TechCrunch記者Anthony Haに聞く、ニューヨークとシリコンバレーの違い、日本のスタートアップが米国メディアに取り上げられる方法


米国テックライターへのインタビューシリーズ。今回はTechCrunchで記者を務めるAnthnony Ha氏へインタビューを行った。彼はライターとしてAdweek、編集者としてVentureBeatで働いた経歴を持つ。TechCrunchでは、メディアとアド系の領域を担当しており、ニューヨーク(以下NY)を拠点として活動している。Anthnony Ha氏の記事のアーカイブはこちら

NYのエコシステムはBay Areaに近づいている


Q:TechCrunchではメディアとアドの分野をカバーされていますね。その分野でNYベースの気になるスタートアップを教えてください。
メディアと一括りにするととても広くなってしまうが、コンテンツ関係の会社だともう既にスタートアップという規模ではないけどFlipboardがイチオシだね。僕は毎日Flipboardでニュースを読んでいるよ。後は、やはりBuzzFeedも外せない。彼らの情報発信の仕方やビジネスモデルは大変興味深い。また、広告(アド)の分野でもFlipboardに注目しているかな。加えて、この分野ではAppNexusが今急成長していて、来年あたりにIPOするのではないかと見ている。


Q:NYとBay Areaのスタートアップに関するエコシステムの違いを教えてください。
かつてのように大きな違いはなくなってきたように思う。一昔前までは、Bay Areaがテックの中心だったんだ。資金調達も人材獲得もしやすかったのは事実だと思う。ただ、今では注目すべき多くのスタートアップがニューヨークからも生まれている。アドネットワークやメディアの企業はもちろん、MongoDBのような純粋な技術系の企業もNYを拠点にしているのは良い例だし、ファッションのスタートアップもNYをベースにしているところもあれば、SFをベースにしているところもあるように、一概にまとめることはとても難しいね。NYにはたくさんのスタートアップがあり、今ではBay Areaに似通った部分もたくさんあるんだ。


Q:NYのみならず、Bay Areaのスタートアップの記事もカバーされていますね。どのようにNYからBay Areaのスタートアップをカバーしているのですか?先方からemailをたくさん受け取るとか?

そうだね、たくさんのemailを毎日受け取るよ!そしてSkypeを通じてインタビューやデモを見せてもらっている。たとえ、ベースをNYにしていなくても、大きくなるにつれてNYにも拠点を構えることが多いし、アド系のスタートアップのCEOは数ヶ月に1回の頻度でNYに訪れることがあるから、その際にキャッチアップしているよ。


Q:良質な情報を手に入れるために、どのようにして起業家や投資家と良い関係を築いているのですか?
今もそれは模索中だね(笑) 相手によってやり方は違うと思うんだけど、基本的にはできるだけ多くの人に返信をする、しかもできるだけはやく返信することにしているよ。時間がない時は、Yes or Noを簡潔に送るだけの時もある。あとは、たまにその分野に関心を示していることのひとつの形としてネガティブな記事を書くときもあるんだけど、それに対してのフィードバックは常に受け付けるようにしているよ。フィードバックをくれる人達とのそういったやりとりがお互いの信頼関係を構築する上で大切になってくるんじゃないかと考えている。



Q:バイラルメディアやキュレーションメディアについてお伺いします。この分野の5年後をどう考えますか?例えばBuzzFeedがここまで大きくなると予想した日本人は少ないように思います。
ジェネラルに考えると、メディアの分野は5年で様々な変化があるから、どうなるかは分からない。そこの変化にどれだけ対応できるかがメディアにとってすごく重要なんだ。人々は新しい方法でコンテンツを手に入れたがっているように思える。それにうまく対応したのがバイラルメディアで、今はFacebookやTwitter経由で大量の流入を獲得しているが、ユーザーはクリックするまで、それが本当に面白いコンテンツなのかどうかは分からない。最近では、クリックしてみてそのコンテンツのバカらしさにがっかりするユーザーが増えてきていると思うので、クオリティの高い記事を作成して、そのがっかりをどれだけ減らせるかが大事になってくると思う。


Q:NYベースのスタートアップという観点で、どのビジネスドメインに注目していますか?

メディアやアド系、金融系、あとはSFでも同様かもしれないけどエンタープライズ向けのクラウドやソーシャルメディア系の分野も注目しているよ。


Q:オンデマンド系やシェアリング系はどうですか?UberやAirbnbにとってNYはSFよりも大きな市場です。
そうだね。彼らはヘッドクォータこそないものの、NYに拠点を構えている。現在UberやAirbnbはNYでの規制に関して何ができてなにができないのかを探り探りやってるね。


日本のスタートアップが米国TechCrunchにカバーされるために大切なこと



Q:お気に入りのライターを教えてください。

テクノロジーの分野では、The New YorkerのKen Auletta、Re/codeのPeter Kafka、TechCrunchだったらRyan Lawlerかな。


Q:多くの日本のスタートアップがTechCrunchやVentureBeatといったUSのテックメディアにアプローチしたいと考えています。彼らは大型の資金調達に成功していたり、既に十分なトラクションを獲得しているケースもあるのですが、どのようにアプローチしていいのか分からないといったチームもいます。何か彼らにアドバイスをください。

TechCrunchはいくつかの組織に分かれて世界的に記事をカバーしている。そして、Catherine Shuというアジアの領域を担当している記者が台湾にいるんだ。彼女はたまに日本のスタートアップをカバーしているから何とかして繋がるのはひとつの手だと思うよ。ただし、日本と台湾は別物 だから一概にまとめるのは難しいけどね。それか、TechCrunch Japanの記者にアプローチして日本版に掲載してもらった後にこちらの記者を紹介してもらうのも手だね、"やあ、彼らは注目する価値のあるスタートアップだよ"って感じで。

あと、米国で活動している記者が日本の市場をカバーすることは稀なんだ。USの媒体にカバーされたい場合は、なぜUSの読者が君のスタートアップに関心を持つのか、という部分を考えなければならないね。たくさんのトラクションを持っていることや、資金を調達したというニュースは重要だけど、日本国内だけで活動しているスタートアップに米国の読者は関心を示さないと思うんだ。アジアを担当しているShuが見逃す会社も多いだろうしね。そうなると、やはり米国の読者やライターを惹きつけるには、米国で何かしらの行動を起こすことが重要だと思う。DeNAがこちらで会社を買収などして、注目されていたようにね。


Q:TechCrunch JapanのチームがTechCrunch本家に寄稿するのは良い手かもしれませんね。

それは名案だね。我々が日本のスタートアップの記事を書けないのは、アジアをカバーする時間がないというのもあるけど、言語の壁が大きな理由のひとつだと思う。たいていの日本の起業家は英語がしゃべれると思うんだけど、Skypeだと通信が途切れ途切れになってしまうのか、インタビューをするのが結構難しいんだ。 アクセントが少し違って聞き難いというケースもある。とにかく、何言っているのか分からない時があるんだ。こちらとしては、間違った文脈で記事を書きたくないからね。そこがひとつ大きな課題になっているので、日本語が分かる記者がインタビューをして、それを英語の記事として発信するのは良い考えだね。


Q:どのようにUSの人々は日本のスタートアップの情報を仕入れているのでしょうか?そもそも興味がないのでしょうか?

うーん、僕自身が日本のスタートアップに関する特定のメディアを読んでいないから、言及するのは難しいね。ただ、いくつかの投資家は日本の市場に関心を持っているからそういう情報を国内から英語で発信する需要はあると思うよ。

Anthony Ha氏の記事アーカイブはこちら。Twitterアカウントはこちら

TechCrunch記者Anthony Haに聞く、ニューヨークとシリコンバレーの違い、日本のスタートアップが米国メディアに取り上げられる方法


米国テックライターへのインタビューシリーズ。今回はTechCrunchで記者を務めるAnthnony Ha氏へインタビューを行った。彼はライターとしてAdweek、編集者としてVentureBeatで働いた経歴を持つ。TechCrunchでは、メディアとアド系の領域を担当しており、ニューヨーク(以下NY)を拠点として活動している。Anthnony Ha氏の記事のアーカイブはこちら

NYのエコシステムはBay Areaに近づいている


Q:TechCrunchではメディアとアドの分野をカバーされていますね。その分野でNYベースの気になるスタートアップを教えてください。
メディアと一括りにするととても広くなってしまうが、コンテンツ関係の会社だともう既にスタートアップという規模ではないけどFlipboardがイチオシだね。僕は毎日Flipboardでニュースを読んでいるよ。後は、やはりBuzzFeedも外せない。彼らの情報発信の仕方やビジネスモデルは大変興味深い。また、広告(アド)の分野でもFlipboardに注目しているかな。加えて、この分野ではAppNexusが今急成長していて、来年あたりにIPOするのではないかと見ている。


Q:NYとBay Areaのスタートアップに関するエコシステムの違いを教えてください。
かつてのように大きな違いはなくなってきたように思う。一昔前までは、Bay Areaがテックの中心だったんだ。資金調達も人材獲得もしやすかったのは事実だと思う。ただ、今では注目すべき多くのスタートアップがニューヨークからも生まれている。アドネットワークやメディアの企業はもちろん、MongoDBのような純粋な技術系の企業もNYを拠点にしているのは良い例だし、ファッションのスタートアップもNYをベースにしているところもあれば、SFをベースにしているところもあるように、一概にまとめることはとても難しいね。NYにはたくさんのスタートアップがあり、今ではBay Areaに似通った部分もたくさんあるんだ。


Q:NYのみならず、Bay Areaのスタートアップの記事もカバーされていますね。どのようにNYからBay Areaのスタートアップをカバーしているのですか?先方からemailをたくさん受け取るとか?

そうだね、たくさんのemailを毎日受け取るよ!そしてSkypeを通じてインタビューやデモを見せてもらっている。たとえ、ベースをNYにしていなくても、大きくなるにつれてNYにも拠点を構えることが多いし、アド系のスタートアップのCEOは数ヶ月に1回の頻度でNYに訪れることがあるから、その際にキャッチアップしているよ。


Q:良質な情報を手に入れるために、どのようにして起業家や投資家と良い関係を築いているのですか?
今もそれは模索中だね(笑) 相手によってやり方は違うと思うんだけど、基本的にはできるだけ多くの人に返信をする、しかもできるだけはやく返信することにしているよ。時間がない時は、Yes or Noを簡潔に送るだけの時もある。あとは、たまにその分野に関心を示していることのひとつの形としてネガティブな記事を書くときもあるんだけど、それに対してのフィードバックは常に受け付けるようにしているよ。フィードバックをくれる人達とのそういったやりとりがお互いの信頼関係を構築する上で大切になってくるんじゃないかと考えている。



Q:バイラルメディアやキュレーションメディアについてお伺いします。この分野の5年後をどう考えますか?例えばBuzzFeedがここまで大きくなると予想した日本人は少ないように思います。
ジェネラルに考えると、メディアの分野は5年で様々な変化があるから、どうなるかは分からない。そこの変化にどれだけ対応できるかがメディアにとってすごく重要なんだ。人々は新しい方法でコンテンツを手に入れたがっているように思える。それにうまく対応したのがバイラルメディアで、今はFacebookやTwitter経由で大量の流入を獲得しているが、ユーザーはクリックするまで、それが本当に面白いコンテンツなのかどうかは分からない。最近では、クリックしてみてそのコンテンツのバカらしさにがっかりするユーザーが増えてきていると思うので、クオリティの高い記事を作成して、そのがっかりをどれだけ減らせるかが大事になってくると思う。


Q:NYベースのスタートアップという観点で、どのビジネスドメインに注目していますか?

メディアやアド系、金融系、あとはSFでも同様かもしれないけどエンタープライズ向けのクラウドやソーシャルメディア系の分野も注目しているよ。


Q:オンデマンド系やシェアリング系はどうですか?UberやAirbnbにとってNYはSFよりも大きな市場です。
そうだね。彼らはヘッドクォータこそないものの、NYに拠点を構えている。現在UberやAirbnbはNYでの規制に関して何ができてなにができないのかを探り探りやってるね。


日本のスタートアップが米国TechCrunchにカバーされるために大切なこと



Q:お気に入りのライターを教えてください。

テクノロジーの分野では、The New YorkerのKen Auletta、Re/codeのPeter Kafka、TechCrunchだったらRyan Lawlerかな。


Q:多くの日本のスタートアップがTechCrunchやVentureBeatといったUSのテックメディアにアプローチしたいと考えています。彼らは大型の資金調達に成功していたり、既に十分なトラクションを獲得しているケースもあるのですが、どのようにアプローチしていいのか分からないといったチームもいます。何か彼らにアドバイスをください。

TechCrunchはいくつかの組織に分かれて世界的に記事をカバーしている。そして、Catherine Shuというアジアの領域を担当している記者が台湾にいるんだ。彼女はたまに日本のスタートアップをカバーしているから何とかして繋がるのはひとつの手だと思うよ。ただし、日本と台湾は別物 だから一概にまとめるのは難しいけどね。それか、TechCrunch Japanの記者にアプローチして日本版に掲載してもらった後にこちらの記者を紹介してもらうのも手だね、"やあ、彼らは注目する価値のあるスタートアップだよ"って感じで。

あと、米国で活動している記者が日本の市場をカバーすることは稀なんだ。USの媒体にカバーされたい場合は、なぜUSの読者が君のスタートアップに関心を持つのか、という部分を考えなければならないね。たくさんのトラクションを持っていることや、資金を調達したというニュースは重要だけど、日本国内だけで活動しているスタートアップに米国の読者は関心を示さないと思うんだ。アジアを担当しているShuが見逃す会社も多いだろうしね。そうなると、やはり米国の読者やライターを惹きつけるには、米国で何かしらの行動を起こすことが重要だと思う。DeNAがこちらで会社を買収などして、注目されていたようにね。


Q:TechCrunch JapanのチームがTechCrunch本家に寄稿するのは良い手かもしれませんね。

それは名案だね。我々が日本のスタートアップの記事を書けないのは、アジアをカバーする時間がないというのもあるけど、言語の壁が大きな理由のひとつだと思う。たいていの日本の起業家は英語がしゃべれると思うんだけど、Skypeだと通信が途切れ途切れになってしまうのか、インタビューをするのが結構難しいんだ。 アクセントが少し違って聞き難いというケースもある。とにかく、何言っているのか分からない時があるんだ。こちらとしては、間違った文脈で記事を書きたくないからね。そこがひとつ大きな課題になっているので、日本語が分かる記者がインタビューをして、それを英語の記事として発信するのは良い考えだね。


Q:どのようにUSの人々は日本のスタートアップの情報を仕入れているのでしょうか?そもそも興味がないのでしょうか?

うーん、僕自身が日本のスタートアップに関する特定のメディアを読んでいないから、言及するのは難しいね。ただ、いくつかの投資家は日本の市場に関心を持っているからそういう情報を国内から英語で発信する需要はあると思うよ。

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