Snapchatの初期投資家Niko Bonatsosが語る、シリコンバレーのトレンド、起業経験のない起業家の可能性、トップティアVCから資金調達をするコツなど





ベイエリアの投資家へのインタビューシリーズ。今回は、著名ベンチャーキャピタルGeneral Catalyst Partnersのパートナーであり、SnapchatやFlightCar、Heyday、Listia、TuneInなどヘの初期投資に関わった投資家Niko Bonatsos氏にインタビューを行った。シリコンバレーのトレンドへの言及はもちろん、起業家予備軍や起業家、さらに投資家の方々に対して示唆に富む内容になっている。
Niko Bonatsos氏のTwitterブログも為になる内容ばかりなので、フォローをおすすめする。

Snapchatの創業者Spiegelは未来のコミュニケーションを完璧に理解していた



質問者Y(以下Y):まず、あなたのバックグラウンドについて教えてください。
Niko Bonatsos氏(以下N):自分はギリシャで生まれて、電子工学を専攻してきた。ギリシャでその分野を勉強していたんだけど、結局その後すぐにバイオメディカルエンジニアリングに興味が移った。そして、その勉強をする為に、ハーバードのメディカルスクールで数年を過ごす事になる。ただ、その勉強の過程で自分に取ってこの研究職の道が最も適切なものではない事に気がついたんだ。そしてその後日本に渡り、横川電気にて1年間エンジニアリングの仕事をしたよ。当時の日本、東京は世界をリードする有数の都市であり、そこで仕事を経験できる事は当時の自分にとってとても魅力的だったからね。そこで日本独特の文化や言語、そして食事を体験できた事は今でも本当に良い思い出だよ。

その後、ケンブリッジでシステム関連のエンジニアリングを学習する為にイギリスに移った。そして、ケンブリッジの在学中に色々なスタートアップを見る事ができたんだ。なぜならケンブリッジ近辺では非常にバイオ系のスタートアップの環境が発達していて、色々なスタートアップが存在したからね。ただ、その時自分はとても大事なことに気がついたんだ。それは、成功しているスタートアップの大半はシリコンバレーにある。もしくは、シリコンバレーのVCから資金調達をするためにビジネス系のチームはシリコンバレーに位置しているという事だった。そのことに気付いた後、自分は幸運にも奨学金を獲得できたので、シリコンバレーの中心に位置するスタンフォードヘ来る事になったんだ。その時にマネジメントサイエンスやクラウドコンピューティング、リサーチなどを学習し、博士号を取得できた。

そしてその後、自分は一刻も早く自分の会社を立ち上げたくなった。そう言う訳で、自分は卒業後数ヶ月したら、後のLinkedInのco-founderの一人とスタートアップを立ち上げた。それはLinkedInの原型を含む部分もあったけど、基本的にはFacebookのコピーだったね。ただ、FacebookがFacebookアプリ用に極めてシンプルなAPIを一般に公開し、その後200万ユーザーを獲得など順調な成長を施していたのに対して、自分たちはそのAPIの設計でつまずいてしまった。そこでユーザーの成長を伸ばせなかったんだ。また、自分たちはFacebookの様にユーザーのデータを利用することは一切なかったので、そこからビジネスを発展させることもできなかったね。そんな訳で自分たちのそのスタートアップは失敗に終わってしまったよ。

そこで、自分は今後のキャリアについてどうしようかと考え、VCになるという選択肢を見つけたんだ。その選択肢は自分の考えや経験を活かせると思ったので、現在のパロアルトにあるGeneral Catalystに応募し、運良くジョインすることができたんだ。General Catalystに入ってから、自分は特にアーリーステージのC向け、またモバイル系のサービスに注力して投資を行っているよ。その後"運良く"素晴らしい起業家やサービスに投資をする事ができ、ボードメンバーの一人として一緒に歩んでいく事ができているんだ。SnapchatやFlightCar、Heyday、Listia、TuneIn、ClassDojo…など。君のMacに貼ってあるステッカーのような企業にね(※質問者のパソコンにはたくさんのスタートアップのステッカーが貼られている)。本当にラッキーだった。

自分も5年前までは君の様に、Macのステッカーに時間を費やしていた。だから、もしかしたら現在のこのスタートアップエコシステムのアツさや、UberやSnapchatのような現在のC向けサービスの流行具合を見ると、君も今後の5年間で自分が運良く経験できた素晴らしい時間をすごせる可能性があると言えるよ。Uberはもうビリオン(1000億円)カンパニーだ。それは文字通りモバイルデバイスの1クリックで1億人の人とサービスを繋げる事ができるんだ…。C向けのモバイルサービスにはとてつもない可能性が眠っていると本気で思っているよ。


Y:どうやってあなたのポートフォリオにあるような素晴らしいスタートアップを見つけてきたのですか?
N:そうだね。General Catalistはご存知の通り他のパートナー達の築き上げた歴史のおかげで、素晴らしいスタートアップに投資をすることが出来ている。その評判から、色々な起業家が投資を受ける為に連絡してくるよ。自分たちは歴史あるVCなので困難への対処に慣れていることや、モバイルやコマース分野においてとてもバリューを発揮する事ができるからね。実際、自分は1年に3000人近い起業家と会っている。良い投資先に出会えることができた一つ目の理由としては、この圧倒的な"量"があげられると思う。

そして2つ目には、知り合いからの紹介経由が理由としてあげられる。自分がよく知っている人からの推薦だったら、推薦をもらっている人が信頼に値する人である事や、能力がある事の保証になるからね。例えば、自分のポートフォリオのスタートアップのFounderが友達でイケてる人を紹介してくれるケースなんかがよくあるよね。これは投資をする確立も高い気がするよ。

そして最後に、自分で使ってみてるという方法があるかな。自分で実際にアプリをダウンロードして使ってみて、そのアプリについての記事をオンライン上で見てみたりするよ。


Y:Product Huntなども参考にしているのですか?
N:そうだね。Product Huntも新たなサービスを見つける場所としてはかなり良い場所となっているよね。ただ、自分としては最も気に入っているのはTechCrunchだ。


Y:あなたの様なトップVCから資金調達をする上で最も重要な事は何ですか?アイディア、人、トラクション、どれでしょうか?
N:その解答はそのステージによるよね。もしある程度あなたのスタートアップが成熟しているのなら、どれほどマーケットが大きく、過去数年でどれほどそのマーケットを獲得できているのかのかけ算になるかな。それよりも早い段階のステージの場合、最も大事なのはFounderになるだろう。例えば、Founderは最初顧客がお金を払わないプロダクトを作るかもしれない。しかし、優れたFounderならばそのプロダクトを通じて未来がどうなるのかを詳細に描く事ができる。そして彼等はその未来でマネタイズができることも想像できる。

素晴らしいFounder達は非常に優れた独創性とそれを詳細に描き実現する能力をもっている。彼等は将来がどうなるのかをとてもとても詳細に描写する事ができる。もちろん、このような素晴らしいFounder達は現実には世の中の起業家の内5%といないだろう。彼等に投資をする事ができれば、自分も彼等のチームと一緒に素晴らしい"旅"ができると考えている。凄い勢いで成長するプロダクト、起業家と一緒に歩めるのは本当に良い事なんだ。彼等は悪しき伝統や予算なんかを気にしない。とてつもないスピードで進んでいくんだ。そして若さ故のナイーブさを持っている。しかし、このナイーブさとは"よりクリエイティブ"であると言う事と同意義なんだ(笑)。何度も言うけど彼等と過ごせる時間は本当にすばらしい。だからこそ、自分は彼等を絶対に見逃したくはないと一生懸命何人もの起業家にあっているよね。


Y:いくつかの人はSnapchatのFounderであるEvan・Spiegelのことを嫌っていますが、自分はSnapchatがお気に入りのアプリで、また彼の事をとても尊敬しています。そこで、どうやって彼を見つけたのかや、Snapchatや彼についての見解を教えてください。
N:僕が初めてSnapchatについて知ったのは、Snapchatのユーザーの一人から教えてもらった時で、自分が初めてEvan Speigelに出会ったのは、彼がまだスタンフォードに在学しているときだったね。そして、自分も当時スタンフォードのコミュニティにいたんだ。そんな時、自分のとある友達が「大半の人がバカだとか意味の分からない事をしていると思っているサービスを作っているスタートアップがあるんだ。見てみろよ。」って教えてくれたんだ。そこで自分はLinkedInのinMailを使って彼に直接連絡をしたんだ。そして彼が返事をくれたから、スタンフォードのビジネススクールの近くのカフェで会って話したんだ。当時は2011年の春だったね。とても早かった。そして彼はまだ大学4年生でありながら、ビジネスを成長させ、凄い勢いでユーザーを獲得していたんだ。そして彼等のバックグランドを聞いた時に、彼のプロダクトにとてもマッチしていた。また彼は人間のコミュニケーションについて深い考察を持っていたんだ。人間のコミュニケーションは大半が声や表情によって伝わっていると。そして、現在ティーンエイジャーが行うコミュンケーショんはこれを反映したSelfieが流行っているなどだ。そしてそれは正しかった。だからこそSnapchatはここまで流行っているんだ。

また、他にも既存のSNSのコミュニケーションはそのコミュニケーションの形跡が消える事はないという大きな特徴も指摘していた。人間のコミュニケーションは本来表情や声など瞬間的なもので、それを表現したコミュニケーションツールは今までのSNSには存在せず、その部分をSnapchatが埋められると言っていた。更に、人間のコミュニケーションは本来感情を伝える内容だとも言っていたよ。表情や声、動きを通じて嬉しさや悲しさなどを伝える物だと。そこまで完全に考えた上でのSnapchatだったという事だ。

さっき述べた素晴らしい起業家の例としてまさにEvanがあげられる。彼は完璧に人間のコミュニケーションを理解し、将来を予見していたんだ。とてもとても詳細にね。彼は本当に素晴らしい、とにかくスペシャルだと私は思っているよ。例えば、彼は他にも素晴らしい予想をしていた。2年前、大半の人はselfieについて全く知らなかったし、理解もしていなかった。ただ、彼は別だった。こんな風に言っていたよ。「今のティーンエイジャーの女の子が取る写真の80%は自分自身の写真なんだ。」彼は本当にコミュニケーションの全てを理解していたんだ。

起業経験のない起業家(first time entrepreneur)は世界を大きく変える



Y:今最もベイエリアでアツいスタートアップのカテゴリを教えてください。Uber for ○○だったり、Airbnnb for ○○などでしょうか?
N:ベイエリアとシリコンバレーは少し違うけど全般的に言えるのは、UberやAirbnbが2006年前後に登場した事でシェアリングエコノミーの概念が登場してきたよね。その潮流は今でも大きく存在する。そしてそれらの中でも特にUberは、モバイル特化のオンデマンドC向けサービスがとても大きな可能性を持っている事を示してきた。Food系やC向けヘルスケアサービスに、クラウド、セキュリティ、そして特にここ数ヶ月では匿名系のSNSが活発になってきていると言えるよね。もしベイエリアにいるのなら、たくさんの新しいサービスが見れてとても良いと思うけど、逆にC向けのハードウェアはベイエリアで活気過ぎて中々大変だろう。ドローン系の企業はスタートアップだけでもたくさんあるし、IoT系の大御所Nestなんかも存在する。難しい環境じゃないかな。とにかくC向けのハードウェアもとても活気だと言えると思うよ。


Y:あなたのtweetやブログは多くのTechyや起業家にとってとても良いアドバイスになっていると思います。どうやってその優れたアドバイスを学んだ、もしくは思いついてきたのですか?
N:基本的には自分の経験だね。特に自分のポートフォリオのすばらしいFounder達と過ごした経験が基となっていると言えるだろう。Twitterの投稿は、基本的に海にメッセージの入ったボトルを投げるようなものだ。自分が知らない誰かに届けられる。自分の財産は過去の経験が全てだ。昔東京のレストランにいた様な経験を元にね(笑)。自分のブログやtweetは潜在的に他の優れたVCや起業家に影響を受けているかもしれないけど、それと同時に、幸運にも非常に優れた起業家と毎日を過ごしてきた経験が大きいだろう。自分の投稿の大半は、オンライン/オフライン問わず、彼等のような素晴らしい起業家との対話やチャットを通じて、素晴らしい才能を持った起業家達の潜在的なパターンや共通点を見抜いて文字にしているんだ。


Y:いくつかの日本のスタートアップはUSのVCから調達をしたいと考えています。彼等は十分なトラクションを既に獲得してる場合でも、コネクションや言語の壁で調達が難しくなっているのが現状です。彼等に向けて何かアドバイスなどはありますか?
N:まずは、調達したいVCについてよく知る事だ。そして、彼等が何故自分達が数多いVCから彼等を選び、彼等から調達するのかを明確にすることだ。偉大なVCから誰もが資金調達をできる訳ではないけど、VCはお金を提供する点ではみんな同じだが、提供してくれるメリットはそれぞれに全くことなる。それについて詳しく知る必要がある。そして詳しく調達したいVCについて理解した後には、そのVCへの紹介を手に入れる事だ。VCへの紹介を獲得する上で最もシンプルな方法は、そのポートフォリオのスタートアップのFounderに紹介をお願いする事だよ。またはそのFounderにフィードバックをもらう事も重要。それがVCへの紹介に近づく為の方法の1つになるだろう。そしてVCに会うことができたら、「何故その会社がユニークで優れているのか」「何故狙っているマーケットが優れているのか」さらに「何故このタイミングでそのマーケットを攻めるのが適切なのか」について全力で説明することだ。

また、より早いステージのチームにとっては、最も単純な方法としてトラクションを見せる事が挙げられる。もし1万のユーザーを獲得していて、毎月20%の割合で数字が伸びていたら、USに限らずともどんなVCもあなたのスタートアップに投資をしたがるだろう。ただ、十分な数値を獲得できていない場合はUSのアクセラレーターに参加するのが良いだろう。もちろん現状最も良いアクセラレーターは、モバイルやC向けのサービスが多い点でもY Combinatorになる。しかし、彼等のプログラムは素晴らしいけど、もちろん入るのは難しい。そのため、他のアクセラレーターも検討することをおすすめするよ。


Y:あなたはの記事を以前見ていた時に、first time entrepreneur(起業経験のない起業家)に注目をしているとおっしゃっていたのを覚えています。なぜそのように考えているのですか?
N:自分がfirst time entrepreneurに注目をする理由としては、彼等は基本的に予算や時間を気にしないことにある。そして彼等は世界がどうなるのかを鮮明に予想し、自分の経験などを基に完全に信じきっている。first time entrepreneurはとても自由な発想で世界がどうなるのかを上手く予想することができる。それはC向けのサービスにおいてはとても重要な事だ。なぜなら彼等は型にはまらない方法で考える必要があり、自分の道を歩いていく必要があるからだ。多くの人が将来どんな世界を生きているのかを予想する必要があるんだ。具体的に見てみよう。Snapchatも、Facebookも、Microsoft、Yahoo!、Google、Apple、Dropboxもみんな全部が全部first time entrepreneurによって立ち上げられたんだ。彼等はみな将来の人々の姿を詳細に想像をすることで、それを実現してきた。だからこそ、僕は彼等に注目している。


Y:日本のスタートアップがUSのVCから資金調達をしたい時に、チーム全員がUSに来るべきでしょうか?こちらは生活コストや採用コストなど全てのコストが高くつくと思いますが、どうでしょうか?開発チームだけ日本にいるべきでしょうか?
N:それはあなたのスタートアップがどんなサービスを展開してるかによるが、全体的に言えることは自分の国の「秘密兵器」を用いる事だ。日本の場合は、東京という信じられないくらい小さな土地に素晴らしい才能がとても安価に雇えるというその「秘密兵器」を活かすべきだ。どんな国のスタートアップも、もしアメリカに来たいのであれば、絶対に自国特有の長所、つまり「秘密兵器」を活かして戦うべきだ。その「秘密兵器」を活かして、そのチームやシリコンバレーでは高価なエンジニアを自国置きながら、セールスやマーケターをアメリカに配置するのが恐らく最良の方法となるだろう。

またチームについて他の観点から言及すると、一般的にはチームビルディングをする時に、雇う人材は自分の知り合いなどのツテしかないだろう。ならば、そのツテの中で最も優れた人材を巻き込むんだ。first time founderは当初かならず人材獲得に苦労するだろう。資金もなければ採用の手段もない。だからこそFounderのツテは初期の頃はとても大事になる。また、ビジネスを立ち上げる観点から考えると、必ず顧客の近くにいて、たくさん高頻度でフィードバックをもらう事が大事だ。だから、もし日本から世界に向けるビジネスを立ち上げるつもりならば、世界の顧客に素早くフィードバックをもらえる様な環境にセールスやマーケターを配置するべきだろう。


Y:日本のいくつかのVCはベイエリアのスタートアップに投資をしたがっています。しかし、十分なコネクションがなかったり言語の壁があるなど、難しい状況にあります。そんな彼等に何かアドバイスはありますか?
N:アーリーステージのスタートアップに投資をしたい場合、とにかくたくさんの起業家に会い、それらを評価していく必要がある。それは遠くにいてはとても難しい事だ。ただ、現在はとても幸運なことに、Angel ListやLinkedInなどの優れたビジネスツールがある。また、多様なアクセラレーターのデモデーもあるので、優れた起業家を見つけ易くもなっている。

しかし、それでも遠くにいると実行するのは難しい。なぜなら1つにはベイエリアやシリコンバレーへのアクセスがどうしても限られてしまうという事。そして2つ目に、ここのスタートアップエコシステムはとっても狭く、よく知られた人々によって回っているということが理由としてあげられるよ。

なので、本当にこちらで投資をしたいのなら、ベイエリアに来るのが最もいい方法だと思うよ。自分もこちらの世界に来たいと思って昔ケンブリッジからスタンフォードに来たんだからね。

Y:貴重なお時間ありがとうございました。

Niko Bonatsos氏のTwitterブログは要チェック。

Snapchatの初期投資家Niko Bonatsosが語る、シリコンバレーのトレンド、起業経験のない起業家の可能性、トップティアVCから資金調達をするコツなど





ベイエリアの投資家へのインタビューシリーズ。今回は、著名ベンチャーキャピタルGeneral Catalyst Partnersのパートナーであり、SnapchatやFlightCar、Heyday、Listia、TuneInなどヘの初期投資に関わった投資家Niko Bonatsos氏にインタビューを行った。シリコンバレーのトレンドへの言及はもちろん、起業家予備軍や起業家、さらに投資家の方々に対して示唆に富む内容になっている。
Niko Bonatsos氏のTwitterブログも為になる内容ばかりなので、フォローをおすすめする。

Snapchatの創業者Spiegelは未来のコミュニケーションを完璧に理解していた



質問者Y(以下Y):まず、あなたのバックグラウンドについて教えてください。
Niko Bonatsos氏(以下N):自分はギリシャで生まれて、電子工学を専攻してきた。ギリシャでその分野を勉強していたんだけど、結局その後すぐにバイオメディカルエンジニアリングに興味が移った。そして、その勉強をする為に、ハーバードのメディカルスクールで数年を過ごす事になる。ただ、その勉強の過程で自分に取ってこの研究職の道が最も適切なものではない事に気がついたんだ。そしてその後日本に渡り、横川電気にて1年間エンジニアリングの仕事をしたよ。当時の日本、東京は世界をリードする有数の都市であり、そこで仕事を経験できる事は当時の自分にとってとても魅力的だったからね。そこで日本独特の文化や言語、そして食事を体験できた事は今でも本当に良い思い出だよ。

その後、ケンブリッジでシステム関連のエンジニアリングを学習する為にイギリスに移った。そして、ケンブリッジの在学中に色々なスタートアップを見る事ができたんだ。なぜならケンブリッジ近辺では非常にバイオ系のスタートアップの環境が発達していて、色々なスタートアップが存在したからね。ただ、その時自分はとても大事なことに気がついたんだ。それは、成功しているスタートアップの大半はシリコンバレーにある。もしくは、シリコンバレーのVCから資金調達をするためにビジネス系のチームはシリコンバレーに位置しているという事だった。そのことに気付いた後、自分は幸運にも奨学金を獲得できたので、シリコンバレーの中心に位置するスタンフォードヘ来る事になったんだ。その時にマネジメントサイエンスやクラウドコンピューティング、リサーチなどを学習し、博士号を取得できた。

そしてその後、自分は一刻も早く自分の会社を立ち上げたくなった。そう言う訳で、自分は卒業後数ヶ月したら、後のLinkedInのco-founderの一人とスタートアップを立ち上げた。それはLinkedInの原型を含む部分もあったけど、基本的にはFacebookのコピーだったね。ただ、FacebookがFacebookアプリ用に極めてシンプルなAPIを一般に公開し、その後200万ユーザーを獲得など順調な成長を施していたのに対して、自分たちはそのAPIの設計でつまずいてしまった。そこでユーザーの成長を伸ばせなかったんだ。また、自分たちはFacebookの様にユーザーのデータを利用することは一切なかったので、そこからビジネスを発展させることもできなかったね。そんな訳で自分たちのそのスタートアップは失敗に終わってしまったよ。

そこで、自分は今後のキャリアについてどうしようかと考え、VCになるという選択肢を見つけたんだ。その選択肢は自分の考えや経験を活かせると思ったので、現在のパロアルトにあるGeneral Catalystに応募し、運良くジョインすることができたんだ。General Catalystに入ってから、自分は特にアーリーステージのC向け、またモバイル系のサービスに注力して投資を行っているよ。その後"運良く"素晴らしい起業家やサービスに投資をする事ができ、ボードメンバーの一人として一緒に歩んでいく事ができているんだ。SnapchatやFlightCar、Heyday、Listia、TuneIn、ClassDojo…など。君のMacに貼ってあるステッカーのような企業にね(※質問者のパソコンにはたくさんのスタートアップのステッカーが貼られている)。本当にラッキーだった。

自分も5年前までは君の様に、Macのステッカーに時間を費やしていた。だから、もしかしたら現在のこのスタートアップエコシステムのアツさや、UberやSnapchatのような現在のC向けサービスの流行具合を見ると、君も今後の5年間で自分が運良く経験できた素晴らしい時間をすごせる可能性があると言えるよ。Uberはもうビリオン(1000億円)カンパニーだ。それは文字通りモバイルデバイスの1クリックで1億人の人とサービスを繋げる事ができるんだ…。C向けのモバイルサービスにはとてつもない可能性が眠っていると本気で思っているよ。


Y:どうやってあなたのポートフォリオにあるような素晴らしいスタートアップを見つけてきたのですか?
N:そうだね。General Catalistはご存知の通り他のパートナー達の築き上げた歴史のおかげで、素晴らしいスタートアップに投資をすることが出来ている。その評判から、色々な起業家が投資を受ける為に連絡してくるよ。自分たちは歴史あるVCなので困難への対処に慣れていることや、モバイルやコマース分野においてとてもバリューを発揮する事ができるからね。実際、自分は1年に3000人近い起業家と会っている。良い投資先に出会えることができた一つ目の理由としては、この圧倒的な"量"があげられると思う。

そして2つ目には、知り合いからの紹介経由が理由としてあげられる。自分がよく知っている人からの推薦だったら、推薦をもらっている人が信頼に値する人である事や、能力がある事の保証になるからね。例えば、自分のポートフォリオのスタートアップのFounderが友達でイケてる人を紹介してくれるケースなんかがよくあるよね。これは投資をする確立も高い気がするよ。

そして最後に、自分で使ってみてるという方法があるかな。自分で実際にアプリをダウンロードして使ってみて、そのアプリについての記事をオンライン上で見てみたりするよ。


Y:Product Huntなども参考にしているのですか?
N:そうだね。Product Huntも新たなサービスを見つける場所としてはかなり良い場所となっているよね。ただ、自分としては最も気に入っているのはTechCrunchだ。


Y:あなたの様なトップVCから資金調達をする上で最も重要な事は何ですか?アイディア、人、トラクション、どれでしょうか?
N:その解答はそのステージによるよね。もしある程度あなたのスタートアップが成熟しているのなら、どれほどマーケットが大きく、過去数年でどれほどそのマーケットを獲得できているのかのかけ算になるかな。それよりも早い段階のステージの場合、最も大事なのはFounderになるだろう。例えば、Founderは最初顧客がお金を払わないプロダクトを作るかもしれない。しかし、優れたFounderならばそのプロダクトを通じて未来がどうなるのかを詳細に描く事ができる。そして彼等はその未来でマネタイズができることも想像できる。

素晴らしいFounder達は非常に優れた独創性とそれを詳細に描き実現する能力をもっている。彼等は将来がどうなるのかをとてもとても詳細に描写する事ができる。もちろん、このような素晴らしいFounder達は現実には世の中の起業家の内5%といないだろう。彼等に投資をする事ができれば、自分も彼等のチームと一緒に素晴らしい"旅"ができると考えている。凄い勢いで成長するプロダクト、起業家と一緒に歩めるのは本当に良い事なんだ。彼等は悪しき伝統や予算なんかを気にしない。とてつもないスピードで進んでいくんだ。そして若さ故のナイーブさを持っている。しかし、このナイーブさとは"よりクリエイティブ"であると言う事と同意義なんだ(笑)。何度も言うけど彼等と過ごせる時間は本当にすばらしい。だからこそ、自分は彼等を絶対に見逃したくはないと一生懸命何人もの起業家にあっているよね。


Y:いくつかの人はSnapchatのFounderであるEvan・Spiegelのことを嫌っていますが、自分はSnapchatがお気に入りのアプリで、また彼の事をとても尊敬しています。そこで、どうやって彼を見つけたのかや、Snapchatや彼についての見解を教えてください。
N:僕が初めてSnapchatについて知ったのは、Snapchatのユーザーの一人から教えてもらった時で、自分が初めてEvan Speigelに出会ったのは、彼がまだスタンフォードに在学しているときだったね。そして、自分も当時スタンフォードのコミュニティにいたんだ。そんな時、自分のとある友達が「大半の人がバカだとか意味の分からない事をしていると思っているサービスを作っているスタートアップがあるんだ。見てみろよ。」って教えてくれたんだ。そこで自分はLinkedInのinMailを使って彼に直接連絡をしたんだ。そして彼が返事をくれたから、スタンフォードのビジネススクールの近くのカフェで会って話したんだ。当時は2011年の春だったね。とても早かった。そして彼はまだ大学4年生でありながら、ビジネスを成長させ、凄い勢いでユーザーを獲得していたんだ。そして彼等のバックグランドを聞いた時に、彼のプロダクトにとてもマッチしていた。また彼は人間のコミュニケーションについて深い考察を持っていたんだ。人間のコミュニケーションは大半が声や表情によって伝わっていると。そして、現在ティーンエイジャーが行うコミュンケーショんはこれを反映したSelfieが流行っているなどだ。そしてそれは正しかった。だからこそSnapchatはここまで流行っているんだ。

また、他にも既存のSNSのコミュニケーションはそのコミュニケーションの形跡が消える事はないという大きな特徴も指摘していた。人間のコミュニケーションは本来表情や声など瞬間的なもので、それを表現したコミュニケーションツールは今までのSNSには存在せず、その部分をSnapchatが埋められると言っていた。更に、人間のコミュニケーションは本来感情を伝える内容だとも言っていたよ。表情や声、動きを通じて嬉しさや悲しさなどを伝える物だと。そこまで完全に考えた上でのSnapchatだったという事だ。

さっき述べた素晴らしい起業家の例としてまさにEvanがあげられる。彼は完璧に人間のコミュニケーションを理解し、将来を予見していたんだ。とてもとても詳細にね。彼は本当に素晴らしい、とにかくスペシャルだと私は思っているよ。例えば、彼は他にも素晴らしい予想をしていた。2年前、大半の人はselfieについて全く知らなかったし、理解もしていなかった。ただ、彼は別だった。こんな風に言っていたよ。「今のティーンエイジャーの女の子が取る写真の80%は自分自身の写真なんだ。」彼は本当にコミュニケーションの全てを理解していたんだ。

起業経験のない起業家(first time entrepreneur)は世界を大きく変える



Y:今最もベイエリアでアツいスタートアップのカテゴリを教えてください。Uber for ○○だったり、Airbnnb for ○○などでしょうか?
N:ベイエリアとシリコンバレーは少し違うけど全般的に言えるのは、UberやAirbnbが2006年前後に登場した事でシェアリングエコノミーの概念が登場してきたよね。その潮流は今でも大きく存在する。そしてそれらの中でも特にUberは、モバイル特化のオンデマンドC向けサービスがとても大きな可能性を持っている事を示してきた。Food系やC向けヘルスケアサービスに、クラウド、セキュリティ、そして特にここ数ヶ月では匿名系のSNSが活発になってきていると言えるよね。もしベイエリアにいるのなら、たくさんの新しいサービスが見れてとても良いと思うけど、逆にC向けのハードウェアはベイエリアで活気過ぎて中々大変だろう。ドローン系の企業はスタートアップだけでもたくさんあるし、IoT系の大御所Nestなんかも存在する。難しい環境じゃないかな。とにかくC向けのハードウェアもとても活気だと言えると思うよ。


Y:あなたのtweetやブログは多くのTechyや起業家にとってとても良いアドバイスになっていると思います。どうやってその優れたアドバイスを学んだ、もしくは思いついてきたのですか?
N:基本的には自分の経験だね。特に自分のポートフォリオのすばらしいFounder達と過ごした経験が基となっていると言えるだろう。Twitterの投稿は、基本的に海にメッセージの入ったボトルを投げるようなものだ。自分が知らない誰かに届けられる。自分の財産は過去の経験が全てだ。昔東京のレストランにいた様な経験を元にね(笑)。自分のブログやtweetは潜在的に他の優れたVCや起業家に影響を受けているかもしれないけど、それと同時に、幸運にも非常に優れた起業家と毎日を過ごしてきた経験が大きいだろう。自分の投稿の大半は、オンライン/オフライン問わず、彼等のような素晴らしい起業家との対話やチャットを通じて、素晴らしい才能を持った起業家達の潜在的なパターンや共通点を見抜いて文字にしているんだ。


Y:いくつかの日本のスタートアップはUSのVCから調達をしたいと考えています。彼等は十分なトラクションを既に獲得してる場合でも、コネクションや言語の壁で調達が難しくなっているのが現状です。彼等に向けて何かアドバイスなどはありますか?
N:まずは、調達したいVCについてよく知る事だ。そして、彼等が何故自分達が数多いVCから彼等を選び、彼等から調達するのかを明確にすることだ。偉大なVCから誰もが資金調達をできる訳ではないけど、VCはお金を提供する点ではみんな同じだが、提供してくれるメリットはそれぞれに全くことなる。それについて詳しく知る必要がある。そして詳しく調達したいVCについて理解した後には、そのVCへの紹介を手に入れる事だ。VCへの紹介を獲得する上で最もシンプルな方法は、そのポートフォリオのスタートアップのFounderに紹介をお願いする事だよ。またはそのFounderにフィードバックをもらう事も重要。それがVCへの紹介に近づく為の方法の1つになるだろう。そしてVCに会うことができたら、「何故その会社がユニークで優れているのか」「何故狙っているマーケットが優れているのか」さらに「何故このタイミングでそのマーケットを攻めるのが適切なのか」について全力で説明することだ。

また、より早いステージのチームにとっては、最も単純な方法としてトラクションを見せる事が挙げられる。もし1万のユーザーを獲得していて、毎月20%の割合で数字が伸びていたら、USに限らずともどんなVCもあなたのスタートアップに投資をしたがるだろう。ただ、十分な数値を獲得できていない場合はUSのアクセラレーターに参加するのが良いだろう。もちろん現状最も良いアクセラレーターは、モバイルやC向けのサービスが多い点でもY Combinatorになる。しかし、彼等のプログラムは素晴らしいけど、もちろん入るのは難しい。そのため、他のアクセラレーターも検討することをおすすめするよ。


Y:あなたはの記事を以前見ていた時に、first time entrepreneur(起業経験のない起業家)に注目をしているとおっしゃっていたのを覚えています。なぜそのように考えているのですか?
N:自分がfirst time entrepreneurに注目をする理由としては、彼等は基本的に予算や時間を気にしないことにある。そして彼等は世界がどうなるのかを鮮明に予想し、自分の経験などを基に完全に信じきっている。first time entrepreneurはとても自由な発想で世界がどうなるのかを上手く予想することができる。それはC向けのサービスにおいてはとても重要な事だ。なぜなら彼等は型にはまらない方法で考える必要があり、自分の道を歩いていく必要があるからだ。多くの人が将来どんな世界を生きているのかを予想する必要があるんだ。具体的に見てみよう。Snapchatも、Facebookも、Microsoft、Yahoo!、Google、Apple、Dropboxもみんな全部が全部first time entrepreneurによって立ち上げられたんだ。彼等はみな将来の人々の姿を詳細に想像をすることで、それを実現してきた。だからこそ、僕は彼等に注目している。


Y:日本のスタートアップがUSのVCから資金調達をしたい時に、チーム全員がUSに来るべきでしょうか?こちらは生活コストや採用コストなど全てのコストが高くつくと思いますが、どうでしょうか?開発チームだけ日本にいるべきでしょうか?
N:それはあなたのスタートアップがどんなサービスを展開してるかによるが、全体的に言えることは自分の国の「秘密兵器」を用いる事だ。日本の場合は、東京という信じられないくらい小さな土地に素晴らしい才能がとても安価に雇えるというその「秘密兵器」を活かすべきだ。どんな国のスタートアップも、もしアメリカに来たいのであれば、絶対に自国特有の長所、つまり「秘密兵器」を活かして戦うべきだ。その「秘密兵器」を活かして、そのチームやシリコンバレーでは高価なエンジニアを自国置きながら、セールスやマーケターをアメリカに配置するのが恐らく最良の方法となるだろう。

またチームについて他の観点から言及すると、一般的にはチームビルディングをする時に、雇う人材は自分の知り合いなどのツテしかないだろう。ならば、そのツテの中で最も優れた人材を巻き込むんだ。first time founderは当初かならず人材獲得に苦労するだろう。資金もなければ採用の手段もない。だからこそFounderのツテは初期の頃はとても大事になる。また、ビジネスを立ち上げる観点から考えると、必ず顧客の近くにいて、たくさん高頻度でフィードバックをもらう事が大事だ。だから、もし日本から世界に向けるビジネスを立ち上げるつもりならば、世界の顧客に素早くフィードバックをもらえる様な環境にセールスやマーケターを配置するべきだろう。


Y:日本のいくつかのVCはベイエリアのスタートアップに投資をしたがっています。しかし、十分なコネクションがなかったり言語の壁があるなど、難しい状況にあります。そんな彼等に何かアドバイスはありますか?
N:アーリーステージのスタートアップに投資をしたい場合、とにかくたくさんの起業家に会い、それらを評価していく必要がある。それは遠くにいてはとても難しい事だ。ただ、現在はとても幸運なことに、Angel ListやLinkedInなどの優れたビジネスツールがある。また、多様なアクセラレーターのデモデーもあるので、優れた起業家を見つけ易くもなっている。

しかし、それでも遠くにいると実行するのは難しい。なぜなら1つにはベイエリアやシリコンバレーへのアクセスがどうしても限られてしまうという事。そして2つ目に、ここのスタートアップエコシステムはとっても狭く、よく知られた人々によって回っているということが理由としてあげられるよ。

なので、本当にこちらで投資をしたいのなら、ベイエリアに来るのが最もいい方法だと思うよ。自分もこちらの世界に来たいと思って昔ケンブリッジからスタンフォードに来たんだからね。

Y:貴重なお時間ありがとうございました。

Niko Bonatsos氏のTwitterブログは要チェック。