TechCrunchのトップ記者Ryan Lawlerに聞く、ベイエリアで注目の事業分野、日本のスタートアップが海外メディアに取り上げられるコツなど



今回は、Tech系メディア最大手のTechCrunchで、トップ5の記者であるRyan Lawler氏へインタビューを行った。シリコンバレー、ベイエリアにおけるスタートアップの事情を詳細に知っている記者だからこその知見が随所に伺える内容になっている。それに加えて、日本のスタートアップが海外メディアに取り上げられるコツや、おすすめの記者、シリコンバレーの用法をキャッチアップするためのヒントなどを伺うことができる。
※Ryanの記事のアーカイブはこちら Twitter: @ryanlawler

サンフランシスコで今アツいのはデリバリー系のサービス


質問者(以下Y):まず、あなたのバックグラウンドについて教えてください。
Ryan(以下R):僕は2006年にテクノロジー分野のレポーターを始めたんだ。最初は日本の企業である読売新聞に属してレポーティング用のリサーチャーやレポーターのアシスタントなどをしていたよ。そして、2007年には通信会社でコーポレートリーディング用にリリースを書いたりもした。一般企業のPRの様な役割をイメージしてもらえば良いと思う。

その後から本格的にメディア事業に関わる事になって、オンラインのビデオ報道・作成にも携わっていたよ。それと同時に、テクノロジー分野を完全に担当する様に自分の最初の興味分野に仕事が戻ってきたね。そして以前にも増して自分の興味分野が確立される様になってきた。それはコンシューマーテクノロジーだ。色々な分野があるけど、UberやAirbnb、Lyftなんかが代表的で、特に最近強い興味を抱いているのはオンデマンドのライブデリバリーサービスだ。UberやLyftのようなね。個人的には彼等のようなサービスにとても興味を持っているよ。


Y:普段からRyanさんの記事を見させて頂いています。オンデマンド分野の記事は特に勉強になりました。
R:オンデマンド関連は今とても興味深い分野だ。なぜなら、今の世の中はほとんどデリバリーでまわっているからね。例えば、本だったりご飯だったり、移動だったり…。本当にここサンフランシスコには色々な分野においてデリバリーサービスが存在している。これらのサービスは興味深い事に大半がここサンフランシスコに集まってきている。そしてそれらは依然としてテストバージョンである事が多い。なぜなら、アーリーアダプターの集まるここサンフランシスコでは時間的にとても早くユーザーを獲得し、注目を集め、サンフランシスコ以外の地域に広がっていくことが実現しやすい環境となっているからね。


Y:色々なオンデマンドサービスがここサンフランシスコには存在しますが、特にどんな種類のオンデマンドサービスに注目していますか?
R:今自分が特に注目しているのは移動関連のオンデマンドサービスだね.


Y:Hitchの様なサービスでしょうか?
R:そうだね。自分もHitchについて記事を先日書いたからね(笑)
自分の人生を振り返った時に、僕はNYCで育ち、そして仕事をはじめ、SFに移ってきた。今でもNYCに仕事をしに行く事がもちろんあるから、自分は2008年くらいからSFとNYCに1台ずつ車を持つ様になったんだ。なぜなら自分にとって自由な移動手段を持つ事は本当に便利だし、魅力的な事だからね。車のような自由な「足」を持つ事は本当に便利で、ほぼ全ての人にとってなくてはならない存在だ。また、移動の為の手段というのは全世界に需要がある。実際UberもLyftも世界中に広がっているよね。


そんなスケールのでかいUberやLyft、またそれらの移動関連のオンデマンドサービスは今、移動に関する大きなパラダイムシフトを生み出そうとしている。このままどんどん彼等のサービスが値下げをして、車などの移動手段を所有するコスト以上に安い価格でUberやLyftなどを利用し、移動手段を確保できるとしたら…。これは間違いなく本当に大きな規模のパラダイムシフトを引き起こす事になると言って良いだろう。

そして、実際それがここサンフランシスコで起き始めているんだ。サンフランシスコは地価がとても高いため、車を保持する為の駐車場や管理費用がとても高くなっている。そのため、一部には車を持たずに、徒歩とUberとLyftなどのオンデマンド系移動サービスを上手くあわせて、それだけで生活している様な人が既に存在するんだ。これはまだサンフランシスコでしか起きていない事だが、きっとこれからどんどん他の地域でも起きていくことだと思うよ。


Y:Ryanさんの考えるオンデマンドサービスの5年後の未来像を教えてください?
R:全てがオンデマンドになっていくと思うよ。今アメリカではAmazonを利用すれば大半の物が2日以内に届く様になってきている。増々Amazonなどのオンデマンド型サービスはエンドユーザーとの距離が縮まってきているんだ。オンデマンドサービスに関しては、このエンドユーザーと企業の距離がどれだけ正確に短くする事が出来るかというロジスティクスゲームの様な物だと思うよ。

※ロジスティクス 

ロジスティクスとは、以下のように定義される。 ロジスティクスは物流において、生産地から消費地までの全体最適化を目指すものである。 from wiki


Y:オンデマンドサービスにおいて、移動系よりもあついビジネス領域はありますか?
R:フードデリバリーのサービスかな。自分がぱっと思いつくだけで最低でも10個くらいのサービスがあるからね。これらは特にサンフランシスコでも活発だろう。


UberとかLyftも一見すると普通の輸送サービスだ。ただ、本質的なところでは如何に配達側の企業とエンドユーザーのつなぎの部分に様々な精度をもたらすかというロジスティクスの勝負になっている。フードデリバリーも全く同様のことが言えるだろう。そしてそこで移動系と同様にロジスティクスゲームの原理が当てはまるとしたら…?そこでより魅力的なサービスが生まれるだろう。既に出ている物もあるが、輸送時に利用できるAPIなど、デリバリーサービスについてのロジスティクスを補助するサービスも増々登場するようになると思う。

Doordashは現在フードデリバリーのサービスの例としてとても代表的な物だけれど、彼等はそれらの代表的な物かもしれない。デリバリーをしていないレストランに、デリバリーで店の料理を配達する手段を提供している。そしてその一方で彼等は配達して売り上げた利益の数%を配達料金としてもらっている。これはレストランが新たに配送員を雇うコストをおさえることにも貢献しているし、注文があったタイミングで稼ぎたい配達員のニーズも満たす事ができているんだ。これは結果的にDoordashを利用する以外の全ての選択肢よりも安価に料理が提供する事を可能にしている。これこそ、さっき述べた様なロジスティクスゲームの現状から生まれたとても興味深いサービスの一つだと言えるだろう。そしてこれは同時にサンフランシスコに置けるUberやLyftなどの移動に関するパラダイムシフトと同様の兆候だと思う。


Y:自分は個人的にとても情報が早く興味深い記事の多いRyanさんの記事を重宝させて頂いています。そこで気になったのですが、読者のターゲット像はどのような方を想定されているのですか?
R:僕はいつも自分自身を読者に当てはめた時に、魅力的なサービスについて書いている。実際に使ったりしてみてね。自分が使っても納得できなかったり、良い体験をする事が出来なかったら、読者が自分の記事を読んで試してみても同様の状態に陥るからね。


Y:好きなライターを教えてください
R:一人はWiredのMat Homan(Twitter: @mat)かな。彼は直接的なニュース記事を書く訳ではないけど、とても魅力的な文章を書くんだ。自分はニューヨークの大学で文学について学んでいた時に、彼の文章やその文章スタイルの虜になった。彼は本当に面白い記事を書き、今でもずっとTech業界の中心に位置しているライターの一人だと思うね。
 
もう一人はWSJに以前務めていて、今は
re/codeのKara Swisher(Twitter: @karashisher)だね。彼女は個人的には今Tech業界で最も素晴らしいジャーナリストだと思う。

その他にも同じくre/codeにはNellie Bowles(Twitter:
@NellieBowles)というストレートニュースの代表記者がいるね。もし読者がシリコンバレーのタクシー業界や、最新のテクノロジーによる社会的な側面に、またLA付近のスタートアップについて興味を抱いているなら、彼女の記事はとても魅力的な物になると思うよ。

または、The VergeのKatie Drummond(Twitter: @
katiedrumm)なんかも良いライターだよね。


Y:質の高い情報を仕入れる方法として、どのように起業家やVCと良い関係を築くのですか?
R:これは本当に苦労した。色々な人にたくさん、事あるごとに会って会話する事をコツコツと続けてきたんだ。どれもこれも本当に地道に続けてきた事だね。また、自分はEvernoteに色々なVCや起業家、その他様々なインフルエンサーを名前や電話番号、メールアドレスなどでまとめていて、こまめに電話やメール、チャットなどを通じてコミュニケーションを取るようにしているよ。ただ、大抵の場合は断られたり無視されたり、コメントできないなどの返事をもらう事になる。それはとてもショックを伴うアプローチ方法だけど、結局これを地道に続けるしかないよね。


Y:どれくらいの頻度で、どんなネットワーキングイベントに参加しているのですか?
R:1週間に1回は出ているね。規模は大きかったり小さかったりとまちまちだけど、色々なVCのカンファレンスやメディアのカンファレンスなど色々なものに出席しているよ。クローズドなイベントに関しては特に面白いね。質の高い人がたくさん集まっていて、良い情報を獲得できる確立が高まるから。



匿名系のアプリはまだ勝者がいない、日本のスタートアップが海外メディアに取り上げられるには?



Y:自分は匿名メッセンジャーにとても興味を持っています。なぜなら、今色々な種類の匿名コミュニケーションアプリが登場し、SV AngelやGoogle Venturesがこぞって投資をしているからです。それに関してどう思いますか?
R:恐らくそれらの質問は僕に聞く質問ではないかもしれないね。なぜなら自分は匿名系のサービスを基本的にはつかわないからね。ただ、匿名メッセージングアプリ全般に言えることだが、勝者は依然として存在しないということだ。そしてそれはFacebook対Myspaceなどではなく、お互いを認知せずにコミュニケーションを取るサービス全てが競合に値する。これらはクリティカルマスを必要とはしない。なぜなら全員が匿名なので、イノベーターなどの区別がしにくくなってしまうからだ。クリティカルマスはFacebookやその他のソーシャルネットワーク系サービスにはとても有用な考え方だったけど、匿名系のメッセンジャーはどうなるかが見えてこないからとても面白い分野だと思うね。


特にFacebookがWhatsappを買った時に、ここの人たちは誰も使わなくなると思ったよ(笑)。Whatsappを考えた時に、シリコンバレー以外の地域でとても魅力的なアプリなんだ。ただ、シリコンバレーでは現状アーリーアダプターがたくさんいて、シリコンバレーだけでも本当にたくさんのメッセージングアプリが存在する。そして彼等は一つのアプリだけを使う事はない。自分を考えてみてもいっつも同じ20人で新しいメッセーンジャーアプリをどんどん試しているからね(笑)。ここではそれが普通なんだ。Facebookに買収されてはアーリーアダプターの皆は離れていってしまうよ。使うアプリを変える事にもあまりコストは生じないしね。


※クリティカルマス
クリティカルマスとは、マーケティングに関する用語で、ある商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がるための分岐点となっている普及率のことである。ある商品やサービスが市場に登場すると、最初は最も先進的なイノベーター(革新者)と呼ばれる消費者層に受け入れられ、次に新しいものに敏感なアーリーアダプターと呼ばれる利用者層に広まっていく。それから徐々に、保守的な利用者層に広がっていく。このとき、市場全体の普及率がクリティカルマスに達すると、それまでの普及率の伸びが一気に跳ね上がると指摘されている。クリティカルマスとされる普及率は、市場の約16%であると言われている。from wiki


Y:自分は普段の情報収集にTechCrunch、Hacker News、そしてProduct Huntを使っているのですがRyanさんが使っている物は他にどんな物がありますか?
R:そうだねえ…。自分は基本的には自分たちTechCrunchとTechmemeとTwitterだね。
Product Huntも面白いサービスだ。自分は毎日見る訳じゃないけど、数日間ごとに見ていてキャッチアップしているよ。Hacker newsに関してはかなりギークな一部の読者層にしか受けない情報が多いので、自分は特にキャッチアップをしている訳ではないかな。


Y:既に多くのトラフィックを獲得していたり、大型の調達に成功している日本のスタートアップがUSのメディアに掲載されたい場合、彼らはどのように動けば良いでしょうか?何かヒントやアドバイスをください。
R:USメディアに掲載される上で最も良いのは、やはりシリコンバレーにくることだね。こっちの環境では、さっきも言った様に分かるかもしれないけど、基本的にネットワークに依存して様々な事が動いている。確かにいくつかの日本のスタートアップはアメリカのVCから調達したり、500startupsのプログラムに参加していたりするね。ただ、色々な情報を記者にメールしても、記者からしたら大抵の場合は誰から来たメールなのか分からない。そして誰か分からない人からのメールを基に記事を書く事は難しいんだ。自分はできるだけ全てのメールに返事をするようにしているし、実際自分のメールフォルダには10しかためない様になっている。ただ、記者である
自分が出来ることも限られている。だから、彼等はこっちに来て、こっちで如何にネットワーキングをするかが大事になってくると思うよ。


Y:次が最後の質問です。最近はTech WriterがVCに参加しているけど、それについてどう考えていますか?
R:いや、これはトレンドではないね(笑)。確かに最近は数人が続いてニュースになってきているけど、彼等は全体の記者の内ほんの数%だ。そして、記者からVCにジョインしても、実際に投資に関わっている人たちはもっともっと少ない割合になってくる。Crunch FundやGoogle Ventures、Andreessen Horowitzなどに参加する人たちが少数いるのは確かだけど、ジャーナリスト出身でVCとして大成功したマイケル・モリッツのようになれるかと言ったら、それはそうとは言えないと思う(笑)


Y:貴重なお時間ありがとうございました。

※Ryanの記事のアーカイブはこちら

Twitter: @ryanlawler

TechCrunchのトップ記者Ryan Lawlerに聞く、ベイエリアで注目の事業分野、日本のスタートアップが海外メディアに取り上げられるコツなど



今回は、Tech系メディア最大手のTechCrunchで、トップ5の記者であるRyan Lawler氏へインタビューを行った。シリコンバレー、ベイエリアにおけるスタートアップの事情を詳細に知っている記者だからこその知見が随所に伺える内容になっている。それに加えて、日本のスタートアップが海外メディアに取り上げられるコツや、おすすめの記者、シリコンバレーの用法をキャッチアップするためのヒントなどを伺うことができる。
※Ryanの記事のアーカイブはこちら Twitter: @ryanlawler

サンフランシスコで今アツいのはデリバリー系のサービス


質問者(以下Y):まず、あなたのバックグラウンドについて教えてください。
Ryan(以下R):僕は2006年にテクノロジー分野のレポーターを始めたんだ。最初は日本の企業である読売新聞に属してレポーティング用のリサーチャーやレポーターのアシスタントなどをしていたよ。そして、2007年には通信会社でコーポレートリーディング用にリリースを書いたりもした。一般企業のPRの様な役割をイメージしてもらえば良いと思う。

その後から本格的にメディア事業に関わる事になって、オンラインのビデオ報道・作成にも携わっていたよ。それと同時に、テクノロジー分野を完全に担当する様に自分の最初の興味分野に仕事が戻ってきたね。そして以前にも増して自分の興味分野が確立される様になってきた。それはコンシューマーテクノロジーだ。色々な分野があるけど、UberやAirbnb、Lyftなんかが代表的で、特に最近強い興味を抱いているのはオンデマンドのライブデリバリーサービスだ。UberやLyftのようなね。個人的には彼等のようなサービスにとても興味を持っているよ。


Y:普段からRyanさんの記事を見させて頂いています。オンデマンド分野の記事は特に勉強になりました。
R:オンデマンド関連は今とても興味深い分野だ。なぜなら、今の世の中はほとんどデリバリーでまわっているからね。例えば、本だったりご飯だったり、移動だったり…。本当にここサンフランシスコには色々な分野においてデリバリーサービスが存在している。これらのサービスは興味深い事に大半がここサンフランシスコに集まってきている。そしてそれらは依然としてテストバージョンである事が多い。なぜなら、アーリーアダプターの集まるここサンフランシスコでは時間的にとても早くユーザーを獲得し、注目を集め、サンフランシスコ以外の地域に広がっていくことが実現しやすい環境となっているからね。


Y:色々なオンデマンドサービスがここサンフランシスコには存在しますが、特にどんな種類のオンデマンドサービスに注目していますか?
R:今自分が特に注目しているのは移動関連のオンデマンドサービスだね.


Y:Hitchの様なサービスでしょうか?
R:そうだね。自分もHitchについて記事を先日書いたからね(笑)
自分の人生を振り返った時に、僕はNYCで育ち、そして仕事をはじめ、SFに移ってきた。今でもNYCに仕事をしに行く事がもちろんあるから、自分は2008年くらいからSFとNYCに1台ずつ車を持つ様になったんだ。なぜなら自分にとって自由な移動手段を持つ事は本当に便利だし、魅力的な事だからね。車のような自由な「足」を持つ事は本当に便利で、ほぼ全ての人にとってなくてはならない存在だ。また、移動の為の手段というのは全世界に需要がある。実際UberもLyftも世界中に広がっているよね。


そんなスケールのでかいUberやLyft、またそれらの移動関連のオンデマンドサービスは今、移動に関する大きなパラダイムシフトを生み出そうとしている。このままどんどん彼等のサービスが値下げをして、車などの移動手段を所有するコスト以上に安い価格でUberやLyftなどを利用し、移動手段を確保できるとしたら…。これは間違いなく本当に大きな規模のパラダイムシフトを引き起こす事になると言って良いだろう。

そして、実際それがここサンフランシスコで起き始めているんだ。サンフランシスコは地価がとても高いため、車を保持する為の駐車場や管理費用がとても高くなっている。そのため、一部には車を持たずに、徒歩とUberとLyftなどのオンデマンド系移動サービスを上手くあわせて、それだけで生活している様な人が既に存在するんだ。これはまだサンフランシスコでしか起きていない事だが、きっとこれからどんどん他の地域でも起きていくことだと思うよ。


Y:Ryanさんの考えるオンデマンドサービスの5年後の未来像を教えてください?
R:全てがオンデマンドになっていくと思うよ。今アメリカではAmazonを利用すれば大半の物が2日以内に届く様になってきている。増々Amazonなどのオンデマンド型サービスはエンドユーザーとの距離が縮まってきているんだ。オンデマンドサービスに関しては、このエンドユーザーと企業の距離がどれだけ正確に短くする事が出来るかというロジスティクスゲームの様な物だと思うよ。

※ロジスティクス 

ロジスティクスとは、以下のように定義される。 ロジスティクスは物流において、生産地から消費地までの全体最適化を目指すものである。 from wiki


Y:オンデマンドサービスにおいて、移動系よりもあついビジネス領域はありますか?
R:フードデリバリーのサービスかな。自分がぱっと思いつくだけで最低でも10個くらいのサービスがあるからね。これらは特にサンフランシスコでも活発だろう。


UberとかLyftも一見すると普通の輸送サービスだ。ただ、本質的なところでは如何に配達側の企業とエンドユーザーのつなぎの部分に様々な精度をもたらすかというロジスティクスの勝負になっている。フードデリバリーも全く同様のことが言えるだろう。そしてそこで移動系と同様にロジスティクスゲームの原理が当てはまるとしたら…?そこでより魅力的なサービスが生まれるだろう。既に出ている物もあるが、輸送時に利用できるAPIなど、デリバリーサービスについてのロジスティクスを補助するサービスも増々登場するようになると思う。

Doordashは現在フードデリバリーのサービスの例としてとても代表的な物だけれど、彼等はそれらの代表的な物かもしれない。デリバリーをしていないレストランに、デリバリーで店の料理を配達する手段を提供している。そしてその一方で彼等は配達して売り上げた利益の数%を配達料金としてもらっている。これはレストランが新たに配送員を雇うコストをおさえることにも貢献しているし、注文があったタイミングで稼ぎたい配達員のニーズも満たす事ができているんだ。これは結果的にDoordashを利用する以外の全ての選択肢よりも安価に料理が提供する事を可能にしている。これこそ、さっき述べた様なロジスティクスゲームの現状から生まれたとても興味深いサービスの一つだと言えるだろう。そしてこれは同時にサンフランシスコに置けるUberやLyftなどの移動に関するパラダイムシフトと同様の兆候だと思う。


Y:自分は個人的にとても情報が早く興味深い記事の多いRyanさんの記事を重宝させて頂いています。そこで気になったのですが、読者のターゲット像はどのような方を想定されているのですか?
R:僕はいつも自分自身を読者に当てはめた時に、魅力的なサービスについて書いている。実際に使ったりしてみてね。自分が使っても納得できなかったり、良い体験をする事が出来なかったら、読者が自分の記事を読んで試してみても同様の状態に陥るからね。


Y:好きなライターを教えてください
R:一人はWiredのMat Homan(Twitter: @mat)かな。彼は直接的なニュース記事を書く訳ではないけど、とても魅力的な文章を書くんだ。自分はニューヨークの大学で文学について学んでいた時に、彼の文章やその文章スタイルの虜になった。彼は本当に面白い記事を書き、今でもずっとTech業界の中心に位置しているライターの一人だと思うね。
 
もう一人はWSJに以前務めていて、今は
re/codeのKara Swisher(Twitter: @karashisher)だね。彼女は個人的には今Tech業界で最も素晴らしいジャーナリストだと思う。

その他にも同じくre/codeにはNellie Bowles(Twitter:
@NellieBowles)というストレートニュースの代表記者がいるね。もし読者がシリコンバレーのタクシー業界や、最新のテクノロジーによる社会的な側面に、またLA付近のスタートアップについて興味を抱いているなら、彼女の記事はとても魅力的な物になると思うよ。

または、The VergeのKatie Drummond(Twitter: @
katiedrumm)なんかも良いライターだよね。


Y:質の高い情報を仕入れる方法として、どのように起業家やVCと良い関係を築くのですか?
R:これは本当に苦労した。色々な人にたくさん、事あるごとに会って会話する事をコツコツと続けてきたんだ。どれもこれも本当に地道に続けてきた事だね。また、自分はEvernoteに色々なVCや起業家、その他様々なインフルエンサーを名前や電話番号、メールアドレスなどでまとめていて、こまめに電話やメール、チャットなどを通じてコミュニケーションを取るようにしているよ。ただ、大抵の場合は断られたり無視されたり、コメントできないなどの返事をもらう事になる。それはとてもショックを伴うアプローチ方法だけど、結局これを地道に続けるしかないよね。


Y:どれくらいの頻度で、どんなネットワーキングイベントに参加しているのですか?
R:1週間に1回は出ているね。規模は大きかったり小さかったりとまちまちだけど、色々なVCのカンファレンスやメディアのカンファレンスなど色々なものに出席しているよ。クローズドなイベントに関しては特に面白いね。質の高い人がたくさん集まっていて、良い情報を獲得できる確立が高まるから。



匿名系のアプリはまだ勝者がいない、日本のスタートアップが海外メディアに取り上げられるには?



Y:自分は匿名メッセンジャーにとても興味を持っています。なぜなら、今色々な種類の匿名コミュニケーションアプリが登場し、SV AngelやGoogle Venturesがこぞって投資をしているからです。それに関してどう思いますか?
R:恐らくそれらの質問は僕に聞く質問ではないかもしれないね。なぜなら自分は匿名系のサービスを基本的にはつかわないからね。ただ、匿名メッセージングアプリ全般に言えることだが、勝者は依然として存在しないということだ。そしてそれはFacebook対Myspaceなどではなく、お互いを認知せずにコミュニケーションを取るサービス全てが競合に値する。これらはクリティカルマスを必要とはしない。なぜなら全員が匿名なので、イノベーターなどの区別がしにくくなってしまうからだ。クリティカルマスはFacebookやその他のソーシャルネットワーク系サービスにはとても有用な考え方だったけど、匿名系のメッセンジャーはどうなるかが見えてこないからとても面白い分野だと思うね。


特にFacebookがWhatsappを買った時に、ここの人たちは誰も使わなくなると思ったよ(笑)。Whatsappを考えた時に、シリコンバレー以外の地域でとても魅力的なアプリなんだ。ただ、シリコンバレーでは現状アーリーアダプターがたくさんいて、シリコンバレーだけでも本当にたくさんのメッセージングアプリが存在する。そして彼等は一つのアプリだけを使う事はない。自分を考えてみてもいっつも同じ20人で新しいメッセーンジャーアプリをどんどん試しているからね(笑)。ここではそれが普通なんだ。Facebookに買収されてはアーリーアダプターの皆は離れていってしまうよ。使うアプリを変える事にもあまりコストは生じないしね。


※クリティカルマス
クリティカルマスとは、マーケティングに関する用語で、ある商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がるための分岐点となっている普及率のことである。ある商品やサービスが市場に登場すると、最初は最も先進的なイノベーター(革新者)と呼ばれる消費者層に受け入れられ、次に新しいものに敏感なアーリーアダプターと呼ばれる利用者層に広まっていく。それから徐々に、保守的な利用者層に広がっていく。このとき、市場全体の普及率がクリティカルマスに達すると、それまでの普及率の伸びが一気に跳ね上がると指摘されている。クリティカルマスとされる普及率は、市場の約16%であると言われている。from wiki


Y:自分は普段の情報収集にTechCrunch、Hacker News、そしてProduct Huntを使っているのですがRyanさんが使っている物は他にどんな物がありますか?
R:そうだねえ…。自分は基本的には自分たちTechCrunchとTechmemeとTwitterだね。
Product Huntも面白いサービスだ。自分は毎日見る訳じゃないけど、数日間ごとに見ていてキャッチアップしているよ。Hacker newsに関してはかなりギークな一部の読者層にしか受けない情報が多いので、自分は特にキャッチアップをしている訳ではないかな。


Y:既に多くのトラフィックを獲得していたり、大型の調達に成功している日本のスタートアップがUSのメディアに掲載されたい場合、彼らはどのように動けば良いでしょうか?何かヒントやアドバイスをください。
R:USメディアに掲載される上で最も良いのは、やはりシリコンバレーにくることだね。こっちの環境では、さっきも言った様に分かるかもしれないけど、基本的にネットワークに依存して様々な事が動いている。確かにいくつかの日本のスタートアップはアメリカのVCから調達したり、500startupsのプログラムに参加していたりするね。ただ、色々な情報を記者にメールしても、記者からしたら大抵の場合は誰から来たメールなのか分からない。そして誰か分からない人からのメールを基に記事を書く事は難しいんだ。自分はできるだけ全てのメールに返事をするようにしているし、実際自分のメールフォルダには10しかためない様になっている。ただ、記者である
自分が出来ることも限られている。だから、彼等はこっちに来て、こっちで如何にネットワーキングをするかが大事になってくると思うよ。


Y:次が最後の質問です。最近はTech WriterがVCに参加しているけど、それについてどう考えていますか?
R:いや、これはトレンドではないね(笑)。確かに最近は数人が続いてニュースになってきているけど、彼等は全体の記者の内ほんの数%だ。そして、記者からVCにジョインしても、実際に投資に関わっている人たちはもっともっと少ない割合になってくる。Crunch FundやGoogle Ventures、Andreessen Horowitzなどに参加する人たちが少数いるのは確かだけど、ジャーナリスト出身でVCとして大成功したマイケル・モリッツのようになれるかと言ったら、それはそうとは言えないと思う(笑)


Y:貴重なお時間ありがとうございました。

※Ryanの記事のアーカイブはこちら

Twitter: @ryanlawler