『日本から世界で$1Bカンパニーを創る挑戦を待っている』Y CombinatorパートナーKat Manalacへのインタビュー





ベイエリアの投資家へのインタビューシリーズ。今回は、DropBoxやAirBnBを生み出した世界トップクラスのアクセラレーターであるY CombonatorのパートナーKat Manalac氏にインタビューを行った。どのようにYCが優れたアクセラレーターなのか、YCの選考では何を重視しているのかなど、日本からYCに挑戦するスタートアップにとって有益なアドバイスをいただくことができた。


YCというコミュニティを100年単位で考えている


質問者(以下S):米国以外のスタートアップがYCに参加することの利点は何ですか?
Kat Manalac(以下K):それに関してはいくつかあります。米国外から米国にビジネスを拡大したいスタートアップにとって、YCはとても効率的な手段のひとつです。実際に多くのチームが米国外から参加しています。例えば、前回のバッジに参加していた韓国出身のMemebox。彼らは韓国国内だけでも順調に成長していましたが、米国市場に参入する際YCに参加するという選択肢を取りました。そして、彼らは我々のサポートを活用して米国でも上手にビジネスを展開しています。過去我々は、Dropboxや、Raddit、AirBnBなど素晴らしいプロダクトを生み出すお手伝いをしてきました。このようなナレッジを提供できるアクセラレータは他にないと思います。

また、米国外のスタートアップにとっては米国の一流投資家にアクセスできることも魅力の一つです。米国の多くのVCが海外(米国外)の優れたスタートアップに投資をしたがっています。3ヶ月のプログラムを締めくくる最後のDemo Dayでは、450〜500人の投資家が集まり、効率的に投資家にアプローチできるのです。YCのコネクションなしに海外のチームがこのような繋がりを利用できる機会は滅多にありません。

最後に、ClearTaxというインドを拠点とするチームが前回のバッジに参加していたのですが、彼らはインド国内のマーケットを重視しており、今すぐビジネスを米国に展開する予定はありませんでした。このようなケースのスタートアップでも我々は積極的にサポートしていく方針です。成長や資金調達、人々が欲しがるプロダクトの作り方、ビジョンの設定やコーディングに関することなど、スタートアップを行う上で発生する問題は世界中で共通しているので、それらに関して我々は普遍的なアドバイスができるのです。


S:YCのプログラム期間中はどのように参加チームをサポートするのですか?
K:YCのプログラム中にはグループによるオフィスアワーを設けています。これは、2週間の頻度で5〜6の他の企業と合同でパートナーとのメンタリングを行うといったものです。この機会を通じて、他のチームが何を学んでいるかを共有することができる上に、自社以外のフィードバックを同じ機会に受けることができます。異なるスタートアップが、お互いのビジネスの過程をチェックし、解決策を考えるというプロセスはとても貴重なもです。また、合同のオフィスアワー以外にも、1対1のオフィスアワーを用意しています。計9回のオフィスアワーを予約することができ、個々のチームに最適なソリューションをパートナーと共に考える機会として活用できます。

加えて、毎週火曜日はバッジに参加しているスタートアップ全体でのディナーを行っています。このような交流の機会はスタートアップにとって、とても価値のあるものです。スタートアップは孤独なプロセスですからね。我々はオフィスを提供していないので、異なる場所からベイエリアに訪れている彼らは、各自のアパートやオフィスにこもって孤独に開発をしているわけです。そんな彼らに対して、全員が火曜日の夜にYCのオフィスに集まることは貴重な交流の機会になっています。そこでは、事業の進捗をシェアしたり、著名なスピーカーを招きオフレコで話しを伺うといった取り組みを行っています。外部に漏れない安全な場所で、Tweet禁止でやっているんですよ(笑)。彼らが話してくれるのは、全てがスタートアップの過程で起こりうるリアルなストーリーです。とても為になる上に実行可能なアドバイスを我々だけにこっそり話してくれます。例えば、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグや、Indiegogoの創業者、Twitterの創業者などが過去に登壇してくれました。

また、月毎に様々なトピックを取り上げてワークショップを実施しています。PRやグロース、ハイアリング、もっとニッチなテーマを取り上げることもあります。B2Bとか、ハードウェアの会社に向けて特許に関するものなど。

あ、あともうひとつプログラムを通じた卒業生との繋がりも強力な助けになっているようです。これは前回のバッジの中で、最も成功している卒業生が直接相談に乗ってくれるといったもので、実際にStripeの創業者からメンタリングを受けたチームもいます。彼らは往々にして同じ道を歩んできているので、より具体的なアドバイスを与えることができのです。


S:YCと他のアクセラレーターの違いは何ですか?
K:YCは一番初めに立ち上げられたアクセラレーターです。2005年に誰も行っていなかったアクセラレーターというモデルに挑戦し、そろそろ10周年を迎えようとしています。Paul GrahamやJessica Livingstonがケンブリッジで開始した第一回のバッジから素晴らしいスタートアップを生み出しました。Redditや現在YCの代表を務めているSamが創業したLoopt、Justin TVやTwitchの創業したJustin Kanなど。スタートアップをはじめる人からしたらとても魅力的なコミュニティになっています。他のアクセラレーターはここまで協力な卒業生のネットワークを持っていないはずです。現在までで700社以上の会社と1400人を超える創業者を生み出しており、このコミュニティに入ってくる人達は皆優秀で協力的であることが特徴です。全ての世代が繋がっており、外部とのコネクションが必要であったり、SEO対策に困っていたりすると、みんなが「私が手伝うよ!」と手をあげてくれるのです。パートナーだけがYCの武器なのではなく、このコミュニティこそが真の強みであると考えています。

ただ、設立からまだ10年も経っていませんので、コミュニティとしてはまだ若いですよね。コミュニティに関しては、我々はショートタームで物事を考えていません。100年単位でYCというコミュニティを考えています。例えば大学のような形です。今後、私達もそれに近い形態でコミュニティを築いていくつもりです。


1番重要なものはチーム



S:YCの選考を受けるチームに対して、あなた達は何を要求しますか?チーム、トラクション、アイディア?

K:我々はチームに重きをおいています。なぜなら、アーリーステージでは創業者がバラバラになってしまうことがよく起こるからです。そこで、我々は創業者のバランスやお互いに技術に対する理解があるか、うまくコミュニケーションを取れているかなどを見ています。一緒に働いた経験があったり、どれくらい前からの知り合いなのか、どれくらいお互いのことを理解しているのかなどです。その次に、私達はチームの意気込みを見ています。なぜこのスタートアップをはじめるのか、彼らの人生の10年間をかけて挑戦する問題なのか。それが重要なんです。スタートアップはすごく大変なチャレンジなので、意味のあることに取り組んでいるという感覚なしにチームは機能しません。

また、その次に強力なストーリーを作るためにトラクションが重要になってきます。このプロダクトには、数千のユーザーがいる、これくらい資本を調達している、などを示すことで説得力を持たせることができるのです。我々が共有している基本的な理念は、『誰かが欲しいものを作る』といったものです。それを確かにするために、潜在的なユーザーとたくさん話さなくてはなりません。初期のユーザーをハッピーにすることのみに集中するのです。その結果、説得力のある強力なストーリーが生まれます。良いチーム、情熱を燃やせる問題意識、強力なストーリー、この全てが揃っていれば、我々はそのスタートアップをバッジに迎え入れるでしょう。



S:一次選考(書類選考)を通過するのに1番大切なことは何ですか?
K:過去に参加したファウンダーがよく口にするには、一次選考のアプリケーション(質問)はとても良いエクササイズになったということです。ビジネスやチームに関して、以前考えもしなかったことを聞かれたり。ビジョンだけではなく、どのようにユーザーを獲得するのか、創業者の役割は明確か、などです。最低でも3人の異なるパートナーがこれらのアプリケーション(回答)に目を通します。それぞれ異なった部分を見て評価するので、統一的なアドバイスは難しいですね。正直に回答しましょう(笑)。


S:日本のスタートアップが最終選考(面接)を通過するにあたって重要なことは何ですか?
K:現在、各バッジで3000を越える応募が集まります。それらのアプリケーションのクオリティーはどれもものすごく高いんです。その中で最後の面接に呼ばれるのは、340社程度。面接までには、アプリケーションに目を通しているので、彼らが何をしようとしているのかは既に分かっているわけです。デモを見せて貰う他に、考え方やチーム内でコミュニケーションが取れているか、10〜20年続けるビジョンを持っているかなど、チームを重点的に見ています。そこでケンカしないということも大事になってきますね(笑)。小さな場所に長いこと一緒にいるわけですから、そういったチームの雰囲気も大事になってきます。また、面接当日はより詳細な質問を投げかけます。成長率やトラクション、解決しようとしている問題などです。これは日本のスタートアップに関わらず、どの候補者に対してもはてはまりますね。

S:どのようなリファレンス(推薦)が有効ですか?
K:卒業生からのリファレンスが有効です。彼らは素晴らしいチームだ!というレコメンドがYCの卒業生からあれば、通過の確率を上げることができるでしょう。従来の就職活動で必要になるようなリファレンスは我々は必要としていません。


日本から世界で$1Bカンパニーを創る挑戦を待っている



S:参加するスタートアップに対して、どれくらいのレベルの英語を要求しますか?
K:何がしたいのかを最低限表現できる英語力を持っていれば、言語の問題はそれほど大きくないと思います。チーム内に誰かひとり流暢に英語が話せる人間がいて、2分30秒のDemo Dayでのプレゼン、投資家とのミーティングをこなすことができれば問題ないでしょう。また、このバッチでは、17人のフランス出身の創業者がいます。彼らはアクセントに多少癖がありますが、十分にやっていけています。多少英語が苦手でも強力なチームと、流暢に英語が話せる人間が1人でもチームにいれば問題はありません。また、全体のバッジの数字は正確に把握していないのですが、現在のバッジに参加している創業者の出身地は27ヶ国にわたります。母国語が英語ではない創業者の参加が増えているのです。それと、このバッジには日本生まれの方が1人いますよ!育ったのはベイエリアかどこかだと思いますが。


S:先日、YCの代表がPaulからSamに交代しました。これによってどのように方針が変わったのですか?
K:基本的なことはまったく変わりません。スケールのために少し新たなパートナーを追加するなどはしました。今回のバッジは84〜85社の会社を受け入れたので人手が必要だったのです。また、投資の方針を200,000ドルで7%の株をもらう形式に変更しました。それまでは$20KにプラスしてYCのファンドから追加出資する方針でした。主要な変更はそのあたりです。また、Sam自身はエネルギーやバイオテックへの分野に感心があるようですね。


S:引き続きPGは参加チームに対してメンタリングを行うのですか?
K:はい。PGは引き続きオフィスアワーでメンタリングを行います。


S:スタートアップスクールをロンドンなど米国外にも広める動きがありますが、日本で開催する予定はありますか?
K:もちろん広げていくつもりです。今すぐ具体的なプランがあるわけではないのですが、将来はアジアのどこかで開催したいと考えています。日本も有力候補のひとつです。


S:YCに挑戦しようとしている日本のスタートアップにメッセージをお願いします。

K:我々は常に次の$1Bカンパニー(1000億円企業)を探しています。アメリカだけでなく、インドや日本でもその可能性は十分にあるでしょう。我々は、YCに参加するしない関係なく、世界中で優秀な人材がスタートアップをはじめる後押しをしていくつもりです。もちろん、日本から我々のプログラムを選択していただけるのであれば全力でサポートしていきます。情熱を持ったチームが日本から挑戦しに来てくださることを楽しみにしています!

Kat Manalac
Google、Wired誌、Reddit、Samsungを経てYCに参画。YCでの役割は、優秀な候補者と話をすることや、スタートアップスクールやハッカソン等のイベントのオーガナイズ、取材対応、ポートフォリオの会社にプレスを紹介する等。Twitterアカウントはこちら

『日本から世界で$1Bカンパニーを創る挑戦を待っている』Y CombinatorパートナーKat Manalacへのインタビュー





ベイエリアの投資家へのインタビューシリーズ。今回は、DropBoxやAirBnBを生み出した世界トップクラスのアクセラレーターであるY CombonatorのパートナーKat Manalac氏にインタビューを行った。どのようにYCが優れたアクセラレーターなのか、YCの選考では何を重視しているのかなど、日本からYCに挑戦するスタートアップにとって有益なアドバイスをいただくことができた。


YCというコミュニティを100年単位で考えている


質問者(以下S):米国以外のスタートアップがYCに参加することの利点は何ですか?
Kat Manalac(以下K):それに関してはいくつかあります。米国外から米国にビジネスを拡大したいスタートアップにとって、YCはとても効率的な手段のひとつです。実際に多くのチームが米国外から参加しています。例えば、前回のバッジに参加していた韓国出身のMemebox。彼らは韓国国内だけでも順調に成長していましたが、米国市場に参入する際YCに参加するという選択肢を取りました。そして、彼らは我々のサポートを活用して米国でも上手にビジネスを展開しています。過去我々は、Dropboxや、Raddit、AirBnBなど素晴らしいプロダクトを生み出すお手伝いをしてきました。このようなナレッジを提供できるアクセラレータは他にないと思います。

また、米国外のスタートアップにとっては米国の一流投資家にアクセスできることも魅力の一つです。米国の多くのVCが海外(米国外)の優れたスタートアップに投資をしたがっています。3ヶ月のプログラムを締めくくる最後のDemo Dayでは、450〜500人の投資家が集まり、効率的に投資家にアプローチできるのです。YCのコネクションなしに海外のチームがこのような繋がりを利用できる機会は滅多にありません。

最後に、ClearTaxというインドを拠点とするチームが前回のバッジに参加していたのですが、彼らはインド国内のマーケットを重視しており、今すぐビジネスを米国に展開する予定はありませんでした。このようなケースのスタートアップでも我々は積極的にサポートしていく方針です。成長や資金調達、人々が欲しがるプロダクトの作り方、ビジョンの設定やコーディングに関することなど、スタートアップを行う上で発生する問題は世界中で共通しているので、それらに関して我々は普遍的なアドバイスができるのです。


S:YCのプログラム期間中はどのように参加チームをサポートするのですか?
K:YCのプログラム中にはグループによるオフィスアワーを設けています。これは、2週間の頻度で5〜6の他の企業と合同でパートナーとのメンタリングを行うといったものです。この機会を通じて、他のチームが何を学んでいるかを共有することができる上に、自社以外のフィードバックを同じ機会に受けることができます。異なるスタートアップが、お互いのビジネスの過程をチェックし、解決策を考えるというプロセスはとても貴重なもです。また、合同のオフィスアワー以外にも、1対1のオフィスアワーを用意しています。計9回のオフィスアワーを予約することができ、個々のチームに最適なソリューションをパートナーと共に考える機会として活用できます。

加えて、毎週火曜日はバッジに参加しているスタートアップ全体でのディナーを行っています。このような交流の機会はスタートアップにとって、とても価値のあるものです。スタートアップは孤独なプロセスですからね。我々はオフィスを提供していないので、異なる場所からベイエリアに訪れている彼らは、各自のアパートやオフィスにこもって孤独に開発をしているわけです。そんな彼らに対して、全員が火曜日の夜にYCのオフィスに集まることは貴重な交流の機会になっています。そこでは、事業の進捗をシェアしたり、著名なスピーカーを招きオフレコで話しを伺うといった取り組みを行っています。外部に漏れない安全な場所で、Tweet禁止でやっているんですよ(笑)。彼らが話してくれるのは、全てがスタートアップの過程で起こりうるリアルなストーリーです。とても為になる上に実行可能なアドバイスを我々だけにこっそり話してくれます。例えば、Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグや、Indiegogoの創業者、Twitterの創業者などが過去に登壇してくれました。

また、月毎に様々なトピックを取り上げてワークショップを実施しています。PRやグロース、ハイアリング、もっとニッチなテーマを取り上げることもあります。B2Bとか、ハードウェアの会社に向けて特許に関するものなど。

あ、あともうひとつプログラムを通じた卒業生との繋がりも強力な助けになっているようです。これは前回のバッジの中で、最も成功している卒業生が直接相談に乗ってくれるといったもので、実際にStripeの創業者からメンタリングを受けたチームもいます。彼らは往々にして同じ道を歩んできているので、より具体的なアドバイスを与えることができのです。


S:YCと他のアクセラレーターの違いは何ですか?
K:YCは一番初めに立ち上げられたアクセラレーターです。2005年に誰も行っていなかったアクセラレーターというモデルに挑戦し、そろそろ10周年を迎えようとしています。Paul GrahamやJessica Livingstonがケンブリッジで開始した第一回のバッジから素晴らしいスタートアップを生み出しました。Redditや現在YCの代表を務めているSamが創業したLoopt、Justin TVやTwitchの創業したJustin Kanなど。スタートアップをはじめる人からしたらとても魅力的なコミュニティになっています。他のアクセラレーターはここまで協力な卒業生のネットワークを持っていないはずです。現在までで700社以上の会社と1400人を超える創業者を生み出しており、このコミュニティに入ってくる人達は皆優秀で協力的であることが特徴です。全ての世代が繋がっており、外部とのコネクションが必要であったり、SEO対策に困っていたりすると、みんなが「私が手伝うよ!」と手をあげてくれるのです。パートナーだけがYCの武器なのではなく、このコミュニティこそが真の強みであると考えています。

ただ、設立からまだ10年も経っていませんので、コミュニティとしてはまだ若いですよね。コミュニティに関しては、我々はショートタームで物事を考えていません。100年単位でYCというコミュニティを考えています。例えば大学のような形です。今後、私達もそれに近い形態でコミュニティを築いていくつもりです。


1番重要なものはチーム



S:YCの選考を受けるチームに対して、あなた達は何を要求しますか?チーム、トラクション、アイディア?

K:我々はチームに重きをおいています。なぜなら、アーリーステージでは創業者がバラバラになってしまうことがよく起こるからです。そこで、我々は創業者のバランスやお互いに技術に対する理解があるか、うまくコミュニケーションを取れているかなどを見ています。一緒に働いた経験があったり、どれくらい前からの知り合いなのか、どれくらいお互いのことを理解しているのかなどです。その次に、私達はチームの意気込みを見ています。なぜこのスタートアップをはじめるのか、彼らの人生の10年間をかけて挑戦する問題なのか。それが重要なんです。スタートアップはすごく大変なチャレンジなので、意味のあることに取り組んでいるという感覚なしにチームは機能しません。

また、その次に強力なストーリーを作るためにトラクションが重要になってきます。このプロダクトには、数千のユーザーがいる、これくらい資本を調達している、などを示すことで説得力を持たせることができるのです。我々が共有している基本的な理念は、『誰かが欲しいものを作る』といったものです。それを確かにするために、潜在的なユーザーとたくさん話さなくてはなりません。初期のユーザーをハッピーにすることのみに集中するのです。その結果、説得力のある強力なストーリーが生まれます。良いチーム、情熱を燃やせる問題意識、強力なストーリー、この全てが揃っていれば、我々はそのスタートアップをバッジに迎え入れるでしょう。



S:一次選考(書類選考)を通過するのに1番大切なことは何ですか?
K:過去に参加したファウンダーがよく口にするには、一次選考のアプリケーション(質問)はとても良いエクササイズになったということです。ビジネスやチームに関して、以前考えもしなかったことを聞かれたり。ビジョンだけではなく、どのようにユーザーを獲得するのか、創業者の役割は明確か、などです。最低でも3人の異なるパートナーがこれらのアプリケーション(回答)に目を通します。それぞれ異なった部分を見て評価するので、統一的なアドバイスは難しいですね。正直に回答しましょう(笑)。


S:日本のスタートアップが最終選考(面接)を通過するにあたって重要なことは何ですか?
K:現在、各バッジで3000を越える応募が集まります。それらのアプリケーションのクオリティーはどれもものすごく高いんです。その中で最後の面接に呼ばれるのは、340社程度。面接までには、アプリケーションに目を通しているので、彼らが何をしようとしているのかは既に分かっているわけです。デモを見せて貰う他に、考え方やチーム内でコミュニケーションが取れているか、10〜20年続けるビジョンを持っているかなど、チームを重点的に見ています。そこでケンカしないということも大事になってきますね(笑)。小さな場所に長いこと一緒にいるわけですから、そういったチームの雰囲気も大事になってきます。また、面接当日はより詳細な質問を投げかけます。成長率やトラクション、解決しようとしている問題などです。これは日本のスタートアップに関わらず、どの候補者に対してもはてはまりますね。

S:どのようなリファレンス(推薦)が有効ですか?
K:卒業生からのリファレンスが有効です。彼らは素晴らしいチームだ!というレコメンドがYCの卒業生からあれば、通過の確率を上げることができるでしょう。従来の就職活動で必要になるようなリファレンスは我々は必要としていません。


日本から世界で$1Bカンパニーを創る挑戦を待っている



S:参加するスタートアップに対して、どれくらいのレベルの英語を要求しますか?
K:何がしたいのかを最低限表現できる英語力を持っていれば、言語の問題はそれほど大きくないと思います。チーム内に誰かひとり流暢に英語が話せる人間がいて、2分30秒のDemo Dayでのプレゼン、投資家とのミーティングをこなすことができれば問題ないでしょう。また、このバッチでは、17人のフランス出身の創業者がいます。彼らはアクセントに多少癖がありますが、十分にやっていけています。多少英語が苦手でも強力なチームと、流暢に英語が話せる人間が1人でもチームにいれば問題はありません。また、全体のバッジの数字は正確に把握していないのですが、現在のバッジに参加している創業者の出身地は27ヶ国にわたります。母国語が英語ではない創業者の参加が増えているのです。それと、このバッジには日本生まれの方が1人いますよ!育ったのはベイエリアかどこかだと思いますが。


S:先日、YCの代表がPaulからSamに交代しました。これによってどのように方針が変わったのですか?
K:基本的なことはまったく変わりません。スケールのために少し新たなパートナーを追加するなどはしました。今回のバッジは84〜85社の会社を受け入れたので人手が必要だったのです。また、投資の方針を200,000ドルで7%の株をもらう形式に変更しました。それまでは$20KにプラスしてYCのファンドから追加出資する方針でした。主要な変更はそのあたりです。また、Sam自身はエネルギーやバイオテックへの分野に感心があるようですね。


S:引き続きPGは参加チームに対してメンタリングを行うのですか?
K:はい。PGは引き続きオフィスアワーでメンタリングを行います。


S:スタートアップスクールをロンドンなど米国外にも広める動きがありますが、日本で開催する予定はありますか?
K:もちろん広げていくつもりです。今すぐ具体的なプランがあるわけではないのですが、将来はアジアのどこかで開催したいと考えています。日本も有力候補のひとつです。


S:YCに挑戦しようとしている日本のスタートアップにメッセージをお願いします。

K:我々は常に次の$1Bカンパニー(1000億円企業)を探しています。アメリカだけでなく、インドや日本でもその可能性は十分にあるでしょう。我々は、YCに参加するしない関係なく、世界中で優秀な人材がスタートアップをはじめる後押しをしていくつもりです。もちろん、日本から我々のプログラムを選択していただけるのであれば全力でサポートしていきます。情熱を持ったチームが日本から挑戦しに来てくださることを楽しみにしています!

Kat Manalac
Google、Wired誌、Reddit、Samsungを経てYCに参画。YCでの役割は、優秀な候補者と話をすることや、スタートアップスクールやハッカソン等のイベントのオーガナイズ、取材対応、ポートフォリオの会社にプレスを紹介する等。Twitterアカウントはこちら