マーケティングの専門家プラットフォームDOZとは?フランスからシリコンバレーへの挑戦は増加傾向、創業者Anji Ismalへのインタビュー




ベイエリアの起業家へのインタビューシリーズ。今回は、オンラインマーケターのマーケットプレイスを世界的に展開しているフランス出身のスタートアップ、DOZの創業者でありCEOのAnji Ismal氏にインタビューを行った。DOZは、直近の500Startupsのプログラムに参加していたチーム。今回のインタビューでは、米国外からシリコンバレーでチャレンジするスタートアップにとって有意義なアドバイスを得ることができた。

マーケティング用にコンサルを雇う必要はない



質問者(以下Y):まず、あなたの経歴について教えてください。
Anji(以下A):自分はまず最初に、オンラインマーケティング向けのソフトウェア会社につとめた。そこで2年を過ごしたあと、2年間かけてビジネススクールで博士号を獲得した。ちなみに、今のco-founderと出会ったのはそのビジネススクールだったよ。DOZの原型となるプロダクトを最初に生み出したのは今から数えて丁度4年前くらいかな。


Y :具体的にはどうやってco-founderと出会ったのですか?
A:エンジニアリングを専門としていたco-founderとは2008年に出会ったんだけど、自分は当時博士号を取る為にビジネスサイドの授業とエンジニアリング関係の2つの分野を専攻として学んでいたんだ。その時のエンジニアリングの授業で出会ったよ。

最初は二人でとにかくたくさんのアイディアについて話し合ったよ。クラウドソーシングだったり、マーケットプレイスを中心にね。そしたら今のDOZのアイディアであるマーケターのマーケットプレイスというアイディアを思いついたんだ。


Y:具体的にDOZのアイディアはどうやって思いついたのですか?
A:今のマーケティングはとてもたくさんの変化が起こっているんだ。以前はマーケティング用にコンサルティングを雇っている人たちもいたけど、そんなのは今考えると馬鹿げているよね。クラウドソーシングだったりアウトソーシングだったりたくさんの手段が生まれてきている。でも現在のオンラインマーケィングに置ける代理店の存在はスケールしなくて、バラバラにマーケターを管理してたり、はっきりとしたオンラインマーケティングの為のプラットフォームがなかったんだよね。だから、オンラインマーケティングのプラットフォームを確立しようとしたんだ。

一方で、自分たちはフリーランスとフリーランスのマーケターにも同時にフォーカスしたんだ。そして彼等に注目していく中で、オンラインマーケティングには「1 to 1」のクライアントとマーケターの関係が必須だとも考えていたよ。

クライアントはトラフィックが欲しい。でもトラフィックを獲得する為に必要なマーケティングの施策に適した人物を探したり、見つけるのは難しい状態だったんだ。だから、自分たちはその問題を解決する為に、マーケターのキューレーションも1つの施策として考えたんだ。クライアントのデータを集め、その情報を元に適切なマーケターを紹介するんだ。そしてその適切なマーケターで少数の小さなチームを作る。すると驚く程結果に違いが生まれるんだ。そして、これこそがまさに既存のマーケティングエージェンシーが解決出来ていない問題の大きな原因だと自分たちは分かった。だからこそ、自分たちは絶対的な強みを持っていると思っていると思い、DOZを始めたんだ。

Y:どんなマーケターを有しているのですか?
A:そうだね、マーケティングは分野が広いから、まずはオーガニックマーケティングにフォーカスして人材を集めている。emailマーケティングやFacebook、Googleなどの広告などは扱っていないよ。

基本的にマーケティングの手法として3つにフォーカスしていて、一つはSEOで検索に最適化させる事。2つめにSNSマーケティングとしてユーザーエンゲージメントを高める様にすること。ユーザー間のコミュニティマネージャーの担当する仕事のようにね。そして3つ目にコンテンツマーケティングにもフォーカスしているよ。

これらは良いコンテンツを、SNSを利用したマーケティングで更に上手く展開させて、SEOを利用して検索からもトラフィックを獲得するという非常に関係性の良いマーケティングの3つのパートなんだ。

全体的に技術者はSEOを主に担当しているね。なぜならリンクを様々なページに展開したり、htmなどのコーディングが求められるからね。コンテンツマーケティングとしてはコピーライターやブロガーなどを対象としているよ。画像や動画をつかって良いコンテンツを作れる人だね。そしてSNSマーケティングはまさにコミュニティマネージャーだ。


Y:どうやってたくさんのマーケターを獲得したのですか?
A:最初に行った施策としては、マーケター向けに各自の実力を測る質問形式のクイズ大会を開催したんだ。そしてそこで出た成績のランキングから上位者の人たちをピックアップしてコンタクトを取ったね。そして次に、Web上で拡散されている記事のライターだね。彼等は質の良いコンテンツを生み出し、拡散されているのにメリットがない。でもDOZを通じてそれを行えば、それらは彼等にとって利益になる。その点を上手く活かしたよ。更に、成功したマーケティングキャンペーンの担当者にアポを取ったり、マーケティングエージェンシーの人たちにもアプローチをしたよ。

Y:あなたのサービスのペルソナを教えてください。
A:今は3つのBtoC向けのECショップなどのソフトウェア系企業、トラベル業界、そしてファッション業界にフォーカスしているね。これらは既存のSNSマーケティングやコンテンツマーケティングに特に最適だからね。

そしてトラフィックを獲得する時に、他に気をつけていることとしてマーケターが興味のわきそうなプロジェクトを集める事だ。なぜなら、マーケターを集める事も自分達の顧客を集めることになるからね。プロジェクトを集める時には、それぞれにマーケターがどんな分野にどうして興味があるのかなどにもフォーカスしているよ。彼等が働きたい事を分析してプロジェクトを集めれば、マーケターのエンゲージメントも高まるからね。また、自分たちは国際化にもフォーカスしてプロジェクトやマーケターを集めている。それぞれの国や地域にはそれぞれの文化や言語があって、それぞれの国が母国の人がマーケティングを担当するのとしないのでは全く違う結果が生まれてしまうと自分たちは考えているよ。


Y:実際の所どんな企業があなたのサービスを利用しているのですか?具体例を教えてください。
A:名前を出せないけど、ベイエリアのソフトウェア企業や、ドイツ、フランス、イギリス…。たくさんの国際的にビジネスを展開したい人が主に使っているね。かなりのDL数やトラフィックに違いが出ているよ。特にスペインとフランスとイタリアでは、ヨーロッパなど盛んな地域の中でもとても高いトラフィックが見てとれるよ。

Y:現状ではどれほどのマーケターとカスタマーを有しているのですか?
A:今まで何かしらのプロジェクトに関わってきた合計のマーケターの数は測定してないけど、キャンペーンに関しては今月アクティブな物だけでも35のキャンペーンがある。そしてそれらに関わるアクティブなマーケターとしては1000人位が毎月存在していると思うよ。

Y:どうやってそんなに多くのマーケターを獲得したのですか?
A:自分たちは今まで、自分のユーザー獲得の為に自分たちのマーケティングツールを使ってこなかった。今月使い始めたけど、全く使ってこなかったんだ。だから、自分たちは広告とかは使わないで、自分たちのサービスのようにオーガニックマーケティングを注視して、自分たちのブログをベースに良い文章の記事をたくさん書いたり、インフォグラフィックなどのコンテンツマーケティングをどんどん展開していったね。

Y:競合としてはどんなサービスがありますか?
A:完全に直接の競合はいないとおもうね。なぜなら自分たちのサービスは3つの意味合いがあって、1つはマーケティングソフトウェアの側面がある。なぜなら、遠隔で色々な人とマーケティングプラットフォームとして一緒に働く事ができるからね。この側面だと、適切な人材をキューレーションし、アウトソースしながら遠隔で優秀なマーケターと一緒に仕事をすることができる点からoDeskなどが競合だろう。

また、マーケティングキャンペーン企業も部分的には競合だ。なぜなら自分たちもそれと同様のサービスを展開できる人材を集めて、提供しているからね。ただ、自分たちはもっと包括的に様々な種類のマーケティング手法を提供しているし、これも完全な競合ではないと思う。そして、キャンペーンマーケティングのみの企業は、短期的な効果しか得られないけど、自分たちの様に3つのマーケティングを同時に展開することで、トラフィックに継続性が生まれ、しばらくは良い状態が維持できる。その点、コスト的にも効果としても非常に様々なメリットが得られるんだ。


Y:フリーランス以外(マーケティングエージェンシーに属しながら)で、DOZでもマーケティングをしている人はどんな人が多いのですか?
A::うーん色々だね。マーケターにもそれぞれに得意だったり好きな分野が存在する。つまりマーケティングエージェンシーの人たちは各人が嫌いなタイプのプロジェクトにも属さないといけなかったりするんだ。これはとても問題だと言えると思うよ。自分たちDOZは様々なプロジェクトを自分たちで有している事から、マーケターがそれぞれ好きなプロジェクトを選んで実行する事を可能としていると思う。これは彼等にとって魅力的なはずだ。もちろんマーケティングエージェンシーに属しているので、参加のタイミングは限られてしまう。

しかし、DOZのマーケティングはプロジェクト単位で実行されるので、彼等も自由にDOZのプロジェクトに参加できているよ。特に自分たちはLinkedinなどのソーシャルな情報からどんなプロジェクトが好きなのかを予想してサジェスチョンしているから、それも活きている
と思うよ。因に、フリーランスの人たち向けにも同様の、趣向・経験・能力にあわせたプロジェクトをキュレーションして紹介しているね。

これはマーケティングには適切な人材が担当するのとしないのではとても大きな違いがでるという自分の前職での経験がいきているね。さっきも言ったけど、単なるアウトソーシングではなくて、それぞれの国や地域の文化、またプロジェクトの特性などに適した人材を利用することで極めてマーケティングの質は変わってくるんだ。

Y:どこの国に最もたくさんのユーザーがいるのですか?アメリカですか?
A:今はヨーロッパだよ。なぜなら自分たちのプロダクトは、ヨーロッパでローンチしたからね。半分以上はヨーロッパ、その中でもフランスがトップだよ。でもそれ以外はほとんどアメリカと南アメリカになっているね。中東も少しはいるけど。アジアに関しては全くいないのが現状だね。自分たちは今後日本を筆頭にどんどんアジアを開拓していくつもりだ。特に日本は市場と言う観点から見てみても色々な国の人が進出したがっているし、マーケターがそれぞれにどんどん自由に働きたがっていると聞いている。それに対して中国はソーシャルメディアや検索エンジンが他の国とは違うからあまりフォーカスしていないね。

自分たちのプロダクトはとにかく色々な地域に人材や顧客がいる事が大事なんだ。なぜなら、国際展開する時にもいかせるのが最も大きな利点の一つだからね。大半は外国人として異国への展開に苦労するんだけど、自分たちはそれを無くす事ができる。ターゲットとする外国に人材をクラウドソースすることでね。だからこそアジアや他の地域にもどんどん展開していきたいんだ。



Y:DOZのサービスはとても多くの日本の企業にとって魅力的だと思うのですが、気になるのはお値段ですよね。値段は大体いくらぐらいなのですか?
A:もちろんプロジェクトによるけど、海外にオフィスをもったり、人を雇う、またマーケティングにコストをかけるよりも遥かに安くすむと思うよ。なぜなら、自分たちのコストはマーケティングの効果によって決まるからだ。顧客はURLを打ち込むみ、プロジェクトのタイプを選択する。それだけで自動的にマーケティングが開始される。そして、DOZを通じてマーケティングが行われた際に、10,000から20,000のページビジターが毎月訪れたとしたら、1PVあたりのコストは20円くらいになる。これは合計して計算しても、結果的にみて他のマーケティング手法よりもかなり安くすむと言えるだろう。広告なんかと比べると10〜20倍安くなると言えるよ。更に、例えば6ヶ月かけて毎月60,000のユニークユーザーが訪れる状態を生み出すと、彼等はこのプロジェクト以降の7ヶ月目にもコストをかけずに60,000のユニークユーザーを維持する事ができるだろう。これを考慮すると結果的にはかなり安い値段ですむ事になると思うよ。コンサルティングなどに頼んだら結果は見えてないのに高い値段を取られるし、効果は恐らく断続的だからね。それに比べて、自分たちのプロダクトはかなりいいはずだ。

Y:いつ頃日本語バージョンをローンチする予定ですか?
A:すぐではないね。現地のマーケターの代理企業とパートナーシップをとって、日本の文化や言語を理解する必要がある。でも自分たちにはアドバイザーや投資家として日本を良く知っている人がジョインしてくれているから、上手く展開していけるはずだと思っているよ。



フランスからシリコンバレーへ挑戦するスタートアップは増加傾向


Y:日本には500のようなアクセラレーターに参加したいスタートアップがたくさんいるんだけど、彼等に対して何か良いアドバイスをいただけませんか?
A:自分たちは本当に500で良い経験をしたよ。自分たちは他の参加したスタートアップよりもかなり遅いステージの企業として参加した。プロダクトもローンチしていたし、かなりのトラフィックもあった。でもそんな自分たちでさえもが、かなり良い体験をできたね。特に他国からシリコンバレーに来たばかりのスタートアップは、ここに友達や知り合いがいなかったりして中々ネットワーキングに苦戦するんだけど、500に参加した事でその問題は容易に、且つ迅速に解決されたよ。起業家だけでなく多くのVCにもつながる事ができた。

また、シリコンバレー以外の地域では、もしあなたの情熱で大きな問題を解決すると巨大な野望を抱いた時、大半の地域や国だと馬鹿げてると思われる。でもここシリコンバレーではその情熱がバカにされる事はないし、全ての起業家にチャレンジの機会が与えられる。そのチャンスを生かせば、その情熱は殺される事はないんだ。本当に全ての起業家にチャンスがあるんだ。


Y:あなたはここに来る時にとても苦労したと思います。なぜならここはエンジニアも高いし言語や文化の壁、さっきの様なネットワーキングやビザの問題もあるからです。それについてはどう考えますか?
A:そうだね、実際とても難しかった。4年前に起業した時からすぐにでもシリコンバレーに来たかった。もちろんフランスやロンドンなどからビジネスを開始してもグローバルに戦えるけど、シリコンバレーで戦う方が遥かに早く、しかもリアルにグローバルで戦えるからね。もしここでスタートアップをすれば、ここ以外では小さく終わる事も、シリコンバレーだと大きな可能性を秘めていることになる。だから自分たちは昔2週間だけ、シリコンバレーのVC達にあう為だけに来たことがあるよ。とにかくたくさんのエンジェル投資家にあったんだ。その時、自分たちはいくつか気に入ってくれるエンジェル投資家やVCが見つかって、少し投資をうけ、ここのネットワークの恩恵を受けることができたんだ。でもビザの問題でしばらくはフランスにかえらなきゃいけなくて、結局去年に資金調達するよりも全然ビザを獲得できなかったね。だから行ったり来たりしていたよホントに。そしてビザを獲得したタイミングで、500に参加する事ができたね。

たくさん行き来する時に問題になるのは、距離や時差、文化の違う地域にスタートアップがバラバラにいなきゃいけないことだった。みんなのモチベーションを保つのはかなり難しかったね。でもここに来るにはそのリスクを冒す価値があると思う。実際フランスの投資家や政府は自分達のスタートアップを認めてくれたので、様々な恩恵を受ける事が出来たし、何よりフランスは質のいいエンジニアが安く雇えるので、とても自分たちは彼等の存在に助けられたよ。

こんな風に、もしシリコンバレーでチャレンジしたければ、それぞれの自国のメリットを活かす必要がある。フランスの場合安く良いエンジニアを雇えるようなメリットだ。それらを活かしながら、シリコンバレーのそのコミュニティに属せる様々なメリットを活かすんだ。もちろんそれは大変なことだが、同時にとても大きな可能性を秘めていることダとも言えるだろう。


Y:どれくらいフランス出身のスタートアップが500に参加していたのですか?
A:自分たちのバッチにはDOZを含めて2つのフランス出身のスタートアップが参加していたんだけど、500のプログラムに参加したフランス発のスタートアップは自分たちがはじめてだったね。投資と言う形で500が関わっているスタートアップは2、3あったけど、プログラムに参加できたフランスのスタートアップは自分たちが初めてだよ。また、YCにもフランス出身のスタートアップが3つ前回のバッチにあって、5つが今回のバッチに参加しているって聞いたよ。


Y:フランスのスタートアップエコシステムの強みはなんですか?
A:エンジニアリングの教育が非常に安く、且つ充実している事だね。とても良い教育を大学で受けることができる。ほとんど全ての技術的なシステムを学習することが可能なんだ。そして今フランス政府は資金提供や税制優遇などの施策をスタートアップに対して行っていて、スタートアップをするにはとても良いインセンティブがあると思うよ。更に、フランスのスタートアップが徐々にアメリカでIPOをし始めているので、今後はどんどんお金もフランスのVCにかえってくるし、成長していくはずだ。アメリカ市場への進出も今より活発になるだろうね。


Y:フランスとシリコンバレーにチームが別れた時はどうやってチームをモチベートしていたのですか?
A:「自分たちのスタートアップがシリコンバレーに進出している、資金調達をシリコンバレーで行ってどんどん人を雇ってる。500にも参加できている!」という事実がチームもモチベートしていたよ。

もちろん日々の仕事にかかる負荷はいつも以上に増えてしまうけど、それを乗り越える為にも、スタートアップのメッカであるシリコンバレーで活躍しているという事実そのものが最も影響力のあるモチベーションだったと思うよ。

Y:最後に、日本の潜在的なユーザーに対してメッセージをください。
A:日本は言語や文化が違うから参入は少し遅くなるかもしれない。でも多くのECサイトが日本にはあるし、更に多くの日本の企業が海外に進出するのに膨大な時間とお金を浪費していると聞いた。自分達のプロダクトを是非6ヶ月間試して欲しい。全く違った結果が見えてくるはずだよ。

【DOZのホームページ】http://www.doz.com/

マーケティングの専門家プラットフォームDOZとは?フランスからシリコンバレーへの挑戦は増加傾向、創業者Anji Ismalへのインタビュー




ベイエリアの起業家へのインタビューシリーズ。今回は、オンラインマーケターのマーケットプレイスを世界的に展開しているフランス出身のスタートアップ、DOZの創業者でありCEOのAnji Ismal氏にインタビューを行った。DOZは、直近の500Startupsのプログラムに参加していたチーム。今回のインタビューでは、米国外からシリコンバレーでチャレンジするスタートアップにとって有意義なアドバイスを得ることができた。

マーケティング用にコンサルを雇う必要はない



質問者(以下Y):まず、あなたの経歴について教えてください。
Anji(以下A):自分はまず最初に、オンラインマーケティング向けのソフトウェア会社につとめた。そこで2年を過ごしたあと、2年間かけてビジネススクールで博士号を獲得した。ちなみに、今のco-founderと出会ったのはそのビジネススクールだったよ。DOZの原型となるプロダクトを最初に生み出したのは今から数えて丁度4年前くらいかな。


Y :具体的にはどうやってco-founderと出会ったのですか?
A:エンジニアリングを専門としていたco-founderとは2008年に出会ったんだけど、自分は当時博士号を取る為にビジネスサイドの授業とエンジニアリング関係の2つの分野を専攻として学んでいたんだ。その時のエンジニアリングの授業で出会ったよ。

最初は二人でとにかくたくさんのアイディアについて話し合ったよ。クラウドソーシングだったり、マーケットプレイスを中心にね。そしたら今のDOZのアイディアであるマーケターのマーケットプレイスというアイディアを思いついたんだ。


Y:具体的にDOZのアイディアはどうやって思いついたのですか?
A:今のマーケティングはとてもたくさんの変化が起こっているんだ。以前はマーケティング用にコンサルティングを雇っている人たちもいたけど、そんなのは今考えると馬鹿げているよね。クラウドソーシングだったりアウトソーシングだったりたくさんの手段が生まれてきている。でも現在のオンラインマーケィングに置ける代理店の存在はスケールしなくて、バラバラにマーケターを管理してたり、はっきりとしたオンラインマーケティングの為のプラットフォームがなかったんだよね。だから、オンラインマーケティングのプラットフォームを確立しようとしたんだ。

一方で、自分たちはフリーランスとフリーランスのマーケターにも同時にフォーカスしたんだ。そして彼等に注目していく中で、オンラインマーケティングには「1 to 1」のクライアントとマーケターの関係が必須だとも考えていたよ。

クライアントはトラフィックが欲しい。でもトラフィックを獲得する為に必要なマーケティングの施策に適した人物を探したり、見つけるのは難しい状態だったんだ。だから、自分たちはその問題を解決する為に、マーケターのキューレーションも1つの施策として考えたんだ。クライアントのデータを集め、その情報を元に適切なマーケターを紹介するんだ。そしてその適切なマーケターで少数の小さなチームを作る。すると驚く程結果に違いが生まれるんだ。そして、これこそがまさに既存のマーケティングエージェンシーが解決出来ていない問題の大きな原因だと自分たちは分かった。だからこそ、自分たちは絶対的な強みを持っていると思っていると思い、DOZを始めたんだ。

Y:どんなマーケターを有しているのですか?
A:そうだね、マーケティングは分野が広いから、まずはオーガニックマーケティングにフォーカスして人材を集めている。emailマーケティングやFacebook、Googleなどの広告などは扱っていないよ。

基本的にマーケティングの手法として3つにフォーカスしていて、一つはSEOで検索に最適化させる事。2つめにSNSマーケティングとしてユーザーエンゲージメントを高める様にすること。ユーザー間のコミュニティマネージャーの担当する仕事のようにね。そして3つ目にコンテンツマーケティングにもフォーカスしているよ。

これらは良いコンテンツを、SNSを利用したマーケティングで更に上手く展開させて、SEOを利用して検索からもトラフィックを獲得するという非常に関係性の良いマーケティングの3つのパートなんだ。

全体的に技術者はSEOを主に担当しているね。なぜならリンクを様々なページに展開したり、htmなどのコーディングが求められるからね。コンテンツマーケティングとしてはコピーライターやブロガーなどを対象としているよ。画像や動画をつかって良いコンテンツを作れる人だね。そしてSNSマーケティングはまさにコミュニティマネージャーだ。


Y:どうやってたくさんのマーケターを獲得したのですか?
A:最初に行った施策としては、マーケター向けに各自の実力を測る質問形式のクイズ大会を開催したんだ。そしてそこで出た成績のランキングから上位者の人たちをピックアップしてコンタクトを取ったね。そして次に、Web上で拡散されている記事のライターだね。彼等は質の良いコンテンツを生み出し、拡散されているのにメリットがない。でもDOZを通じてそれを行えば、それらは彼等にとって利益になる。その点を上手く活かしたよ。更に、成功したマーケティングキャンペーンの担当者にアポを取ったり、マーケティングエージェンシーの人たちにもアプローチをしたよ。

Y:あなたのサービスのペルソナを教えてください。
A:今は3つのBtoC向けのECショップなどのソフトウェア系企業、トラベル業界、そしてファッション業界にフォーカスしているね。これらは既存のSNSマーケティングやコンテンツマーケティングに特に最適だからね。

そしてトラフィックを獲得する時に、他に気をつけていることとしてマーケターが興味のわきそうなプロジェクトを集める事だ。なぜなら、マーケターを集める事も自分達の顧客を集めることになるからね。プロジェクトを集める時には、それぞれにマーケターがどんな分野にどうして興味があるのかなどにもフォーカスしているよ。彼等が働きたい事を分析してプロジェクトを集めれば、マーケターのエンゲージメントも高まるからね。また、自分たちは国際化にもフォーカスしてプロジェクトやマーケターを集めている。それぞれの国や地域にはそれぞれの文化や言語があって、それぞれの国が母国の人がマーケティングを担当するのとしないのでは全く違う結果が生まれてしまうと自分たちは考えているよ。


Y:実際の所どんな企業があなたのサービスを利用しているのですか?具体例を教えてください。
A:名前を出せないけど、ベイエリアのソフトウェア企業や、ドイツ、フランス、イギリス…。たくさんの国際的にビジネスを展開したい人が主に使っているね。かなりのDL数やトラフィックに違いが出ているよ。特にスペインとフランスとイタリアでは、ヨーロッパなど盛んな地域の中でもとても高いトラフィックが見てとれるよ。

Y:現状ではどれほどのマーケターとカスタマーを有しているのですか?
A:今まで何かしらのプロジェクトに関わってきた合計のマーケターの数は測定してないけど、キャンペーンに関しては今月アクティブな物だけでも35のキャンペーンがある。そしてそれらに関わるアクティブなマーケターとしては1000人位が毎月存在していると思うよ。

Y:どうやってそんなに多くのマーケターを獲得したのですか?
A:自分たちは今まで、自分のユーザー獲得の為に自分たちのマーケティングツールを使ってこなかった。今月使い始めたけど、全く使ってこなかったんだ。だから、自分たちは広告とかは使わないで、自分たちのサービスのようにオーガニックマーケティングを注視して、自分たちのブログをベースに良い文章の記事をたくさん書いたり、インフォグラフィックなどのコンテンツマーケティングをどんどん展開していったね。

Y:競合としてはどんなサービスがありますか?
A:完全に直接の競合はいないとおもうね。なぜなら自分たちのサービスは3つの意味合いがあって、1つはマーケティングソフトウェアの側面がある。なぜなら、遠隔で色々な人とマーケティングプラットフォームとして一緒に働く事ができるからね。この側面だと、適切な人材をキューレーションし、アウトソースしながら遠隔で優秀なマーケターと一緒に仕事をすることができる点からoDeskなどが競合だろう。

また、マーケティングキャンペーン企業も部分的には競合だ。なぜなら自分たちもそれと同様のサービスを展開できる人材を集めて、提供しているからね。ただ、自分たちはもっと包括的に様々な種類のマーケティング手法を提供しているし、これも完全な競合ではないと思う。そして、キャンペーンマーケティングのみの企業は、短期的な効果しか得られないけど、自分たちの様に3つのマーケティングを同時に展開することで、トラフィックに継続性が生まれ、しばらくは良い状態が維持できる。その点、コスト的にも効果としても非常に様々なメリットが得られるんだ。


Y:フリーランス以外(マーケティングエージェンシーに属しながら)で、DOZでもマーケティングをしている人はどんな人が多いのですか?
A::うーん色々だね。マーケターにもそれぞれに得意だったり好きな分野が存在する。つまりマーケティングエージェンシーの人たちは各人が嫌いなタイプのプロジェクトにも属さないといけなかったりするんだ。これはとても問題だと言えると思うよ。自分たちDOZは様々なプロジェクトを自分たちで有している事から、マーケターがそれぞれ好きなプロジェクトを選んで実行する事を可能としていると思う。これは彼等にとって魅力的なはずだ。もちろんマーケティングエージェンシーに属しているので、参加のタイミングは限られてしまう。

しかし、DOZのマーケティングはプロジェクト単位で実行されるので、彼等も自由にDOZのプロジェクトに参加できているよ。特に自分たちはLinkedinなどのソーシャルな情報からどんなプロジェクトが好きなのかを予想してサジェスチョンしているから、それも活きている
と思うよ。因に、フリーランスの人たち向けにも同様の、趣向・経験・能力にあわせたプロジェクトをキュレーションして紹介しているね。

これはマーケティングには適切な人材が担当するのとしないのではとても大きな違いがでるという自分の前職での経験がいきているね。さっきも言ったけど、単なるアウトソーシングではなくて、それぞれの国や地域の文化、またプロジェクトの特性などに適した人材を利用することで極めてマーケティングの質は変わってくるんだ。

Y:どこの国に最もたくさんのユーザーがいるのですか?アメリカですか?
A:今はヨーロッパだよ。なぜなら自分たちのプロダクトは、ヨーロッパでローンチしたからね。半分以上はヨーロッパ、その中でもフランスがトップだよ。でもそれ以外はほとんどアメリカと南アメリカになっているね。中東も少しはいるけど。アジアに関しては全くいないのが現状だね。自分たちは今後日本を筆頭にどんどんアジアを開拓していくつもりだ。特に日本は市場と言う観点から見てみても色々な国の人が進出したがっているし、マーケターがそれぞれにどんどん自由に働きたがっていると聞いている。それに対して中国はソーシャルメディアや検索エンジンが他の国とは違うからあまりフォーカスしていないね。

自分たちのプロダクトはとにかく色々な地域に人材や顧客がいる事が大事なんだ。なぜなら、国際展開する時にもいかせるのが最も大きな利点の一つだからね。大半は外国人として異国への展開に苦労するんだけど、自分たちはそれを無くす事ができる。ターゲットとする外国に人材をクラウドソースすることでね。だからこそアジアや他の地域にもどんどん展開していきたいんだ。



Y:DOZのサービスはとても多くの日本の企業にとって魅力的だと思うのですが、気になるのはお値段ですよね。値段は大体いくらぐらいなのですか?
A:もちろんプロジェクトによるけど、海外にオフィスをもったり、人を雇う、またマーケティングにコストをかけるよりも遥かに安くすむと思うよ。なぜなら、自分たちのコストはマーケティングの効果によって決まるからだ。顧客はURLを打ち込むみ、プロジェクトのタイプを選択する。それだけで自動的にマーケティングが開始される。そして、DOZを通じてマーケティングが行われた際に、10,000から20,000のページビジターが毎月訪れたとしたら、1PVあたりのコストは20円くらいになる。これは合計して計算しても、結果的にみて他のマーケティング手法よりもかなり安くすむと言えるだろう。広告なんかと比べると10〜20倍安くなると言えるよ。更に、例えば6ヶ月かけて毎月60,000のユニークユーザーが訪れる状態を生み出すと、彼等はこのプロジェクト以降の7ヶ月目にもコストをかけずに60,000のユニークユーザーを維持する事ができるだろう。これを考慮すると結果的にはかなり安い値段ですむ事になると思うよ。コンサルティングなどに頼んだら結果は見えてないのに高い値段を取られるし、効果は恐らく断続的だからね。それに比べて、自分たちのプロダクトはかなりいいはずだ。

Y:いつ頃日本語バージョンをローンチする予定ですか?
A:すぐではないね。現地のマーケターの代理企業とパートナーシップをとって、日本の文化や言語を理解する必要がある。でも自分たちにはアドバイザーや投資家として日本を良く知っている人がジョインしてくれているから、上手く展開していけるはずだと思っているよ。



フランスからシリコンバレーへ挑戦するスタートアップは増加傾向


Y:日本には500のようなアクセラレーターに参加したいスタートアップがたくさんいるんだけど、彼等に対して何か良いアドバイスをいただけませんか?
A:自分たちは本当に500で良い経験をしたよ。自分たちは他の参加したスタートアップよりもかなり遅いステージの企業として参加した。プロダクトもローンチしていたし、かなりのトラフィックもあった。でもそんな自分たちでさえもが、かなり良い体験をできたね。特に他国からシリコンバレーに来たばかりのスタートアップは、ここに友達や知り合いがいなかったりして中々ネットワーキングに苦戦するんだけど、500に参加した事でその問題は容易に、且つ迅速に解決されたよ。起業家だけでなく多くのVCにもつながる事ができた。

また、シリコンバレー以外の地域では、もしあなたの情熱で大きな問題を解決すると巨大な野望を抱いた時、大半の地域や国だと馬鹿げてると思われる。でもここシリコンバレーではその情熱がバカにされる事はないし、全ての起業家にチャレンジの機会が与えられる。そのチャンスを生かせば、その情熱は殺される事はないんだ。本当に全ての起業家にチャンスがあるんだ。


Y:あなたはここに来る時にとても苦労したと思います。なぜならここはエンジニアも高いし言語や文化の壁、さっきの様なネットワーキングやビザの問題もあるからです。それについてはどう考えますか?
A:そうだね、実際とても難しかった。4年前に起業した時からすぐにでもシリコンバレーに来たかった。もちろんフランスやロンドンなどからビジネスを開始してもグローバルに戦えるけど、シリコンバレーで戦う方が遥かに早く、しかもリアルにグローバルで戦えるからね。もしここでスタートアップをすれば、ここ以外では小さく終わる事も、シリコンバレーだと大きな可能性を秘めていることになる。だから自分たちは昔2週間だけ、シリコンバレーのVC達にあう為だけに来たことがあるよ。とにかくたくさんのエンジェル投資家にあったんだ。その時、自分たちはいくつか気に入ってくれるエンジェル投資家やVCが見つかって、少し投資をうけ、ここのネットワークの恩恵を受けることができたんだ。でもビザの問題でしばらくはフランスにかえらなきゃいけなくて、結局去年に資金調達するよりも全然ビザを獲得できなかったね。だから行ったり来たりしていたよホントに。そしてビザを獲得したタイミングで、500に参加する事ができたね。

たくさん行き来する時に問題になるのは、距離や時差、文化の違う地域にスタートアップがバラバラにいなきゃいけないことだった。みんなのモチベーションを保つのはかなり難しかったね。でもここに来るにはそのリスクを冒す価値があると思う。実際フランスの投資家や政府は自分達のスタートアップを認めてくれたので、様々な恩恵を受ける事が出来たし、何よりフランスは質のいいエンジニアが安く雇えるので、とても自分たちは彼等の存在に助けられたよ。

こんな風に、もしシリコンバレーでチャレンジしたければ、それぞれの自国のメリットを活かす必要がある。フランスの場合安く良いエンジニアを雇えるようなメリットだ。それらを活かしながら、シリコンバレーのそのコミュニティに属せる様々なメリットを活かすんだ。もちろんそれは大変なことだが、同時にとても大きな可能性を秘めていることダとも言えるだろう。


Y:どれくらいフランス出身のスタートアップが500に参加していたのですか?
A:自分たちのバッチにはDOZを含めて2つのフランス出身のスタートアップが参加していたんだけど、500のプログラムに参加したフランス発のスタートアップは自分たちがはじめてだったね。投資と言う形で500が関わっているスタートアップは2、3あったけど、プログラムに参加できたフランスのスタートアップは自分たちが初めてだよ。また、YCにもフランス出身のスタートアップが3つ前回のバッチにあって、5つが今回のバッチに参加しているって聞いたよ。


Y:フランスのスタートアップエコシステムの強みはなんですか?
A:エンジニアリングの教育が非常に安く、且つ充実している事だね。とても良い教育を大学で受けることができる。ほとんど全ての技術的なシステムを学習することが可能なんだ。そして今フランス政府は資金提供や税制優遇などの施策をスタートアップに対して行っていて、スタートアップをするにはとても良いインセンティブがあると思うよ。更に、フランスのスタートアップが徐々にアメリカでIPOをし始めているので、今後はどんどんお金もフランスのVCにかえってくるし、成長していくはずだ。アメリカ市場への進出も今より活発になるだろうね。


Y:フランスとシリコンバレーにチームが別れた時はどうやってチームをモチベートしていたのですか?
A:「自分たちのスタートアップがシリコンバレーに進出している、資金調達をシリコンバレーで行ってどんどん人を雇ってる。500にも参加できている!」という事実がチームもモチベートしていたよ。

もちろん日々の仕事にかかる負荷はいつも以上に増えてしまうけど、それを乗り越える為にも、スタートアップのメッカであるシリコンバレーで活躍しているという事実そのものが最も影響力のあるモチベーションだったと思うよ。

Y:最後に、日本の潜在的なユーザーに対してメッセージをください。
A:日本は言語や文化が違うから参入は少し遅くなるかもしれない。でも多くのECサイトが日本にはあるし、更に多くの日本の企業が海外に進出するのに膨大な時間とお金を浪費していると聞いた。自分達のプロダクトを是非6ヶ月間試して欲しい。全く違った結果が見えてくるはずだよ。

【DOZのホームページ】http://www.doz.com/