『世の中がどこに向かっているのかを考える』ベイエリアのトップティア・ベンチャーキャピタルSoftTech VC - パートナーCharles Hudsonへのインタビュー




ベイエリアの投資家へのインタビューシリーズ。今回は、SoftTech VCのパートナーであるCharles Hudson氏にインタビューを行った。SoftTech VCは、アーリーステージのスタートアップを中心に150社以上の投資案件を抱え、これまでにFacebookやTwitter、Groupon、Eventbrite、Postmatesをはじめとした数多くの優良スタートアップへ投資を行ってきたトップティアVCのひとつである。また、Charles氏はPostmates、August、StyleSeatなどの企業への投資を担当した。彼のブログは思慮に富む内容ばかりなので一読することをおすすめする。

世の中がどこに向かっているのかを考える



Q1. まず投資家を始める前の経歴を教えていただけますか。

大学時代はスタンフォード大学に通っていて、卒業後はアメリカCIAの投資機関であるIn-Q-TelというVCの会社に就職し、投資家としての知見を学びました。約4年ほどIn-Q-Telで働いた後、MBAを取得するためにスタンフォード大学院に入学しました。その後のキャリアとしては、CISCO, Googleに勤めた後、漫画、アニメ分野のGaia Interactiveに勤務。アンドロイドゲーム開発の会社を起業したんですが、2010年に売却し、Jeff Clavier氏とStephanie Palmeri氏が創業したSoftTech VCにジョインしました。


Q2. どうして投資家というキャリアを歩もうと思ったのでしょうか。
前述のとおり、投資家になる前、起業家としてのキャリアも歩んでいました。確かに起業家として生きるのはすごく楽しいですが、一方やはりすごく厳しい面も多いです。特に数多くのチームを一人でまとめあげなければいけないのが難しいです。私は自分が起業して、多くの全く職種の違うチームを経営していくことにある種の限界を感じていました。その時、投資家としてのキャリアの方が自分に向いていると感じ、今に至ります。


Q3. NuzzelやPostmatesなど、数多くの素晴らしいスタートアップに投資されていますが、どのようにそのようなスタートアップを見つけるのでしょうか。
多くのスタートアップとは紹介ベースで知り合うことが多いです。Postmatesに関してはAngelListで働いている人が、Postmates創業者のBastian Lehmann氏を紹介してくれて、投資に至っています。Nuzzelの場合で言うと、創業者のJonathan Abrams氏がNuzzelを創業する前にFounder Denという会社で働いていた頃に出会いました。ちょうどその頃、Jonathan氏が起業アイデアをピッチしてくれて、そこから投資に至ります。


Q4. 最近注目のシェアリングエコノミーに関して投資家としてどう思われますか。
シェアリングエコノミーにおいては、特にUberやLyftなどの交通系サービスに注目しています。彼らのような起業家が素晴らしい理由 は、行政が提供できないようなサービスを私達に与えてくれることです。例えば、ここサンフランシスコ市内で言えば、公共交通機関が発達していますが、それらが行き渡っていないところまでUberやLyftはサービス展開しています。このように行政がカバーできていない点を上手く見つけ出してサービス展開しているケースは他のスタートアップにとっても学ぶことが多いでしょう。


Q5. 注目の産業はどこでしょうか。
個人的に2つ注目している分野があります。ビットコインとIoT分野です。ちなみにIoT分野では、私達が投資したAugustの創業者Jason Johnsonなどに期待していますね。


Q6. 日本のスタートアップがシリコンバレー・サンフランシスコに来て資金調達するケースが増えてきていますが、トップティアVCから資金調達する上で大事なことはなんでしょうか。
一般的に言われているのは3つあります。「チーム」、「プロダクト」、そして「市場」の3つです。これら3つの点を基準として投資家は見ます。私達の場合はそれを少しもじって、3Sルールという基準を持っています。それは、「なるべく小さなチームで」、「ものすごいプロダクトを開発して」、「めっちゃくちゃデカイ市場を創造する」の3つを3Sルールと呼んでいます。いずれにせよ、各投資家は同じように「チーム」、「プロダクト」、「市場」の3つを資金調達の判断基準にしていると思いますが、違う比重を置いています。私の場合は、「チーム」と「市場」を重要視し、「プロダクト」の比重はあまり高くありません。


Q7. 海外のスタートアップは大型資金調達のために、会社の機能本体をこちらに移すべきだと思いますか。
そうは思いません。理由としては、サンフランシスコエリアでエンジニアを雇う際、ものすごく高コストになるので、必ずしもこちらで社員を雇ったりする必要はないと考えるからです。その代わり、もしシリコンバレー・サンフランシスコエリアで資金調達をする場合、CEOは投資家と直に話す機会を持つ必要はあります。そのため、CEOはこちらでなるべく多くの時間を過ごすべきでしょう。


Q8. 成功するスタートアップをつくる上で何が重要になるのでしょうか。
明確なビジョンが必要となるでしょう。成功するスタートアップの多くは、自分達のビジネスが大きくなったら、世の中がどうよくなって、どう変わるのかをよく理解していますし、しっかりと先が見えています。加えて言うと、チームで働く人全員が、なぜそのチームのために、ビジネスのために、会社のために働くのかをしっかりと理解しているスタートアップは成功すると思います。「なぜ」の部分をしっかりと理解、共有していることが大事です。


Q9. 今まで出会った中で、最も印象的な起業家は誰ですか。
一人には到底絞りきれませんので、3人挙げます。Linkedinの創業者であるReid Hoffman氏がその中の一人です。彼はビジョンがしっかりしていて、未来がどこに向かっているのかをしっかりと理解しています。Facebook創業者のMark Zuckerberg氏と一度お会いしたことがありますが、彼も非常に才能があり、ものすごく印象的でした。3人目は、Nest創業者のTony Fadell氏です。彼は非常に才能豊かであり、かつ思慮深くて印象に残っています。


Q10. 資金調達をする日本人起業家にアドバイスなどあればいただけないでしょうか。
経営陣の一部でもいいので、こちらにいることをおすすめします。シリコンバレー・サンフランシスコエリアで資金調達をしたいならこちらにオフィスを開き、ネットワーク作りから始めるべきでしょう。


Q11. 今後日本人起業家を含め、アメリカ国外への投資をお考えですか。
もちろん考えています。現在、国外ではカナダとヨーロッパのスタートアップに投資しています。カナダのスタートアップとは実際に何度か創業者と会える機会があるため、これからも多くの投資を考えていますが、アジアに関しては直接創業者に会うことが非常に難しいです。このような、直接数多くの創業者と会えないという問題が解決できるのであれば、アジアへも積極的に出資していきたいと思います。最近では、LINEやKakaoTalkなどのアジアならではのユニークなアプリが多く出てきており、非常に注目しています。


Q12. 投資家として成功するにはどのようなことが重要だとお考えでしょうか。
世の中がどこに向かっているのかを知ることが投資家にとって重要だと思います。私達投資家ですら、投資先のスタートアップが数年後どうなっているのか非常に予期しがたいですし、世の中が向かう方向は変わり続けます。言い換えれば、どのように世の中が変わっていくのかを注視し、情報をアップデートしつつ、世の中の流れをしっかりと掴みながらスタートアップを探すことが投資家に求められるでしょう。


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ベイエリアの投資家へのインタビューシリーズ。今回は、SoftTech VCのパートナーであるCharles Hudson氏にインタビューを行った。SoftTech VCは、アーリーステージのスタートアップを中心に150社以上の投資案件を抱え、これまでにFacebookやTwitter、Groupon、Eventbrite、Postmatesをはじめとした数多くの優良スタートアップへ投資を行ってきたトップティアVCのひとつである。また、Charles氏はPostmates、August、StyleSeatなどの企業への投資を担当した。彼のブログは思慮に富む内容ばかりなので一読することをおすすめする。

世の中がどこに向かっているのかを考える



Q1. まず投資家を始める前の経歴を教えていただけますか。

大学時代はスタンフォード大学に通っていて、卒業後はアメリカCIAの投資機関であるIn-Q-TelというVCの会社に就職し、投資家としての知見を学びました。約4年ほどIn-Q-Telで働いた後、MBAを取得するためにスタンフォード大学院に入学しました。その後のキャリアとしては、CISCO, Googleに勤めた後、漫画、アニメ分野のGaia Interactiveに勤務。アンドロイドゲーム開発の会社を起業したんですが、2010年に売却し、Jeff Clavier氏とStephanie Palmeri氏が創業したSoftTech VCにジョインしました。


Q2. どうして投資家というキャリアを歩もうと思ったのでしょうか。
前述のとおり、投資家になる前、起業家としてのキャリアも歩んでいました。確かに起業家として生きるのはすごく楽しいですが、一方やはりすごく厳しい面も多いです。特に数多くのチームを一人でまとめあげなければいけないのが難しいです。私は自分が起業して、多くの全く職種の違うチームを経営していくことにある種の限界を感じていました。その時、投資家としてのキャリアの方が自分に向いていると感じ、今に至ります。


Q3. NuzzelやPostmatesなど、数多くの素晴らしいスタートアップに投資されていますが、どのようにそのようなスタートアップを見つけるのでしょうか。
多くのスタートアップとは紹介ベースで知り合うことが多いです。Postmatesに関してはAngelListで働いている人が、Postmates創業者のBastian Lehmann氏を紹介してくれて、投資に至っています。Nuzzelの場合で言うと、創業者のJonathan Abrams氏がNuzzelを創業する前にFounder Denという会社で働いていた頃に出会いました。ちょうどその頃、Jonathan氏が起業アイデアをピッチしてくれて、そこから投資に至ります。


Q4. 最近注目のシェアリングエコノミーに関して投資家としてどう思われますか。
シェアリングエコノミーにおいては、特にUberやLyftなどの交通系サービスに注目しています。彼らのような起業家が素晴らしい理由 は、行政が提供できないようなサービスを私達に与えてくれることです。例えば、ここサンフランシスコ市内で言えば、公共交通機関が発達していますが、それらが行き渡っていないところまでUberやLyftはサービス展開しています。このように行政がカバーできていない点を上手く見つけ出してサービス展開しているケースは他のスタートアップにとっても学ぶことが多いでしょう。


Q5. 注目の産業はどこでしょうか。
個人的に2つ注目している分野があります。ビットコインとIoT分野です。ちなみにIoT分野では、私達が投資したAugustの創業者Jason Johnsonなどに期待していますね。


Q6. 日本のスタートアップがシリコンバレー・サンフランシスコに来て資金調達するケースが増えてきていますが、トップティアVCから資金調達する上で大事なことはなんでしょうか。
一般的に言われているのは3つあります。「チーム」、「プロダクト」、そして「市場」の3つです。これら3つの点を基準として投資家は見ます。私達の場合はそれを少しもじって、3Sルールという基準を持っています。それは、「なるべく小さなチームで」、「ものすごいプロダクトを開発して」、「めっちゃくちゃデカイ市場を創造する」の3つを3Sルールと呼んでいます。いずれにせよ、各投資家は同じように「チーム」、「プロダクト」、「市場」の3つを資金調達の判断基準にしていると思いますが、違う比重を置いています。私の場合は、「チーム」と「市場」を重要視し、「プロダクト」の比重はあまり高くありません。


Q7. 海外のスタートアップは大型資金調達のために、会社の機能本体をこちらに移すべきだと思いますか。
そうは思いません。理由としては、サンフランシスコエリアでエンジニアを雇う際、ものすごく高コストになるので、必ずしもこちらで社員を雇ったりする必要はないと考えるからです。その代わり、もしシリコンバレー・サンフランシスコエリアで資金調達をする場合、CEOは投資家と直に話す機会を持つ必要はあります。そのため、CEOはこちらでなるべく多くの時間を過ごすべきでしょう。


Q8. 成功するスタートアップをつくる上で何が重要になるのでしょうか。
明確なビジョンが必要となるでしょう。成功するスタートアップの多くは、自分達のビジネスが大きくなったら、世の中がどうよくなって、どう変わるのかをよく理解していますし、しっかりと先が見えています。加えて言うと、チームで働く人全員が、なぜそのチームのために、ビジネスのために、会社のために働くのかをしっかりと理解しているスタートアップは成功すると思います。「なぜ」の部分をしっかりと理解、共有していることが大事です。


Q9. 今まで出会った中で、最も印象的な起業家は誰ですか。
一人には到底絞りきれませんので、3人挙げます。Linkedinの創業者であるReid Hoffman氏がその中の一人です。彼はビジョンがしっかりしていて、未来がどこに向かっているのかをしっかりと理解しています。Facebook創業者のMark Zuckerberg氏と一度お会いしたことがありますが、彼も非常に才能があり、ものすごく印象的でした。3人目は、Nest創業者のTony Fadell氏です。彼は非常に才能豊かであり、かつ思慮深くて印象に残っています。


Q10. 資金調達をする日本人起業家にアドバイスなどあればいただけないでしょうか。
経営陣の一部でもいいので、こちらにいることをおすすめします。シリコンバレー・サンフランシスコエリアで資金調達をしたいならこちらにオフィスを開き、ネットワーク作りから始めるべきでしょう。


Q11. 今後日本人起業家を含め、アメリカ国外への投資をお考えですか。
もちろん考えています。現在、国外ではカナダとヨーロッパのスタートアップに投資しています。カナダのスタートアップとは実際に何度か創業者と会える機会があるため、これからも多くの投資を考えていますが、アジアに関しては直接創業者に会うことが非常に難しいです。このような、直接数多くの創業者と会えないという問題が解決できるのであれば、アジアへも積極的に出資していきたいと思います。最近では、LINEやKakaoTalkなどのアジアならではのユニークなアプリが多く出てきており、非常に注目しています。


Q12. 投資家として成功するにはどのようなことが重要だとお考えでしょうか。
世の中がどこに向かっているのかを知ることが投資家にとって重要だと思います。私達投資家ですら、投資先のスタートアップが数年後どうなっているのか非常に予期しがたいですし、世の中が向かう方向は変わり続けます。言い換えれば、どのように世の中が変わっていくのかを注視し、情報をアップデートしつつ、世の中の流れをしっかりと掴みながらスタートアップを探すことが投資家に求められるでしょう。


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