiel Capital Managementというマルチストラテジー(多様な投資手法で利益を上げる)のファンドを設立する。




1998年にPayPalを Max Levchinと伴に創業者しCEOとして活躍。後に Elon MuskのX.comと合併。

PayPalは2002年に上場し、eBayに15億ドルで売却する。 55Mドルもの大金を手にする事となる。
PayPal売却後すぐに、Clarium Capitalというマイクロヘッジファンドを立ち上げる。そして、2005年には、金融雑誌のMarHedgeとAbsolute Returnが選ぶグローバルマイクロファンドとして表彰される。
2004年にFacebookに50万ドルの融資を行って最初の外部投資家となった。後に7%の保有権をもち、2012年8月(ロックアップ期間の終わり)には、累計10億ドル近くを売却した。これは彼の株の持ち分の大半を売却した事となった。
2011年、Forbes400の293番目にランクインし、さらに2014年、Forbes Midas Listの4番目にランクインした。
※Midas List:ハイテク産業のベンチャーを支えるベンチャーキャピタリスト、エンジェル、弁護士、リクルーター、アドバイザーなどの中から、最も企業価値が高くなったベンチャーに貢献した支援者を選ぶランキング

Midaslistに選出されていることからわかるように、ティールは先見性のある投資を行い続けている。エンジェル投資家としては、確認できる範囲で51社に投資を行なっている。
例えば、テロリストや犯罪者を追跡するソフトや様々なデータ解析を行うPalantir Technologiesに3,000万ドルを投資し、ボードメンバーとなっている。現時点ではバリエーションは$90億ドルとなっている。



Founders FundのCorporate siteのtop画面。
"空飛ぶ自動車が欲しいと思っていたのに、実際に手にしたのは140文字"

さらに、2005年の6月にFounders Fundを設立。
PayPal, Facebook, Space Exploration Technologies (SpaceX), and Palantir Technologiesなどの経営者や有名な初期メンバーなどが、パートナーとして参加している。チームは14人で、メインはやはりPayPalマフィアのpeter thiel,Ken Howeryなどである。このファンドは、ステージにとらわれず、多種多様な会社に出資している。航空宇宙産業、人工知能、最新情報処理、エネルギー、ヘルスケア、リヴァース・エイジング、コンシューマインターネットなどの分野を含んでいる。
2005, 2007, 2010, 2012, 2014に5回ファンドを組んでおり、2005年の第1号ファンドのサイズは$50M程だったが、2014年の第5号ファンドのサイズは$2Bを超えるほどまでなった。投資実績は、2014年5月段階で確認できるものは145社にも上る。


ピーターティールは上記のように、卓越した経歴の持ち主だが、その他にもユニークで多様な取り組みを行なっている。

・海上国家建造
英語では"Seasteading"
2008年に海上人工国家構想群の実現を目指すカルフォルニア州のSeasteading Instituteを設立したパトリ・フリードマンを本気で支援している。2011年までに125万ドルを投資している。 
Seasteading Instituteは、公海上に石油プラットフォームのような人工島を建設し、独立国家を創設することを目指している。この新国家では社会福祉のない、建設基準も緩く、最低賃金の定めもない、武器の制限が若干あるくらいのリバタリアン的な政治が試験的にしかれることになるのだそうだ。パトリ・フリードマンによれば、入植の第一弾を7年後に行うことを目標に、来年にはサンフランシスコ沿岸にオフィスパークを設立する予定だ。
ティールは、「08年の金融危機以降、市場への規制強化を求める市民を見ればわかる。今や自由と民主主義は両立しない」と述べている。
しかも、パトリ・フリードマンは、20世紀後半におけるマネタリスト、新自由主義を代表する学者であるミルトン・フリードマンの孫である上に元Googleエンジニアだ。

・人工知能特異点研究所
Singularity-技術的特異点
技術的特異点とは簡単に言うと、今後コンピューターが指数関数的に進歩し、ある時点でその知能が人間を超える事だ。技術的特異点に到達後、人間の抱える問題がすべて解決され、人間は永遠の寿命を持つようになるという説から、コンピューターが次々に自身よりも高知能のマシンを作り続けるようになるので、人間は不要になるという説まで様々だ。
ティールは技術的特異点の重要性を非常に感じており、研究のために2006年2月と2007年5月に合わせて50万ドルの投資を行なっている。
ティールは、NYやスタンフォードで開催されたSingularity Summit に参加、登壇している。

・Thiel Fellowship
 2011年の3月に、20歳以下の人たちのためのフェローシップを提供することを発表した。
定員は20名で、学校を辞め、研究や仕事に没頭するために、特に条件なしに2年間で$100万ドルを提供するというプログラムだ。
目標は、"自主学習・独立した思考・有意義な貢献を通じて成功し、世界をよりよくするために必要な物を根本から考え直す、先見性のあるコミュニティを創る”こと。
実際にフェローシップを受けた人は、結果を出しているようだ。
以下のtechcrunchの記事に詳しく書かれている。

大学進学を拒否していきなり研究員フェローシップを開始するとどうなるか,という英才教育実験 | TechCrunch Japan 


上記のようなピーターティールの活動や投資はすべてリバタリアニズム(個人的な自由、経済的な自由の双方を重視する、自由主義上の政治思想)と、テックスローダウンに対抗するためという意味で一貫しているように思える。今後も彼の活動に注目していきたい。


※テックスローダウンについて
以下はwiredの-不機嫌な「天使」、かく語りき from 『WIRED』VOL. 3 « WIRED.jp  という記事からの引用であり、ピーターティールの言葉だ。
"情報社会は、雇用を増やしてもいないし、製造や生産性向上において革新をもたらしてはいない。組み立てラインや高層ビル、飛行機やパソコンを生み出したアメリカは、ある時期から未来を信じることができなくなってしまったと嘆き、彼はその様相を「テック・スローダウン」と命名した。「未来」という概念の崩壊は、端的にSFの衰退に見ることができる。子どものころに夢見た空飛ぶクルマはいったいどうなってしまったのだろうか。"

"結局のところ「テック・スローダウン」に対する処方箋は、強力な個人の登場にかかっている"



画像:-CC Search
投稿者:@tamiki_