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新参者がサンフランシスコでイケてるスタートアップに投資できた理由、Darling Venturesの挑戦
Darling Venturesの創業者である、ダニエル(Daniel Darling)氏はオーストラリア出身で、ベイエリアを拠点に活動している独立系ベンチャーキャピタリストだ。彼がサンフランシスコに越してきたのは2年前で、Darling Venturesを立ち上げて本格的に投資活動を開始したのは半年前とまだ日が浅い。それにも関わらず、彼はY Combinatorや500 Startups、Menlo Venturesなどの著名VCが出資するラウンドに参加できている。
なぜ、彼のような新参者が著名な投資家達が参加するラウンドに短期間で参加することができたのか。今回のインタビューでは、ダニエル氏にベイエリアの投資家事情について言及していただいた。
ベイエリアを象徴する投資家同士の相互補完的なコミュニティ
筆者(以下S):あなたはオーストラリア出身ですよね。オーストラリアのスタートアップはどういう状況ですか?フリーランサーなどが有名ですが。
ダニエル(以下D):うん。オーストラリアのシドニー出身だよ。フリーランサーはIPOを果たした大きな成功事例だね。実は僕のファミリーがファンドマネジメントの仕事をしていて、フリーランサーに投資し、IPOに導いたんだよ。そうだね。オーストラリアの起業家は皆ものすごく優秀だと思う。多くのオーストラリア人はテクノロジーを受け入れるのがとても早いんだ。だからテクノロジーのビジネスはとてもやりやすいよ。ただ、USと大きく異なっている点は、全てのイノベーションのプロセスがここサンフランシスコやシリコンバレーから始まっているということだ。これはもう普遍的な現象になりつつある。 だから僕はベイエリアに移ってきたんだ。
それにオーストラリのマーケットはとても小さい。人口が2200万人程度しかいないからね。だから、外に出ていかなければならないんだ。小さな市場で競争すると、その産業の№1と№2あたりまでしか生き残れない。でも、USのような大きな市場では、№10のプレイヤーでも評価額1000億円の企業になれる。このような理由から、僕はオーストラリア国内にとどまっているスタートアップには決して投資はしないよ。
S:サンフランシスコに移ってきてどれくらいですか?
D:SFには2年、カリフォリニアには5年いるよ。SFに来る前はロサンゼルスで働いていたんだ。投資銀行やマーケティングの会社でね。
S:どのようにベイエリアのコミュニティに入り込んだのですか?経歴を拝見したところ、多くの時間をベイエリア以外で過ごしていたようですが。
D:マーケティングや投資銀行で働いていたとき、それらの会社はモバイルの分野に特化してビジネスを展開していたんだ。だから、モバイルのマーケティングやソリューションの分野にはものすごく詳しくなったよ。そして、同じ業界だと顔なじみも自然と増えていくんだよ。情報交換を頻繁にするからね。
あと、ベイエリアの人達はネットワーキングが好きなんだ!これは凄い顕著だと思う。それも、イベントに参加するなどのオープンなネットワーキングではなく、友人の紹介といったクローズドなネットワーキングだ。ショートミーティングで良い印象を与えれば、相手はまた会いたくなるし、誰かを紹介してもらえるんだ。『やあ、ダニエル!こんな人を探してるって言ってたよね?僕の友人は今その分野にフォーカスしているんだ。今度紹介するから、コーヒでも飲みにいこう。』といった感じさ。お互いの利益になるから、僕は喜んで友人というネットワークを提供するよ。いつか自分に返ってくるかもしれないしね。クローズドでの紹介は通貨と同様の価値があるんじゃないかな。
加えて、SFには新しくこの場に訪れる人間が毎日のように、US全土、そして世界各国からやってくる。そして、多くの人間がイノベーションを起こそうと、ここで新しいアイディアを練っているんだ。イノベーションを起こす上で、それらの新しい人間と会うことはとても重要なんだ。イノベーションは自分の得意分野からのみではなく、まったく門外漢の分野との組み合わせにより生まれることがしばしばある。日本からSFに来る人は、あらゆる側面でその違いを活かして欲しい。日本人はモバイルを活用した生活環境という面では最先端をいっているだろ?消費者がその環境でどのようにモバイルを利用しているかなんてとても興味深いトピックだよ!
S:日本の投資家はもっとベイエリアに長く住むべきですか?
D:彼らの目的によるけど…。もし、USの良質なスタートアップに投資したいなら、答えはYESだ。なぜなら、僕らが投資をする際に投下する「お金」は現代ではコモディティ化していて、資金だけの提供ではスタートアップは振り向いてくれない。どれだけ彼らを手助けできるかが大切なんだ。スタートアップは変化が激しい世界だから、方向性や内容が1週間でガラッと変わる。その時に、現地にいないと、彼らが何を感じて方向転換し、どのような変化に挑戦しようとしているか分からないんだ。中国も米国も市場は大きいけど、性質はまったく異なるものだ。僕も日本で働いた経験があるけど、日本はそれらの2つの国ともまったく異なる環境だった。僕の意見では、投資家は出資をするスタートアップの顧客の視点を1番理解しなければいけないんだ。消費者のビジネスや生活を僕は理解したい。だから、そのマーケットに自分自身が住む必要があると思う。
S:あなたどのように出資先をサポートするのですか?
D:良い質問だね。僕が投資する先のほとんどは、エンジニアやディベロッパー、データサイエンティストという技術者なんだ。僕は、彼らのような技術者が開発に集中できるようにサポートしているよ。僕の過去5年間のバックグラウンドは、プロダクトディベロップメント、プロダクトマーケティング、営業や新規顧客獲得などの分野さ。また、スタートアップと上場企業の両方で働いた経験がある。そこでマーケティング戦略を担当していたよ。
その経験を活かして、 どのように新規顧客を獲得するのか、彼らが開発した素晴らしいプロダクトをどのようにマーケットフィットさせていくのか、といった部分で彼らのサポートをしている。もっと詳しく言及すると、プロダクトのマーケティング戦略、デザインやロゴ、1分程度のプロモーション動画の構想、AppStoreのSEO(ASO)にどう取り組むのかなど、技術以外で必要なものは僕が引き受けるんだ。
技術者としては最高でも、このような領域はまったく分からないといった人が多い。彼らにそれらをやらせるのは時間の無駄だ。彼らはには開発に集中してもらい、資金調達の2倍以上の時間がかかる顧客獲得は僕がやる。そうやって、素晴らしいプロダクトを効率的に世の中に生み出せていきたいと考えている。
S:SendHubに投資が決まったようですね。彼らは、Y combinatorや500 Startups、Menlo Venturesのような著名なVCから資金を調達している優れたスタートアップです。このようなラウンドに参加するのは難しいと思うのですが、どのように参加したのですか?
D:この案件は、他の投資家からの誘いがきっかけだったよ。魅力的な投資に参加する良い方法のひとつは、投資家同士でその機会を補完し合うことさ。ベイエリアの投資家のコミュニティはとても補完的なんだ。大体のVCは、それぞれ自分の得意とする投資ラウンドを持っている。このファンドはシリーズA、またこのファンドはシリーズB〜Cに集中して投資するといった感じさ。その中のいくつかのVC、例えばミドル〜レイトステージに特化したファンドは『この会社めっちゃいいと思う!でも俺達の投資フェーズからすると、投資するにはちょっと早過ぎるなあ…。』といった場面に多く遭遇する。そこで、『俺の友人のDanielが運用しているDarling Venturesはシードへの投資に特化していたっけ、今は彼に育ててもらって、大きくなったら俺達が投資しよう!』といった流れになり、良質な案件を紹介してもらうのさ。
だから僕は、友好関係を築くことに多くの時間を費やしているよ。SFに住んでいる投資家でレイトステージのチームによく投資する人たちだね。逆に、僕には大きすぎる案件は彼らに紹介するんだ。これこそがベイエリアを象徴している投資家同士の相互補完的な関係だよ。
YCの卒業生に投資するのはとても難しい。あそこ(デモデー)にはスター級の投資家がうじゃうじゃ参加していたからね。でも、僕の場合はオーストラリア関連のバックグラウンドを持つパートナーの投資家がSendHubのラウンドに参加していて、うまく話が進んだ。やはりここも人との繋がりなんだよね。(※次回に続く)
投稿者:@satoruitter
新参者がサンフランシスコでイケてるスタートアップに投資できた理由、Darling Venturesの挑戦
Darling Venturesの創業者である、ダニエル(Daniel Darling)氏はオーストラリア出身で、ベイエリアを拠点に活動している独立系ベンチャーキャピタリストだ。彼がサンフランシスコに越してきたのは2年前で、Darling Venturesを立ち上げて本格的に投資活動を開始したのは半年前とまだ日が浅い。それにも関わらず、彼はY Combinatorや500 Startups、Menlo Venturesなどの著名VCが出資するラウンドに参加できている。
なぜ、彼のような新参者が著名な投資家達が参加するラウンドに短期間で参加することができたのか。今回のインタビューでは、ダニエル氏にベイエリアの投資家事情について言及していただいた。
ベイエリアを象徴する投資家同士の相互補完的なコミュニティ
筆者(以下S):あなたはオーストラリア出身ですよね。オーストラリアのスタートアップはどういう状況ですか?フリーランサーなどが有名ですが。
ダニエル(以下D):うん。オーストラリアのシドニー出身だよ。フリーランサーはIPOを果たした大きな成功事例だね。実は僕のファミリーがファンドマネジメントの仕事をしていて、フリーランサーに投資し、IPOに導いたんだよ。そうだね。オーストラリアの起業家は皆ものすごく優秀だと思う。多くのオーストラリア人はテクノロジーを受け入れるのがとても早いんだ。だからテクノロジーのビジネスはとてもやりやすいよ。ただ、USと大きく異なっている点は、全てのイノベーションのプロセスがここサンフランシスコやシリコンバレーから始まっているということだ。これはもう普遍的な現象になりつつある。 だから僕はベイエリアに移ってきたんだ。
それにオーストラリのマーケットはとても小さい。人口が2200万人程度しかいないからね。だから、外に出ていかなければならないんだ。小さな市場で競争すると、その産業の№1と№2あたりまでしか生き残れない。でも、USのような大きな市場では、№10のプレイヤーでも評価額1000億円の企業になれる。このような理由から、僕はオーストラリア国内にとどまっているスタートアップには決して投資はしないよ。
S:サンフランシスコに移ってきてどれくらいですか?
D:SFには2年、カリフォリニアには5年いるよ。SFに来る前はロサンゼルスで働いていたんだ。投資銀行やマーケティングの会社でね。
S:どのようにベイエリアのコミュニティに入り込んだのですか?経歴を拝見したところ、多くの時間をベイエリア以外で過ごしていたようですが。
D:マーケティングや投資銀行で働いていたとき、それらの会社はモバイルの分野に特化してビジネスを展開していたんだ。だから、モバイルのマーケティングやソリューションの分野にはものすごく詳しくなったよ。そして、同じ業界だと顔なじみも自然と増えていくんだよ。情報交換を頻繁にするからね。
あと、ベイエリアの人達はネットワーキングが好きなんだ!これは凄い顕著だと思う。それも、イベントに参加するなどのオープンなネットワーキングではなく、友人の紹介といったクローズドなネットワーキングだ。ショートミーティングで良い印象を与えれば、相手はまた会いたくなるし、誰かを紹介してもらえるんだ。『やあ、ダニエル!こんな人を探してるって言ってたよね?僕の友人は今その分野にフォーカスしているんだ。今度紹介するから、コーヒでも飲みにいこう。』といった感じさ。お互いの利益になるから、僕は喜んで友人というネットワークを提供するよ。いつか自分に返ってくるかもしれないしね。クローズドでの紹介は通貨と同様の価値があるんじゃないかな。
加えて、SFには新しくこの場に訪れる人間が毎日のように、US全土、そして世界各国からやってくる。そして、多くの人間がイノベーションを起こそうと、ここで新しいアイディアを練っているんだ。イノベーションを起こす上で、それらの新しい人間と会うことはとても重要なんだ。イノベーションは自分の得意分野からのみではなく、まったく門外漢の分野との組み合わせにより生まれることがしばしばある。日本からSFに来る人は、あらゆる側面でその違いを活かして欲しい。日本人はモバイルを活用した生活環境という面では最先端をいっているだろ?消費者がその環境でどのようにモバイルを利用しているかなんてとても興味深いトピックだよ!
S:日本の投資家はもっとベイエリアに長く住むべきですか?
D:彼らの目的によるけど…。もし、USの良質なスタートアップに投資したいなら、答えはYESだ。なぜなら、僕らが投資をする際に投下する「お金」は現代ではコモディティ化していて、資金だけの提供ではスタートアップは振り向いてくれない。どれだけ彼らを手助けできるかが大切なんだ。スタートアップは変化が激しい世界だから、方向性や内容が1週間でガラッと変わる。その時に、現地にいないと、彼らが何を感じて方向転換し、どのような変化に挑戦しようとしているか分からないんだ。中国も米国も市場は大きいけど、性質はまったく異なるものだ。僕も日本で働いた経験があるけど、日本はそれらの2つの国ともまったく異なる環境だった。僕の意見では、投資家は出資をするスタートアップの顧客の視点を1番理解しなければいけないんだ。消費者のビジネスや生活を僕は理解したい。だから、そのマーケットに自分自身が住む必要があると思う。
S:あなたどのように出資先をサポートするのですか?
D:良い質問だね。僕が投資する先のほとんどは、エンジニアやディベロッパー、データサイエンティストという技術者なんだ。僕は、彼らのような技術者が開発に集中できるようにサポートしているよ。僕の過去5年間のバックグラウンドは、プロダクトディベロップメント、プロダクトマーケティング、営業や新規顧客獲得などの分野さ。また、スタートアップと上場企業の両方で働いた経験がある。そこでマーケティング戦略を担当していたよ。
その経験を活かして、 どのように新規顧客を獲得するのか、彼らが開発した素晴らしいプロダクトをどのようにマーケットフィットさせていくのか、といった部分で彼らのサポートをしている。もっと詳しく言及すると、プロダクトのマーケティング戦略、デザインやロゴ、1分程度のプロモーション動画の構想、AppStoreのSEO(ASO)にどう取り組むのかなど、技術以外で必要なものは僕が引き受けるんだ。
技術者としては最高でも、このような領域はまったく分からないといった人が多い。彼らにそれらをやらせるのは時間の無駄だ。彼らはには開発に集中してもらい、資金調達の2倍以上の時間がかかる顧客獲得は僕がやる。そうやって、素晴らしいプロダクトを効率的に世の中に生み出せていきたいと考えている。
S:SendHubに投資が決まったようですね。彼らは、Y combinatorや500 Startups、Menlo Venturesのような著名なVCから資金を調達している優れたスタートアップです。このようなラウンドに参加するのは難しいと思うのですが、どのように参加したのですか?
D:この案件は、他の投資家からの誘いがきっかけだったよ。魅力的な投資に参加する良い方法のひとつは、投資家同士でその機会を補完し合うことさ。ベイエリアの投資家のコミュニティはとても補完的なんだ。大体のVCは、それぞれ自分の得意とする投資ラウンドを持っている。このファンドはシリーズA、またこのファンドはシリーズB〜Cに集中して投資するといった感じさ。その中のいくつかのVC、例えばミドル〜レイトステージに特化したファンドは『この会社めっちゃいいと思う!でも俺達の投資フェーズからすると、投資するにはちょっと早過ぎるなあ…。』といった場面に多く遭遇する。そこで、『俺の友人のDanielが運用しているDarling Venturesはシードへの投資に特化していたっけ、今は彼に育ててもらって、大きくなったら俺達が投資しよう!』といった流れになり、良質な案件を紹介してもらうのさ。
だから僕は、友好関係を築くことに多くの時間を費やしているよ。SFに住んでいる投資家でレイトステージのチームによく投資する人たちだね。逆に、僕には大きすぎる案件は彼らに紹介するんだ。これこそがベイエリアを象徴している投資家同士の相互補完的な関係だよ。
YCの卒業生に投資するのはとても難しい。あそこ(デモデー)にはスター級の投資家がうじゃうじゃ参加していたからね。でも、僕の場合はオーストラリア関連のバックグラウンドを持つパートナーの投資家がSendHubのラウンドに参加していて、うまく話が進んだ。やはりここも人との繋がりなんだよね。(※次回に続く)
投稿者:@satoruitter